孫崎 享さんの記事です:
Date: Thu, 07 Jan 2016 07:56:25 +0900
Subject: 北朝鮮の核実験:中国を含め国際社会の制裁は強まろう。ただし、歴史的にみれば、国際社会の硬化は独裁体制の強化につながる。


A:事実関係


1:北朝鮮は6日、核実験を実施した。2013年2月以来、4度目。今年5月に予定する朝鮮労働党の党大会に向け、金正恩(キムジョンウン)体制への結束を高める狙いがあるとみられる。これに対し、日米韓に加え、中国も北朝鮮の核実験を禁じた国連安全保障理事会決議に違反するなどと厳しく非難。安保理で制裁強化を検討する。


 北朝鮮の朝鮮中央テレビなどは6日、「特別重大報道」で、初めての水素爆弾実験に成功したとする政府声明を伝えた。今回の実験について、米国など敵対勢力から国を守るための「自衛的措置だ」と主張。米国が敵視政策をやめない限り、「核放棄は絶対にあり得ない」と宣言し、経済改革と核開発を同時に進める「並進路線」を続ける姿勢を示した。


 中国外務省の華春瑩副報道局長は6日の記者会見で、北朝鮮から「事前に何も知らされていない」と述べ、事前通報はなかったことを明かした。過去3回の核実験では、実験前に中国に通報していたとされる。通報しなかったのは、冷え込んだ中朝関係が背景にあるとみられる。中国政府は正恩政権に不満を抱えており、今後、日米韓などとともに厳しい対応に乗り出せば、北朝鮮がいっそう国際社会から孤立する可能性がある。

(1月7日朝日新聞)


2:北朝鮮が初の水爆実験の実施を発表したことを受けて、国連安全保障理事会は6日午前11時(日本時間7日午前1時)から緊急会

合を開いた。北朝鮮を非難する姿勢を打ち出し、制裁強化を話し合う見通しだ。


北朝鮮による過去3回の核実験では、安保理が決議を採択して大量破壊兵器関連物資の輸出入禁止や、ぜいたく品の輸出禁止などの制裁を科した。前回2013年2月の実験では、安保理は直後に非難声明を出し、翌3月に制裁強化の決議を全会一致で採択した。


(1月7日朝日新聞)


3:北朝鮮による「初の水爆実験」は、金正恩第1書記の誕生日が8日に迫る中で強行された。北朝鮮では5月に36年ぶりの朝鮮労働

党大会も控えている。最高指導者の誕生日に合わせ“新たな実験”の成功を強調した背景には、党大会に向けて内部の結束を図る狙いがうかがえる。対外的には緊張の度合いを高めて、任期が残り1年となったオバマ米政権から譲歩を引き出す戦略とみられる。


 北朝鮮では例年、金第1書記の誕生日に関する報道はない。ただ、2010年の北朝鮮による韓国・延坪島砲撃は、当時、金正日総書記の後継者に確定した金第1書記の“功績”を示したものと内外に受け止められており、誕生日前の今回も同様の色合いが濃い。


 その一方で北朝鮮の国内状況は相変わらず悪いようだ。経済の低迷が続き、民心の金正恩政権からの離反はさらに強まっている。


 金正恩体制は、経済建設と核開発を同時に進める「並進路線」を

掲げている。(産経新聞)



B:評価


・これまでの核実験と異なるのは中国との関係である。


「過去3回の核実験では、実験前に中国に通報していたとされ」、今回は事前通報がなかったことを、中国外務省報道官が明確に述べている。


習近平体制になって、北朝鮮の我儘な姿勢を許さないとの雰囲気が高まっている。北朝鮮は経済的には中国に依存する部分が多く、この実験で、国際環境は従来以上に厳しくなる。


・ただし、国際的環境の悪化は必ずしも体制の弱体化につながらない。国際社会の歴史をみれば、国際社会の緊張を招くことによって、国内引き締めを強化することがしばしばみられ、今回もそれに該当する。


・長期的に核保有の道を歩む北朝鮮にどう対応すべきか。


 かつてキッシンジャーは、『『核兵器と外交政策』』核兵器と外交の関係につき次のように述べている。


  * 核保有国間の戦争は中小国家であっても、核兵器の使用に

つながる


  * 核兵器を有する国はそれを用いずして全面降伏を受け入れることはないであろう、   一方でその生存が直接脅かされていると信ずるとき以外は、戦争の危険を冒す国もないとみられる


  * 条件降伏を求めないことを明らかにし、どんな紛争も国家の生存の問題を含まない枠を作ることが米国外交の仕事である


 今回の実験をうけて、米韓軍事演習など一段と強化されるとみられるが、北朝鮮側から見れば、軍事的に北朝鮮を破壊させようとする動きの一環とみられ、長期的にはキッシンジャー的考えの逆である。


 私個人的には、キッシンジャー的考えで行動すべきと判断する。



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