前回で3回戦の組み合わせを仮定。そしてまず紫義塾が、続いて西海がベスト8進出を決めました。


第3試合は青葉城vs光。試合前、ジャンケンに若菜が勝ち、光の先攻で試合が始まった。


「さあ、きやがれ」

阿波北戦で大当たりだった若菜は威勢よくバッターボックスに入った。青葉城のバッテリーは若菜の勢いをかわそうとスローカーブで入ったが

「きた」

十分ひきつけセンター前ヒットで出塁する。


試合前の光高校のミーティング。

「いいかお前達、この試合は早い回に先制点を取ることが重要だ。そうすれば2回戦の勝ちが生きてくる」

「はい」

2回戦の22得点が相手にとって脅威なのは間違いない。早い回、理想としては立ち上がりに先制すれば、相手はさらに脅威に感じるだろう。精神的優位に試合を進めることが出来るだろう。

「若菜ちょっと」

ダントツ(三郎丸監督)は若菜に耳打ちした。

「2回戦での勢いを青葉城はかわそうとするはずだ」

「はい」

それ以上は言わなかった。西東京大会の5回戦くらいまでなら、細かい説明をし、狙い球まで指定していた。しかしチームがかなり成長して入るのはダントツも感じている。このくらいの説明で理解できるようになっているだろう。期待があった。

だから若菜がスローカーブをしっかりひきつけてヒットを打ったのは嬉しかった。


2番スグル(南)は送りバント。

「ここは光高校、確実にランナーを進めてきました」

とでもアナウンサーは言っているだろう。仕掛けるのはまだ早い。

3番大二郎(浪花)は阿波北戦で2本、4番新太郎(荒木)は南波戦で1本のホームランを打っている。核弾頭の若菜とこの2人を警戒してくるのは間違いないだろう。

その証拠に、大二郎はフォアボールで1,2塁となった。


「仕掛けるのはここだな」

ダントツはランエンドヒットのサインを出した。ダントツは気性から似た作戦でも、ヒットエンドランよりはランエンドヒットを好む。ヒットエンドランでは相手バッテリーに読まれ外されたらランナーは憤死だが、ランエンドヒットならばスチールに切り替わるだけである。スチールを仕掛ける積極性が若菜にはある。

また、大二郎を歩かせたばかりである。新太郎への初球を外してくるのは考えにくい。

投球フォームが入った青葉城のピッチャー富澤(こちらで命名)が足をあげた瞬間、若菜と大二郎がスタート。青葉城はサードの伊達が3塁ベースカバー、ショートの狩野が2塁ベースカバーに動く。打者の新太郎は左打者だ。セオリー通りの動きである。

「ここだ新太郎」

打球はショートゴロ、と思いきや、2塁ベースカバーに動いた狩野の逆をついた。ヒットとなり若菜が一気にホームイン。狙い通りに先制点が取れた。

「光高校、三郎丸監督の奇襲がハマり先制です」

「ここは(青葉城の)富澤君、気を取り直して後続を打ち取ってもらいたいですね」

なんてアナウンサーと解説者のやり取りが聞こえるような感じがした。

「キヨシ(中畑)、いけえ」


キヨシもタイムリーを放ちさい先よく2点を先行した光。新太郎は気分よく投げ三者凡退のスタートである。


2回以降は復調した富澤と荒木の投手戦になった。新太郎もランナーは出すが

「任せろ」

若菜やキヨシが好プレーで守り立て、得点を許さない。

「今日のキヨシは動きがいいな」

ダントツも認めるくらいだった。


追加点がほしい光は6回表、キヨシがセンター前ヒットで出塁。ボクトツ(田村)が送って、ドカ(福田)がライト前にタイムリー。効果的な攻めを見せた。これにはダントツも

「みんな上手くなったなあ」

と感心させられた。


さらに9回表、フォアボールで出たライパチ(井上)を1塁において若菜がセンターオーバーの三塁打。4−0とした。


8回まで2塁を踏ませぬ好投をみせていた新太郎だが、青葉城も粘る。富澤、伊達が連打で出塁。フォアボールもありワンアウト満塁となった。

「新太郎ここでしめろ。打たれたら一気に流れが傾く恐れがあるぞ」

狩野は新太郎のストレートをとらえた。しまった、とダントツそして新太郎が思った刹那

「くっ」

頭上を襲った痛烈なライナーをサードのスグルがジャンピングキャッチ。そして3塁ランナーの富澤が戻れずダプルプレー。

「やった」

喜び駆け寄る新太郎だった。

「ふー」

大息をつくダントツに

「荒木君は余裕が出ると打たれるね。注意するのは後からですよ」

北見校長が声をかけた。


さて、以降続くです。