[image] Young Chung

ES細胞作成のため卵子からDNAを抜き取る作業


 米企業研究者らが2人の成人から採取したDNAを卵子に注入して数十の細胞に分化した「胚盤胞」を作成、そこから2成人のDNAと完全に符合する胚性幹細胞(ES細胞)の作成に初めて成功した。17日発売の米科学誌セル・ステムセルで発表された。


 この実験結果は、心臓病からアルツハイマーなどさまざまな病気を治療する可能性を持つES細胞を人工的に作成する上での新たな前進を示すものだ。元のDNAを採取した2成人の年齢は35歳と75歳の男性だった。

 

成人からのDNAではなく、胎児と卵子の細胞を使った初期の胎児のクローニングの成功は、昨年発表されていた。今回はそれに2、3点の細かな工夫を加えた実験で、昨年の驚異的な実験結果を確認するとともに、この技術が成人のDNAにも応用可能なことを示した

 

この論文の著者の1人であるアドバンスト・セル・テクノロジー社(本社マサチューセッツ州マールボロ市)のロバート・ランザ主席研究員は「病気の数は年齢を重ねるほど増加する。このため、この人工細胞を成人のDNAから複製できなければ、この技術の価値は限られたものになってしまう」と語った。

 

ただ、この治療に有効な幹細胞の取り出しは、その際に初期の胎児を壊すことになり、一部には人の命を奪うことと同じとの主張もあり、異論も根強い。


 昨年のオレゴン健康科学大の研究者らの実験と同様に、ランザ博士らは受精していない卵子からDNAを抜き出し、それをこの成人のDNAで置き換えた。するとこの卵子が50から100の細胞に分化した「胚盤胞」の段階に達した。


 この胚盤胞から抽出した細胞を人工的に培養したところ、提供者の成人のDNAに完全に一致する幹細胞に変化し、その後、心臓など体を作る器官の細胞にさせることができた。こうした幹細胞は、移植手術のように他人の臓器による拒絶反応を起こさずに病気を治療できる可能性を秘めている。

 

オレゴン健康科学大の研究リーダーだったシュフラート・ミタリポフ博士は、今回の結果が、「われわれの昨年の実験結果を確認するもので、うれしい」と語った。


ただ、今回の前進は、必ずしも完全なヒトのクローンを作ることが容易になったことは意味しないという。サルのクローニングに科学者らは何年も取り組んできたがいまだに成功していない。より複雑でないヒツジ、ウサギ、イヌなどのクローニングでさえ長年の研究が必要だった。



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