天守物語 | 辻村寿和Collection「寿三郎」創作人形の世界

辻村寿和Collection「寿三郎」創作人形の世界

創作人形作家辻村寿三郎の作品を皆様にご紹介いたします。

本日は82年に初演された
泉鏡花原作 辻村寿三郎人形芝居「天守物語」をご覧下さい。

1982年 前進座劇場

1985年 大阪国立文楽劇場

泉鏡花1917年(大正6年)の作品

「天守物語」(てんしゅものがたり)は、1917年に泉鏡花によって書かれた戯曲。

文芸誌「新小説」に発表された。

鏡花は「この戯曲を上演してもらえたら、こちらが費用を負担してもよい」
という主旨の発言をしているが、生前には舞台化されることはなかった。

天守物語 押し絵
ジュサブロー館の創作日記

白鷺城"と呼ばれる播州姫路城の天守閣には、
不思議な力で生きる魔界の者たちが住んでいた。

写真をクリックすると大きいサイズで見ることが出来ます。
細かいディテールをご覧ください。

富姫
ジュサブロー館の創作日記

ある日、天守の主人・富姫は下界の者たちの鷹狩りのあまりの騒々しさに辟易し、
夜叉ケ池の白雪姫に嵐を依頼する。突然の豪雨に流される人間たちを見て、
富姫はしゃぎ楽しむのだった。

侍女たち
ジュサブロー館の創作日記

そんな彼女のところへ、猪苗代に住む妹・亀姫が舌長姥と朱の盤坊を伴ってやって来る。
亀姫が土産に持参した猪苗代の城主の首を見ながら、話に花を咲かせる富姫たち。
さらに彼女たちは手毬遊びに興じ、一時を過ごすのだった。

亀姫
ジュサブロー館の創作日記


亀姫の帰り際、富姫は城へ戻る鷹狩りの一行から霊力を使って
獲物の鷹を奪い取り、妹に土産として持たせてやる。

舌長姥
ジュサブロー館の創作日記

朱の盤坊
ジュサブロー館の創作日記

ところがその晩、100年の間、誰も近寄ったことのない天守に一人の若侍が上がって来た。

彼は鷹匠の図書之助といい、城主・播磨守の命令で逃げられた鷹を探しに来たのだった。

図書之助
ジュサブロー館の創作日記

そこで富姫に会った図書之助は、彼女の姿を見ても臆せず涼やかな態度を保ったことから、
本来なら生きて帰れぬところを無事生還する。

薄(すすき)
ジュサブロー館の創作日記

だが、途中で明かりを失った図書之助は、再び天守へ戻らざるを得なくなった。

今度ばかりは命を奪おうと思う富姫だったが、
図書之助の話を聞くうち、人間界の理不尽さに同情する。

やがてそれは恋へと転じ、富姫は彼を帰したくなくなってしまった。

富姫
ジュサブロー館の創作日記

図書之助は富姫に惹かれつつも、
城主の命令に背くことは出来ないと下へ戻ることを懇願した。

富姫は今回もそれを許し、さらに天守に上った証拠として武田ゆかりの兜を持たせてやる。

図書之助
ジュサブロー館の創作日記


ところが、それが原因で図書之助は窃盗の容疑をかけられてしまい、
あまりの理不尽さに城主への忠誠心もなくなった図書之助は、
同じ命を落とすなら富姫によって殺されたいと三たび天守へ参じる。

富姫
ジュサブロー館の創作日記

だが、そんな彼を富姫は獅子頭の母衣の中へ匿う。

やがて、図書之助を追って、追っ手の者たちが天守へ上がって来た。

図書之助
ジュサブロー館の創作日記

そこで富姫は獅子頭を暴れさせ彼らを退散させようと試みるが、
その際に獅子の眼を傷つけられてしまう。

富姫
ジュサブロー館の創作日記

同時に富姫も図書之助も視力を失うことになり、もはやこれまでか
と二人が死を覚悟した時、獅子頭を彫った桃六という男がが突如として現れ、
獅子の眼を彫り直すのであった。

富姫
ジュサブロー館の創作日記

獅子の眼が直ると二人の視力も回復した。

桃六に救われた富姫と図書之助は永遠の愛を誓い、いつまでも抱き合うのであった。

国立文楽劇場での公演ではこの、桃六の役を辻村寿三郎自身が演じた。

富姫
ジュサブロー館の創作日記
劇中、富姫は7体制作されて、そのすべてを辻村寿三郎自身が繰演、
そのあまりのハードさにたびたび脱水症状に陥った。

1985年大阪国立文楽劇場にて平幹二朗と「天守物語」競演。

初演では人形で演じられていた図書之助の役を平幹二朗さんが出演、
人形と人間の役者によるコラボレーションを実現した。

ジュサブロー館の創作日記