紙の月 | p・rhyth・m~映画を語る~

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英題:Pale Moon
監督:吉田大八
キャスト:宮沢りえ/池松壮亮/大島優子
配給:松竹
公開:2014年11月
時間:126分




最初に見たのは,彼女が14才の頃。30年を経ても,親戚や兄弟の幼い頃の姿よりハッキリと,当時の制服姿の表情を思い浮かべることができるのは,やはりCMのスゴさか。その後『Santa Fe』では脳天をブチ抜かれ,結婚,出産,離婚を経験する中で,大人の女性としての魅力を放ち続けている。今年の3月には,V6の森田剛との再婚が発表された。

そんな女優・宮沢りえの近作を2夜連続で紹介。今夜はまず,NHKでもドラマ化された角田光代のベストセラーを映画化した『紙の月』。TVドラマでは原田知世が主演したが,映画版では宮沢りえが“格”の違いを見せつけるヒューマン・クライム・サスペンス。監督は『桐島、部活やめるってよ』(2012年・ショウゲート)で話題となった吉田大八。

バブル崩壊直後の1994年。エリート会社員の夫・正文(田辺誠一)と2人暮らしの主婦・梅澤梨花(宮沢りえ)は,契約社員として勤務する“わかば銀行”でも,丁寧な仕事ぶりで上司の井上(近藤芳正)からも高評価。支店では,厳格なベテラン事務員の隅より子(小林聡美)や,まだ若いがちゃっかり者の窓口係・相川恵子(大島優子)ら,様々な女性たちと共に働いていた。しかし家庭では,自分への関心が薄く鈍感なところのある夫との夫婦関係に空虚感が漂い始めていた。

ある夜,顧客の裕福な独居老人・平林孝三(石橋蓮司)の家で一度顔を合わせた孫の光太(池松壮亮)と再会した梨花は,何かに導かれるように大学生の彼と逢瀬を重ねるようになる。久々に気持ちが浮き立つ梨花。ある時,化粧品売り場で持ち合わせが足りないことに気づいた彼女は,客から預かった金に手を付けてしまう。「すぐに戻すから大丈夫」と自分に言い聞かせる梨花だったが,それが転落へと向かう暴走の始まりだった…。

巨額横領に手を染める梨花の善悪の混沌が,彼女の漕ぐ自転車のスピードに比例し加速してゆく。善悪の両極とそこに生まれる歪みを,同僚の隅と相川のバランスや,梨花の中学時代のフラッシュバックが暗示する。『紙の月』という「ニセもの」を意味するタイトルが,紙幣と幻想までをもその月影に映しながら,見る者に多様なエンディングを投影する秀作。

宮沢りえはこの作品で『たそがれ清兵衛』(2002年・松竹)以来12年ぶり2度目となる日本アカデミー賞・最優秀主演女優賞を受賞している。


映画クタ評:★★★★


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『紙の月』
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