日本のいちばん長い日 | p・rhyth・m~映画を語る~

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英題:THE EMPEROR IN AUGUST
監督:原田眞人
キャスト:役所広司/本木雅弘/松坂桃李
配給:アスミック・エース/松竹
公開:2015年8月
時間:136分




終戦の日にちなんで,このコーナーではあまり扱わない太平洋戦争絡みの邦画を2夜連続で紹介。2年前に『終戦のエンペラー』を紹介した後,さらに高まった隣国の脅威と憲法第9条改正論と政治の混乱を考える際に,ぜひ知っておきたい自国の72年前の史実を,資料としてではなく物語として見せる作品の存在には意義がある。煽動されるのでなく,各自が自分の感情と意見を持ち,自国の現在と未来を見極めてゆくために,過去を知ることは不可欠だと思う。

原作は,昭和史研究の第一人者・半藤一利の傑作ノンフィクション『日本のいちばん長い日 運命の八月十五日 決定版』。昭和天皇や閣僚たちが御前会議において降伏を決定した1945年(昭和20年)8月14日の正午から宮城事件,そして国民に対してラジオの玉音放送を通じてポツダム宣言の受諾を知らせる8月15日正午までの24時間が描かれてゆく。映画化は2度目で,前回は岡本喜八監督による1967年版(東宝)。2015年版は同年5月に『駆込み女と駆出し男』を送り出した原田眞人監督により松竹から配給された。

太平洋戦争末期の1945年4月。戦況が悪化の一途を辿る中,次期首相に任命された77歳の鈴木貫太郎(山﨑努)は,組閣の肝となる陸軍大臣に阿南惟幾(役所広司)を指名する。2人はかつて,侍従長,侍従武官として共に昭和天皇(本木雅弘)に仕えた関係でもあった。やがて連合国軍にポツダム宣言受諾を要求された日本は降伏か本土決戦かに揺れ,連日連夜の閣議で議論は紛糾。結論の出ないまま広島,長崎に相次いで原子爆弾が投下される。

それでもなお,畑中(松坂桃李)ら陸軍の若手将校たちは本土決戦を訴え,阿南に戦争継続を強く迫る。阿南はそんな将校たちの暴発を押さえようと対応に苦慮する。一方,戦争の終結か継続か,議論がまとまらない御前会議では,鈴木首相が天皇に聖断を仰ぐのだったが…。

1945年8月15日に玉音放送で戦争降伏が国民に知らされるまでに何があったのか,歴史の舞台裏がリアルな映像で淡々と綴られる。しかしまったく退屈させないのは,そこにみなぎる俳優力。実力派の俳優たちが,時を超えて実在の人物たちを召喚する。彼らの,様々な立場から純粋に“国を思う”パワーに圧倒され,最後まで見入ってしまう。

共演は他に,堤真一,矢島健一,松山ケンイチ,戸田恵梨香など。昭和天皇を演じた本木雅弘は,第39回日本アカデミー賞・最優秀助演男優賞を受賞した。


映画クタ評:★★★★


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