ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2

原題：Harry Potter and the Deathly Hallows: Part 2
監督：デヴィッド・イェーツ
ｷｬｽﾄ：ダニエル・ラドクリフ／ルパート・グリント／エマ・ワトソン
配給：ワーナー・ブラザース映画
公開：2011年7月
時間：130分

【くた★むび】について

10年に渡る映画シリーズも，ついに最終章。それにしても，敵も味方も子供も大人も，亡くなったリチャード・ハリス以外の全員を，10年間キャスティングしたプロダクション力は驚異的。フィナーレの感傷もあって，この『死の秘宝 PART2』は特にシリーズの歴史を感じさせられる。豪華なセットも贅沢なVFXも，全てが世界一のヒット・シリーズを裏付ける仕様だ。

『ハリー・ポッター』が10年間使い続けたことで，ロールスロイスの飛行機エンジン工場跡地だったリーブスデン・スタジオ（東京ドーム17個分の広さ）は大撮影所となり，クランクアップの後も「ワーナー・ブラザース・スタジオ・ツアー：メイキング・オブ・ハリー・ポッター」として，ホグワーツやダイアゴン横丁のセットを見学できる人気観光地となっている。

「死の秘宝」のひとつ“ニワトコの杖”を手に入れたヴォルデモート（レイフ・ファインズ）。一方，彼を倒すために必要な“分霊箱”がグリンゴッツ銀行内のベラトリックス（ヘレナ・ボナム＝カーター）の金庫に隠されていると直感したハリー（ダニエル・ラドクリフ）は，ベラトリックスに変装したハーマイオニー（エマ・ワトソン），デスイーターに変装したロン（ルパート・グリント）とともに金庫に潜入し，そこで“ヘルガ・ハッフルパフのカップ”を手に入れる。地下に閉じ込められていたドラゴンに乗ってグリンゴッツを脱出した３人は，残りの“分霊箱”を求めてホグワーツへ。そこでダンブルドア（マイケル・ガンボン）の弟・アバーフォース（キアラン・ハインズ）に助けられ，親友のネビル（マシュー・ルイス）や恋人のジニー（ボニー・ライト）ら“ダンブルドア軍団”の面々と再会を果たした。校長の座に収まったスネイプ（アラン・リックマン）は，突然ホグワーツの大広間に現れたハリーを攻撃しようとするが，マクゴナガル先生（マギー・スミス）らが反撃。スネイプはホグワーツを後にすると，ハリーに“分霊箱”を壊されたことを察知したヴォルデモートは，ホグワーツへの総攻撃を命じる。

ハリーが“分霊箱”を，ロンとハーマイオニーがその破壊方法を見つけようと奔走する中，マクゴナガル先生をはじめとする教師たちもホグワーツを守るために反撃を開始。ハリーはルーナ（イバンナ・リンチ）から“分霊箱”のひとつ“レイブンクローの髪飾り”に関するヒントを得て，伝説の亡霊“灰色のレディ（ケリー・マクドナルド）”に助けを求めることに。ロンとハーマイオニーはバジリスクの牙を使って“ハッフルパフのカップ”の破壊を試みる。

次々と“分霊箱”を破壊され，自分の力が弱まっていくことに焦りを感じるヴォルデモート。しかし，彼らの攻撃はやむことはない。そんな中，ハリーは最後の“分霊箱”の在り処を知り，ついにハリーとヴォルデモートの直接対決の時がやってきた…。

これまでのシリーズを彩ってきたキャラクターたちが総出演する〈ハリー祭り〉。グリンゴッツ銀行の銀行員として10年前にハリーの前に現れた小鬼のグリップフックをはじめ，同じウォーウィック・デイビスが演じたフリットウィック先生。マギー・スミスが演じるマクゴナガル先生。ジム・ブロードベント演じるスラグホーン。エマ・トンプソン演じるトレローニー先生。そしてもちろんダンブルドア（マイケル・ガンボン）にシリウス・ブラック（ゲイリー・オールドマン）など，懐かしい顔ぶれが次々に登場し，ハリーとともに戦ったり，重要な場面でハリーを導いたりしてくれる。

シリーズ最大の謎だったスネイプの過去の秘密も判明。これまでハリーを目の敵にしているようでいて，ピンチの時には助けてくれていたスネイプ。その知られざる過去と思いが，スネイプ本人の意思でハリーに明かされる。名優アラン・リックマンの深みのある演技は泣きどころ。

エンディングは19年後。見る者を，懐かしさと，ほっこりとした気持ちに包みながら，長かったシリーズの幕が下りる…。

さて，シリーズのスピンオフ作品『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』が，今年の冬に公開されると発表された。舞台は『賢者の石』の約70年前のアメリカ。ハリーやハーマイオニーたちがホグワーツの授業で使っていた教科書『幻の生物とその生息地』を編纂した魔法使いニュート・スキャマンダーが主人公となるらしい。