中学生円山 | p・rhyth・m~映画を語る~

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監督:宮藤官九郎
キャスト:草彅剛/平岡拓真/遠藤賢司
配給:東映
公開:2013年5月
時間:119分




SMAP主演作品特集の4回目は草彅くん。【くた★むび】では『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』のグリシャ役でのサプライズ出演に触れただけだが,TVドラマや映画・演劇への出演は多く,関係者から“天才”と評価されている。中でも,演出家・直木賞作家の故・つかこうへいが記した「穏やかな笑顔の奥に哀しみが隠れ,静かなたたずまいの身中には秘やかにケモノが眠る。ひとたび台詞を発すればケモノは目覚め暴れだし,彼の内部は鋭い牙に切り裂かれる。その痛みを,絶望的な孤独を,まっすぐ見下ろし受け入れる勇気を持つ」という評価は,鮮烈で,的確だと感じる。

そんな草彅くんの主演作から今夜は『中学生円山』を紹介。監督は人気脚本家でもある宮藤官九郎。監督デビュー作の『真夜中の弥次さん喜多さん』で〈リアルと幻覚〉を,続く『少年メリケンサック』(2009年・東映)で〈哀愁と情熱〉を,誰にも真似のできない世界観で映像化してきた宮藤監督が,人気を博した朝の連続ドラマ『あまちゃん』の脚本と同時期に手掛けた3作目の監督作品。

父・克之(仲村トオル),母・ミズキ(坂井真紀),妹・あかね(鍋本凪々美)という平凡な家族と団地に暮らす中学2年生の円山克也(平岡拓真)は,おバカな野望を抱き,身体を極限まで柔軟にすべく日夜“自主トレ”に励む日々。いつしか,ストレッチ中に痛みを感じると妄想の世界にトリップするようになってしまう。そんなある日,真上の部屋に,いつもベビーカーを押している謎めいたシングルファーザー・下井辰夫(草彅剛)が引っ越してくる。ほどなくして,団地の近所で殺人事件が発生する。克也は,下井が犯人ではないかとの疑いを抱き,次第に彼を凄腕の殺し屋=子連れ狼に見立てたあらぬ妄想に取り憑かれていくのだったが…。

思春期真っ盛りの中学生が,謎めいたシングルファーザーとの奇妙な交流を通じて自らの妄想を爆発させつつ現実と向き合っていく姿を,バラエティに富むキャストと大胆演出で描き出す青春コメディ。その熱唱シーンが構想のベースになったというエンケンこと遠藤賢司も井上のおじい役で出演する。ここでしか見られない俳優たちの個性的なキャラと展開が“よく判らないけど惹かれる”クドカン・ワールドを増幅させてゆく。

出演は他に,YOU,ヤン・イクチュンなど。何にも似てない,どの映画にも,どんな瞬間にもない2時間。個人的には好きな作品だが,決して万人ウケする作品世界ではないので,『真夜中の弥次さん喜多さん』同様,今回も敢えて★3つにしてみた。


映画クタ評:★★★☆☆


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