レヴェナント:蘇えりし者 | p・rhyth・m~映画を語る~

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原題:The Revenant
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
キャスト:レオナルド・ディカプリオ/トム・ハーディ/ドーナル・グリーソン
配給:20世紀フォックス
公開:2016年4月
時間:156分




『ギルバード・グレイプ』(1994年・ブエナビスタ)での助演男優賞ノミネートに始まり,『アビエイター』,『ブラッド・ダイヤモンド』(2007年・ワーナー),『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(2014年・パラマウント)の3作では主演男優賞にノミネートされながら栄冠を手にすることができず,いつしか「無冠の帝王」と呼ばれていたL・ディカプリオに,5度目のにして念願のオスカー像をもたらした作品。これは観とかなきゃでしょ! と,劇場に足を運んだ。

1823年,西部開拓時代のアメリカ北西部。毛皮を採取するために狩猟の旅を続けるチームが未開の大地を進んでいく。ヘンリー隊長(ドーナル・グリーソン)をリーダーとするそのチームには,ガイド役を務めるベテラン・ハンターのヒュー・グラス(レオナルド・ディカプリオ)と先住民の妻との間にできた息子ホーク(フォレスト・グッドラック),グラスを慕う若者ジム・ブリジャー(ウィル・ポールター)や,反対にグラスに敵意を抱く荒くれハンターのジョン・フィッツジェラルド(トム・ハーディ)などがいた。

ある日,一行は先住民の襲撃を受け,多くの犠牲者を出す事態に。混乱の中,グラスたち生き残った者たちは船を捨て陸路で逃走することに。そんな中,グラスがハイイログマに襲われ,瀕死の重傷を負ってしまう。ヘンリー隊長は旅の負担になるとグラスを諦め,ホークとブリジャーとフィッツジェラルドに彼の最期を看取り丁重に埋葬するよう命じたが,グラスを殺そうとするところをホークに見つかり銃を向けられたフィッツジェラルドは,ホークを返り討ちにし殺してしまう。フィッツジェラルドはブリジャーを騙し,グラスに軽く土をかけただけでその場を離れる。動けないまま一部始終を見ていたグラスは奇跡的に一命をとりとめ,折れた足を引きずり這いながらフィッツジェラルドを追うのだった…。

原作は,マイケル・パンクの小説『蘇った亡霊:ある復讐の物語(The Revenant: A Novel of Revenge)』。アメリカの西部開拓時代を生きた実在の罠猟師ヒュー・グラスの半生と,彼が体験した過酷なサバイバルの旅が描かれている。320kmもの道のりを粘り強く這うように進み,戻ったグラスを人々は「reverant(蘇った亡霊)」というあだ名で呼んだという。

この作品では予告編から“最愛の息子を奪われた男の復讐劇”という部分ばかりがクローズアップされてきた印象があった。しかし,おそらくディカプリオのキャリアの中で最も台詞の少ない本編は,3時間後にグラスの荒い息遣いを残しながら暗転し,坂本龍一によるテーマ曲と共にエンドロールと混じる瞬間に,観る者に強烈なメッセージをぶつけてくる。

描かれたのはグラスだけでなく,先住民や,フィッツジェラルドや,さらに野生の動物たち全ての“生への渇望”だということ。そして,自然と対峙してきたこの人類の姿勢が,200年後の現代に繋がっていること。文明と充足にあぐらをかいている私たちが作品世界を通して,これらを再認識することこそが,次の200年へと繋がっていくのだろうと,熱く思い知らされる。


映画クタ評:★★★★★


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