腰痛持ちの私にお勧めの接骨院があるということで、私はその妻の父親の友人でもあるという先生のところへ、妻の母親の車を借りて出掛けて行きました。
駐車場はある。と聞いておりました。
院の建物の前には車約3台分程のスペースがありました。
1台停めてあったので、ここに停めて良いのだなと判断致しました。
しかし、
3台目が停められるように私の車を配置することは不可能なようでした。
3台目が停められるように私の車を配置することは不可能なようでした。
待合室を見回しますと、続き間のような和室があり、
そこでテレビを観ている3人の年配の女性達がありました。
私が待合室に入ると、全員が一斉に私に目を向けました。
そこでテレビを観ている3人の年配の女性達がありました。
私が待合室に入ると、全員が一斉に私に目を向けました。
するとその中の1人の女性が、ひょいっと【右手を上げて】私をまっすぐに見つめておられました。
(な、何だ?知り合いか?挨拶か?)
(いや、全く見覚えのない女性だ)
(きっと単に山形の人は【気さく】なのだろう)
心の声を外には出さず、私は曖昧に笑顔を浮かべながら、ヘコヘコと何度か頭を下げてこの場をやり過ごす算段をしました。
ところがその時、それは挨拶ではなさそうだなという判断をせざるを得ない状況が、右手を上げた女性以外の2人の女性によって知らしめられたのです。
2人の女性は私を一直線に見据えたまま、手のひらを返し、【右手を上げた女性】を私に紹介している様なポーズをとっていたのです。
(しょ、紹介?)
(こ、ここで?)
(突然に?!)
このまま事実を知らずにやり過ごすことは許されない状況であると察しました。
「な、何ですか?」
戸惑っている事実を一切隠す素振りもなく、私は3人の女性に尋ねました。
もっと早い段階で「何故手を挙げているのですか?」と尋ねていれば早く解決したのでしょうが、戸惑う私に追い討ちをかけるように紹介のポーズをとる2人に、異常さの様なものを感じていた私は、とにかくそのことも含めて
「何なのですか?」
と逃げ出したい気持ちを抑えながらもう一度力強く尋ねました。
「何なのですか?」
と逃げ出したい気持ちを抑えながらもう一度力強く尋ねました。
「順番。」
と1人の女性が言いました。
「は?!」
「順番だよ。」
「この人が最後なの」
「はあ・・?!」
なんとなく理解への道がひらけている予感を感じながらもまだ戸惑いを隠しきれない私。
「あなたはこの人の次!」
(なるほど)
(受付などはないのですね!)
「あ、それを教えてくれてたわけですね」と私。
「だから次の人が来たら、あなたが手を上げるんだよ!」
「はい。承知いたしました。」
胸の奥、そのどこかに若干の苛立ちのようなものを感じながらも、私は今日一番の快活な声で返事をしたのでした。
そして、
「おおい!」
診察室のドアの向こうから、呼び声のような声が聞こえてくると、
色々教えてくれた女性が、少しだけ照れたような表情を浮かべて診察室へと入って行きました。
その後、何度かの診察室からの呼び声を経て私も、
「おおう!」
というような声を合図に
中へと入って参りましたが、
それまでの間、【右手を上げた女性】の顔を忘れないように何度も確かめるチャンスを伺い、
その挙動を逐一確認しながらの数十分はとても長く、
「おおう!」だか、「おいよー!」だか
何と言っているのか分からない慣れない【呼び出しに】戸惑いながら、
待っている間に読もうと思って持って行った本も楽しめず、
油断のならない時間を過ごしていたのでした。
とてもユニークかつ、満足のいく治療が終わり、
建物の外へ出ると、カースペースと思しきスペースには
私のを含めて【4台の車】が停まっておりましたが、
なにかそれはとても自然なことに感じ、
私自身の心のスペースまでも
広がったような気がしたのでありました。
藤島住宅 岩原 賢太郎