典医寺に走る

 

「どうしましょう~テジャン」

医仙に護衛につけた若いウダルチが

泣きそうな顔で報告に来た

その頭を叩きたいのを我慢する

詰めが甘かった

医仙の方が上手だ

こいつらでは無理だったか

作戦失敗

ため息が出る

頭は良いのだろう

何と悪知恵が働くことだ、あの方は

「何故?大人しくしていない

我が身が危ないというのに」

俺の身体に青い稲妻が走る

チュンソクとトクマンが怯えて後ずさる

 

火事が起きる予兆に

前もって船から逃げ出すネズミのように

危機感を感じた他の部下は

とっくに逃げ出している

逃げられない立場のチュンソクと

逃げられないように

チュンソクが襟(エリ)を

離さないトクマン以外

良い勘をしている部下達は全員退避

 

今から目を通し承認する

否、承認しない

その判断を下す書類が溜まっている

ウダルチの再編成を編んだものを

組頭達と話し合わなければならぬ

そして事案が一つ

他に諸々の仕事がある

忙しいのだ、俺は

何故?事を荒立てる

自分の身を考えてくれ

何か?あったらどうするのだ

握りしめた手にパチパチと稲妻が弾ける

 

恐る恐るチュンソクが

「テジャン?もしよろしければ

書類は私が処理できますし

ウダルチの再編成は組頭達と

私とトクマンにて水面下で

忌憚(きたん)のない意見を出させて

まとめさせた方が上手くいくかと」

と言い出した

「だから、何だ?」

頭を低くして怯えるチュンソク

「俺が居ない方が良いと思うのか⁈」

後ずさるチュンソクをトクマンが支える

いや、盾にする

「いえ今、急を要するのはその二つかと

たたき台(原案)を作ります

それをテジャンに見ていただければ

テジャンの手間を省けるかと」

俺は考えるふりをする

手を後ろに組んで部屋の中を

行きつ戻りつする

そんなに簡単に仕事を放棄できない

でも典医寺に行きたい

 

トクマンがチュンソクを

盾にして顔を出しながら

「テジャン?こいつらの他に

こうなったら

ムガクシの方が都合が良いのでは?

簡単な医術の心得を少なからず

身につけていると聞いてます

チェ尚官様に治療中の医仙様の

お側につけるムガクシをお願いしに行きます

それまで、とりあえず医仙様の様子を

今すぐに見に行かれてはいかがですか?」

俺はため息をついた

身体を走る稲妻が消えた

「そうだな」

「チュンソク、頼めるか」

「お任せ下さい!」

やっと直立不動で、笑顔になったチュンソク

えらく良い返事だな

めんどくさそうに部屋を出る俺

離れたところから走った

典医寺に向かって急ぐ

 

チュンソクとトクマンが

扉から手を振っていた

ホッと肩から息をはく二人

「兵舎が壊れるとこだったぞ

まったく、死ぬかと思った

久しぶりに稲妻が走るほど

怒るテジャンを見たな」

チュンソクの言葉にトクマンは

「いつもテジャンは俺達に

怒っているじゃないですかぁ

でも身体に稲妻が走るほど

テジャンを怒らせるのは医仙様だけですよ

まぁ、口でテジャンが負けるけど

本気で心配しているんですね

とばっちりを受けるのは俺達だから

手加減してくださいね~医仙様」

 

トクマンは天に手を合わせる

 

 

 

 

 

 

 

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