ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1

原題：Harry Potter and the Deathly Hallows: Part 1
監督：デヴィッド・イェーツ
ｷｬｽﾄ：ダニエル・ラドクリフ／ルパート・グリント／エマ・ワトソン
配給：ワーナー・ブラザース映画
公開：2010年11月
時間：146分

【くた★むび】について

６作続いた王道の学園モノから，３人の若者のロードムービーへとガラリとその色合いを変える『死の秘宝 PART1』。物語は“分霊箱”を手に入れるためにデスイーターから姿を隠して旅を続けるハリー（ダニエル・ラドクリフ）とロン（ルパート・グリント），ハーマイオニー（エマ・ワトソン）が迷い，苦しみ，傷ついてゆく姿をじっくりと描いていく。仲間が自分を守るために死んでいく現実に，心を閉ざしそうになるハリー。戦闘の中で兄が激しく負傷した姿を目にし，ハリーのことが信じられなくなってしまうロン。反目しあった２人が苦難を乗り越えて新たな絆で結ばれるまでの友情の物語が，淡々と展開していく。

ヴォルデモート（レイフ・ファインズ）との決戦に向けて，自らが育った場所に別れを告げる決意をしたハリーとハーマイオニー。しかし，ヴォルデモートと合流したスネイプ（アラン・リックマン）たちは，ハリーを抹殺するための行動を本格化させていた。デスイーターの魔の手がハリーに迫る中，不死鳥の騎士団の面々は“ポリジュース薬”を使ってハリーに変身し，ウィーズリー家へと脱出しようとするが，仲間たちが次々に闘いの犠牲になっていく。ついに魔法省はヴォルデモートの手に落ち，ウィーズリー家にもデスイーターが襲来。ハリーたち３人は咄嗟にロンドン市内へ逃げるが，魔法界にも人間界にも安全な場所など残されていなかった。

ヴォルデモートを倒すには，彼の魂が収められた“分霊箱”を探し出し，破壊するしかない。シリウス家の屋敷しもべ妖精・クリーチャーの協力で，分霊箱のひとつであるロケットをアンブリッジ（イメルダ・スタウントン）が持っていることが判明し，３人は魔法省に忍び込む。ロケットは手に入れたものの，魔法省を脱出する際にロンが大怪我を負い，３人はしばらく森に留まることに。その間にもヴォルデモートに支配された魔法省の暴走は加速し，遂にはスネイプがホグワーツ魔法魔術学校の校長に就任することが発表された。焦るハリーと，分霊箱の影響で心を病んだロンは言い争いになり，遂にロンはハリーと行動を別にすることに…。

ロンとハリーの友情，ハーマイオニーとの愛の行方を絡め，様々な危険の潜む戦いの中で，ハリーたちは多くの挑戦を乗り越え，次第に「死の秘宝」の謎に迫っていく。そこに居るのはもう『賢者の石』の頃の〈存在だけで可愛い〉３人ではなく，過酷な試練に立ち向かう運命を持った〈危なげな救世主〉たちの姿。たった17歳なのに，自分や自分の人生を超越した大義のために闘う作品中の３人に，十代を丸ごとシリーズに捧げてきた俳優としての成長を重ねながら，静かにクライマックスへの期待と興奮を煽る１本と言える。