琉球新報:社説
防衛局回答 法治主義を否定するのか
2014年4月30日
これはもはや、“脱法治国家”宣言としか受け止めようがない。民主主義はおろか、法治主義をも否定する暴挙と言うほかない。
沖縄防衛局は28日、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向けた埋め立て工事手続きで、名護市に申請した辺野古漁港の使用許可など6項目の回答期限を5月12日とした理由について「法的根拠はない」と市側に回答した。その上で期限は変わらないとし、市の回答がなければ「ないものとして処理する」と移設作業を強行する方針を示した。
「『法令上必要な手続き』としながら、根拠のない期限設定は矛盾する。手前勝手な言い分」との名護市の指摘は正鵠(せいこく)を射ている。
防衛局は期限設定について「移設手続きを速やかに進めるため」と説明したが、全く筋が通らない。民主国家の官僚としてプライドはないのか。防衛局が自家撞着(どうちゃく)に気付かないとすれば、国の行政組織として致命的な欠陥を抱えていると指摘せざるを得ない。
防衛局は今月11日に名護市に申請したが、稲嶺進市長は回答期限の法的根拠を示すよう要求し、申請書類に不備があるとして追加資料の提出や説明を求めていた。
申請内容にも疑問は多い。市の漁港管理条例によると、占有期間は1カ月、工作物設置目的でも3年を超えられないと定めているが、防衛局は「事業完了まで」と申請している。国に必要な事業であれば、条例無視もいとわないとの姿勢は傲慢(ごうまん)以外の何物でもない。
辺野古のキャンプ・シュワブ内の開発予定区域にある文化財記録保存作業についても同様だ。記録作業は一つの遺跡でも複数年かかることもあるが、防衛局は年度内での終了を市に求めている。地方が国に従うのは当然とのお上意識丸出しだ。地方分権をも否定するもので、時代錯誤と言うほかない。
もちろん防衛局が強硬姿勢を崩さないのは、安倍政権の強い意向が働いているからにほかならない。地元の意向を一切無視し、非民主的に手続きを進めるだけに飽き足らず、法令の根拠もないまま移設作業を強行することは、法治国家を自ら破壊する行為と自覚すべきだ。
こうして見ると、民主的にも法的にも正当性のない辺野古移設作業は、既に破綻しているも同然だ。日米両政府は即座に現行計画を撤回し、国外・県外移設や無条件撤去を検討すべきだ。