山梨県笛吹市春日居町の山梨岡神社に、木彫りで一本足の不思議なご神像が祭られている。古代中国の地理書「山海経」に登場する怪獣に似た「きの神」とされる。神社では7年に一度、春の例大祭でご開帳されるだけで、普段人目に触れることはない。現在、県立博物館(笛吹市御坂町)で特別公開中で、神とした起源の謎が探られている。

 神社の由緒書にはご神像を「木彫ニシテ丈一尺八寸(68センチ)躰ハ獣ニ似テ一足至テ奇怪異様ノ神像ナリ」とされている。また「其作者ノ何人タルヤ知ラス又安置セル縁由及年代トモ不詳」とある。

 学芸員の丸尾依子(よりこ)氏によると、きの神らしきは江戸時代の儒学者で、柳沢吉保に仕えた荻生徂徠(おぎゅうそらい)の「峡中紀行」(1706年)に初めて登場する。

 社の扉の前にひとつ足の獣の木像があると記されており、この時点では神像の扱いがされていないことがわかる。

 しかし1800年代には厄よけにときの神が木版画となって旗本などに配られていた事実がある。

 「山海経」に登場するきの神は、「7千里の山頂に住む獣は牛のような姿をして全身青く、角がない一本足。水に出入りするときは風雨を伴い、声は雷のようだ」(要約)とあるが、山海経の挿絵と同神社の神像とは幾分姿が異なる。

 一方、神社周辺で雷の季節に神像の掛け軸を飾り、雷除けとする信仰があるという。

 江戸時代に妖怪ブームが起きた。神とは御利益だけをもたらすのではなく、ときには自然を敬うことを人間に教えることもあるといわれる。

 丸尾氏は「きの神とは山梨岡神社がある御室山にすむ精霊が木像に降臨したものではないだろうか」と結んだ。公開は1月25日まで。(電)055・261・2631。

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