名古屋市の河村たかし市長が「住基ネット」からの離脱を表明した。総務省を訪れて原口一博総務相に直談判したのだ。河村市長は「人間に番号をつけて国が管理するのは、牛に番号をつけるのと同じ」と主張。住基ネットの非接続は違法とされているが、もし名古屋市が離脱すれば、他の市町村にも広がる可能性がある。

■河村市長「来年度予算に計上せず、切断を含めて考える」

 河村市長は2010年1月19日、総務省で原口総務相と面会。住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)から離脱したいという考えを伝えた。河村市長は

  「人間に番号をつけて国が統合的に管理するのは、民主党政権の1丁目1番地である地域主権ともっとも対立する概念。ぜひ廃止をしていただきたい」

と原口総務相に訴えた。民主党は野党時代に住基ネットを廃止するための法案を4回提出した経緯がある。河村市長はそのときの法案を見せながら、

  「来年度予算が近付いているが、(住基ネットの関連予算については)とりあえず保留にして計上しないということで、名古屋では議論していく。切断を含めて考えていくので、総務省のほうでも対応をお願いしたい」

と伝えた。原口総務相は

  「対応のスピードについては、もうちょっと事務方で話をさせてほしい」

と回答。河村市長の要請をそのまま飲むのではなく、時間をかけて議論したいという意向を示した。会談後、河村市長は来年度予算に住基ネット関連の費用を「計上しないつもりだ」と記者団にも表明。

  「人間に番号をつけて中央で管理しようというのは、牛に番号をつけるのと同じようなもの。ソ連のスターリンがやろうとした人間統合システムだ。スターリンもびっくりするような仕組みを日本で導入しようというのは、断固反対しないといけない」

と自らの意見を強調した。

■原口総務相は「いまある法律は、私たちも守らないといけない」

 一方、原口総務相は会談後の会見で

  「私たちは住基ネットの廃止法案を4回にわたって出してきた政権だから、その立場で事務方にも指示している」

と河村市長の主張に理解を示しつつも、

  「いまある法律は、私たちも守らないといけない。その前提のなかで議論を進めていきたい」

と名古屋市の離脱をすぐに認めるわけではないという姿勢を示した。

 住基ネットをめぐっては、プライバシー保護などを理由に接続に反対する動きがあり、東京都国立市と福島県矢祭町は住基ネットへの「非接続」を続けている。東京都杉並区も当初は住基ネットに接続せず、国に「区民選択方式」を求める訴訟を起こしたが、敗訴が確定。09年1月から接続するようになった。国立市と矢祭町に対しても、総務省が是正を求めている。

 河村市長の「離脱表明」はこのような動きに逆らうものだが、もし名古屋市が住基ネットから離脱すれば他の自治体にも波及する可能性がある。地方自治を専門とするフリーライターの小川裕夫さんは

  「これまで反対の声を上げた自治体は少ないが、名古屋市のような大きな市が離脱すれば、追随するところも出てくるだろう。河村市長は原口大臣との会談後に『国立市や矢祭町とも連絡を取りたい』と言っており、今後の展開に注目したい」

と話している。


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