2016年7月24日(土)

フジロック3日目。観たのは以下の通り。

山崎彩音(木道亭)→STEREOPHONICS(グリーン)→LEON BRIDGES(ヘブン)→ERNEST RANGLIN&FRIENDS(ヘブン)→BIM BAM BOOM(アヴァロン)→KAMASI WASHINGTON(ヘブン)→RED HOT CHILI PEPPERS(グリーン。3曲のみ)→BATTLES(ホワイト)→電気グルーヴ(グリーン。15分だけ)→blues the butcher(苗場食堂)。午前2時頃帰宿。約13時間。そして午前6時に帰宅。

最終日は木道亭に直行。山崎彩音さんでスタート。17歳にしてフジ初登場。普段は都内のライブハウスで歌っている彼女にとってフジは大舞台のはずだがしかし、緊張している様子は少しも見られず、実に堂々とした歌いっぷり&ギターの弾きっぷり。その芯のある歌声が林に広がり、緑と溶け合い、ふと見上げると葉が揺れていた。葉も歌を聴いて喜んでいる。そんな気がした。以前「ロック魔女」なんていう紹介のされ方を目にしたが、そんな雰囲気は少しもなく、僕にはとても素直でまっすぐ思いを伝える女性に感じられた。少なくともこの日聴くことができたのは、そういう歌たちだった。似ているコード進行のスロー曲が多く、まだ楽曲の幅はないようだが、自身のスタイルといったものはもう築けている。これからいろんな音楽を吸収して作曲の幅を広げていけば、今あるスケール感がさらに増すことだろう。それにしても17歳にしてフジに立つ、その気持ちはどんなだろう。歌手としてやっていこうとしている若いひとにとって、それはどれだけ素晴らしい経験であることだろう。可能性は無限大。最後に歌われた曲(新曲だと言っていた)が特によかった。

グリーンでステレオフォニックス。最高だった。迷いが1ミリもない。だだっ広いグリーンステージでこそ映える正統的なロック。僕が何度か取材させてもらっていた初期(1stアルバムと2ndアルバム)の曲もバンバンやってくれて昂った。この二日後の単独公演も観たのだが、いまの彼らは過去最高の状態にあるなと、ハッキリそう思った。

ヘブンでリオン・ブリッジズ。今回のフジで僕がもっとも楽しみにしていたひとりだが、想像のはるか上を行った。弾かれるように軽いステップを踏んで彼がステージに登場した瞬間から一気に引きこまれた。歌がソウルフルで素晴らしいのはもちろんのこと、自由で軽やかなダンスに気持ちが高まる。最高の楽しさ。まるで60年代にタイムスリップした感覚だ。といってもレトロとかそういうことではなく、リオン自身がその時代を生きて、そのままそこにいるといった感じ。モダンなのである。バンドもグッドで、わけてもサックスが効いていた。黒いワンピのコーラス女性もクール(ずっとサングラスしていたけど、最後にとったら、あら美人さん!)。曲順には物語性も感じられ、ラストに「リヴァー」を弾き語るというそこにもグッときた。ジャズクラブのような場所のほうが似合うタイプかと思っていたが、その開放的なパフォーマンスをヘブンで体感できて本当によかったと、そう思った。

そのままヘブンでアーネスト・ラングリン。80歳のラングリン爺が弾くギターの瑞々しさにもしびれたが、コートニー・パインの吹奏っぷりのスケール感にぶっとばされた。

アヴァロンでBIM BAM BOOM。初アルバムが出たばかりというグッド・タイミングでフジ初登場。全員がいつにも増して気合い入った演奏っぷり。わけてもサックスの前田サラさんとギターの岡愛子さんが前に出てきてソロをぶちかます、その攻め具合に凄まじい爆発力があって盛り上がりまくった。なんといっても彼女たちには実力と華の両方がある。ここでのライブによって一気にファンが増えたことだろう。いやホント、まったくもって最高だった。

ヘブンでカマシ・ワシントン。いろんな意味で別次元。極太の音とうねりがとてつもなく、神々しくさえあった。前衛性は思いのほか前に出てなくて、ジャズとか聴かないひとでも楽しめるあり方はちょっと意外でもあったけど、そこが素晴らしい。ちゃんと観客に寄り添いながら、でもとんでもなく凄いことをやっている。そんなことやれるひとは多くない。曲順も練られていてドラマ性があるように感じられた。「ああ、これこそフジロック。だからフジは最高なんだよ」と心底思えた時間だった。

それに比べて、グリーンに動いて観たレッチリの音のまあしょぼいこと。まずグリーンに足を踏み入れた瞬間、出音の小ささに驚いた。埋め尽くされた客の中にズンズカ踏み入ってわりと前のほうにも行ってみたけど、音の小ささは変わらず。加えてアンソニーの歌がヘロヘロで、ピッチも狂いまくり。誰かがカラオケで真似して歌ってるみたい。あまりの迫力のなさに唖然となり、3曲程度聴いて僕はホワイトに動くことを決めた。これまで僕が3~4回観たレッチリのライブはどれも音響的に満足できないものばかりで、とりわけ東京ドームで観たあれは酷かったが、今回もそれと変わらないレベル。どうして彼らはあんなにいい演奏をするバンドなのにダメなPAスタッフを使い続けているのだろう。謎だ。プリンスとかミック・ジャガーだったら即座にクビにしているだろうに。また、最後にアンソニーがモニターの調子の悪さにぶちキレてマイクを叩きつけたそうだけど、チェックを怠ってる自分も悪いのに、いい歳して何やってんだかと呆れずにいられない。SNSではその行為に対して「歳とってもロックだね」などと褒めてるひともいたけど、そんなもん全然ロックじゃないよ。新作の音がよかっただけに、ほんとガッカリした。

で、ホワイトに動いてバトルズの音を聴くと……。ほらね。こんなにカラダにビリビリくるような音がそこでは出ている。その音のよさと迫力たるや、レッチリの10倍くらい。なのでたちまち引き込まれた。音がカタマリになって響いてくる、のに、一音一音もとてもクリアでビシっビシッとくる。展開のさせ方も完璧で、ああ、これが正真正銘のライブバンドだよと、ダメだったレッチリのあとだけに尚更強くそう思えた。

グリーンに戻って電気グルーヴ。グリーンでもしっかり上等な音響。映像も凄い。そして瀧も卓球もすごく楽しそう。ずっと踊っていたかったけど、どうしても苗場食堂のblues the butcherを観たかったので、後ろ髪ひかれつつ15分ほどで移動。

blues the butcherは最高だった。佐藤タイジや山岸潤史がゲストで出た一昨年の苗場食堂も最高だったけど、ゲストなしの今回もまた最高に盛り上がった。全員揃って黒のスーツにタイというブルース・ブラザーズのような衣装もかっこよし。ホトケさんの渋い声とギターもコテツさんの高い歌とブルーズハープも、夜の苗場食堂に本当にハマる。できることなら毎年出てほしい。前夜祭を含めてフジロック4日間の、これが最後に観たアクトだったが、自分にとっては理想的な締め。心残りなし!

で、この日のベストアクトは……ステフォもカマシもBIM BAM BOOMもバトルズもblues the butcherもよかったんだけど、うん、やっぱりリオン・ブリッジズ。僕はこういう音楽が心底大好きだーと、そう思えたライブだった故。