本能寺ホテル | p・rhyth・m~映画を語る~

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監督:鈴木雅之
キャスト:綾瀬はるか/堤真一/濱田岳
配給:東宝
公開:2017年1月
時間:119分




日本の歴史上,最も有名な事件とも言える“本能寺の変”。中国地方の平定のため備中高松城を包囲していた羽柴秀吉から援軍を要請され,自らの出馬を決意した信長。当時,安土城を訪れていた家康の接待役だった家臣の明智光秀(この接待で接待内容で信長の怒りを買い,信長の指示を受けた森蘭丸から鉄扇で頭を叩かれたとも言われている)も出陣を命じられる。信長自身は中国遠征の準備のために100人ほどの家臣のみを連れて京都に移動し,本能寺に滞在していた。

天正10年(1582年)6月2日未明,秀吉の元に向かっていたはずの光秀が突然進路を変更し,本能寺へ。1万人以上という圧倒的多数の明智軍に攻められた信長は寺に火を放ち自害する。幼時から信長の小姓として仕えてきた蘭丸も本能寺の変で落命する。当時は首を晒すことが相手を討ち取った証だったため,光秀は信長の遺体を探させるが,結局見つけられず,信長の死を世に示すことはできなかった。そのため,信長は実は本能寺を脱出したという生存説まで囁かれた。

天下統一を目前にした織田信長は,なぜ明智光秀に謀反を起こされたのか? 自害したはずの信長の遺体は何処に行ったのか? 光秀を討つために10日間で約200kmという猛スピードで京都方面へと移動した秀吉の“中国大返し”は,なぜあれほど迅速だったのか? 日本史上,最大のミステリーと呼ばれる“本能寺の変”は,今もなお多くの謎に包まれている。

そして,もしも事前にその運命を信長に伝えようとした現代人がいたとしたら? という歴史エンターテインメント作品を,今夜は紹介。監督は『HERO』『プリンセス トヨトミ』(2011年・東宝)の鈴木雅之。

勤めていた会社が倒産してしまい,流されるままに恋人・吉岡恭一(平山浩行)のプロポーズを受け入れ,恭一の両親の金婚式の祝賀パーティに出席するため京都を訪れた天真爛漫な女性・倉本繭子(綾瀬はるか)。しかし,予約したはずのホテルには手違いで泊まれず,途方に暮れてたどり着いたのが,路地裏にひっそりと佇む“本能寺ホテル”だった。「ようこそ,本能寺ホテルへ」と出迎えた支配人(風間杜夫)に導かれるように,繭子は不思議な世界へと足を踏み入れる。

時は1582年。武将と家臣団たちが逗留のため京都・本能寺に滞在している。冷酷非道なお館様を前に,戦々恐々とした日々を過ごす家臣たち。そこに,不思議なエレベーターに導かれた風変りな女性が迷い込む。噛み合わない会話を繰り広げるその女の正体は“本能寺ホテル”にチェックインしたばかりの繭子だった。そして,突如彼女の前に現れたのは天下統一を目前にした名将・織田信長(堤真一)。繭子は自分でも訳の判らないまま“本能寺ホテル”と1582年の本能寺を行き来しながら,信長や,信長に仕える小姓・森蘭丸(濱田岳)との交流を深める中で,次第に信長の人間性に惹かれていく。やがて繭子は,1582年の迷い込んだその日が“本能寺の変”が起きる前日である事に気づくのだった…。

織田信長と言えば,最近では『信長協奏曲』の小栗旬や,昨年のNHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』の市川海老蔵のイメージが強烈で,堤真一がピンと来ない感じだったが,ストーリーの進むうちに“凛とした中にも人情味のある信長”の美味が醸し出されてくる。そこで生まれる“不思議姫”綾瀬はるかとの掛け合いが絶妙の面白さを際立たせる。脇を固める濱田岳,髙嶋政宏,近藤正臣,風間杜夫といった,日本を代表する個性派俳優が奇想天外な物語に説得力を与えてゆく。

ただ,
「何ができるかではなく,何をしたいか?」