クヒオ大佐 | p・rhyth・m~映画を語る~

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監督:吉田大八
キャスト:堺雅人/松雪泰子/満島ひかり
配給:ショウゲート
公開:2009年10月
時間:112分




1970年代から1990年代にかけて,「アメリカ空軍パイロットで,カメハメハ大王やエリザベス女王の親類」と名乗り約1億円を騙し取った実在の結婚詐欺師がいたという。彼の名前は“ジョナサン・エリザベス・クヒオ大佐”。日本人だがヨーロッパ系の顔立ちで,数年前まで出没の噂が立っていた。

そんなクヒオ大佐の物語を堺雅人主演で映画化した『クヒオ大佐』を今夜は紹介。原作は吉田和正の『結婚詐欺師 クヒオ大佐』。監督は後に『紙の月』『美しい星』を手がける吉田大八。

いつも軍服を着ている自称36歳のアメリカ人,ジョナサン・エリザベス・クヒオ大佐(堺雅人)。父はカメハメハ大王の末裔,母はエリザベス女王の妹の夫のいとこ,現在は米軍特殊部隊ジェットパイロットという華麗な経歴の持ち主。しかし,その正体はデタラメな経歴とベタな変装で女性たちを騙しては金を貢がせる結婚詐欺師だった。

弁当屋の女社長・永野しのぶ(松雪泰子)は,そんなクヒオ大佐の虚言を信じて目前に迫った結婚の準備に勤しむ日々。一方,クヒオ大佐は,博物館学芸員の浅岡春(満島ひかり)を新たなターゲットに定め,言葉巧みに近づいていく。さらに,銀座のホステス須藤未知子(中村優子)にも目を付け,虎視眈々とチャンスを窺うのだったが…。

英語も話せない純日本人が,米軍の制服と怪しげなカタコト日本語だけでアメリカ人に化けて女性を騙せてしまう。それはまだ海外旅行が今ほどポピュラーではなかった時代。日本人のDNAには,江戸末期に黒船が来航して以来のアメリカ人へのコンプレックスや憧れがあったのかもしれない。騙される女性にだけでなく,実はクヒオ大佐自身が,誰よりもそのコンプレックスに囚われていて,現実の自分から最も遠い存在であるアメリカ軍人に成りきることで,ツラい過去を忘れ,理想の自分になろうとしたのではないだろうか。うら寂しいアパートに帰ってひとりになってもアメリカ人姿勢を崩さない彼の姿に,可笑しさと人間ドラマとしての面白さが滲んでくる。

原作者の吉田和正は,雑誌のインタビューで,本物のクヒオ大佐についてこう語っている。
「クヒオ大佐には,不思議な魅力があるんですよ。決して許されることではありませんが,彼の詐欺は悪質さより滑稽さが先に立つ。公判では常に『受け取った金はセックスの対価』と主張してきました。彼にしてみれば騙したのではなく,一緒に“クヒオ大佐ごっこ”を楽しんだだけ。お金もその過程で貰ったものだというわけです。罪悪感など毛ほどもなかったでしょう」

実は,北海道出身の生粋の日本人で,父親は国鉄職員だったという。存命なら80歳近くだとか。


映画クタ評:★★★★


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