TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ | p・rhyth・m~映画を語る~

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監督:宮藤官九郎
キャスト:長瀬智也/神木隆之介/尾野真千子
配給:東宝/アスミック・エース
公開:2016年6月
時間:125分




例えば演劇では,限られた舞台上にセットや照明で背景や環境を作る。観客は,幕が降りるまでの時間,そこにある仮想現実の中にイマジネーションを同化させる。セットに窓があれば,その向こうには街が広がっているし,中世のヨーロッパであれば,時間も国も飛び越えてそこに居ることができる。しかし終演後に劇場を出ると,仮想を働かす余地のない現実社会に引き戻される。そしてまた舞台が恋しくなり,再び足を運ぶ。

演劇出身の宮藤官九郎の監督4作目となるこの作品の舞台は“地獄”。さらにロックと六道と輪廻を融合して,現実社会とのラウンド・ドリップをコミカルに描き出してみせた。この設定だけでも,すでに他の監督・脚本家の追随を許さない“クドカン・ワールド”。劇場で観たかったのだが,予定が合わず涙を飲んでいた作品。迷わずソフトを購入した。

同級生のひろ美(森川葵)に一途な想いを抱く平凡な高校生の大助(神木隆之介)。ある日,修学旅行中に乗っていたバスが事故に遭い,あっけなく死んでしまう。しかもなぜか,たった一人だけ地獄に堕ちていた。そんな彼の前に、地獄専属ロックバンド“地獄図(ヘルズ)”を率いる赤鬼のバンドマン,キラーK(長瀬智也)が現われる。彼によると,地獄農業高校で毎週金曜日に行われるえんま校長(古田新太)の裁きによって,現世(人間道)に転生できるチャンスがあるという。しかしその裁きは気分次第で,とにかくえんま校長へのアピールが大事。何としても現世に戻り,ひろ美への想いを遂げたい大助はさっそく地獄農業高校に入学し,人間道を目指してキラーKによる地獄の鬼特訓を受けるのだったが…。

「(最近は)小さい物事で大きく悩んでいる映画が多いけれど,この映画は大変な出来事なのにあまりクヨクヨしていない。それが自分の個性なのかな」と言っていた宮藤監督。あえて舞台上であるかのように作られた地獄には,ハイトーンで「Mother-fucker!」と叫ぶキラーKをはじめ,スタッズまみれの衣装をまとったCOZY(桐谷健太)や邪子(清野菜名)など,強烈な個性がひしめき合う。その地獄と現世の輪廻を繰り返す大助の姿は,演劇舞台と現実社会を行き来する観客の感覚に似ていないだろうか。

キラーKの現世での物語や,妙に可愛い亀井なおみ(尾野真千子)との絡みにもじんわりとさせられながら,最後には一緒にタテノリで「Too Young To Die~!」と歌ってしまう痛快さ。『真夜中の弥次さん喜多さん』,『少年メリケンサック』(2009年・東映),『中学生円山』の3作が,実はこの作品のためのプレリュードだったのではと思わせる“クドカン・ワールド”の集大成を感じた。もちろん次作では,さらに予想を超えた世界を見せてくれると期待が膨らむ。

出演は他に,宮沢りえ,荒川良々,みうらじゅん,Char,野村義男、マーティ・フリードマン,ROLLY,烏丸せつこ,田口トモロヲ,中村獅童など。登場の判りにくいキャストも居るので,探してみるのもお楽しみ♪


映画クタ評:★★★★


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