井上陽水@六本木EXシアター

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2018年4月18日(水)

 

EXシアター六本木で、井上陽水「コンサート2018 ROCK PICNIC」。

 

ブリッツ、duo、チッタ、ダイバーシティなど、ホールじゃない小さめの会場をまわるツアーの初日。「いつもと違う感じで、今回は若いミュージシャンとやってみたいと思いまして」と陽水さん。その言葉通り、バンドメンバー4人のうちピアノの小島良喜さん以外は若い人たちで、ベースはなななななんと、なかむらしょーこちゃん!! いやもう、わたしゃ、ぶったまげましたよ。陽水さん曰く「ライブハウスをいくつか回って、いいミュージシャンいないかなといろいろ見てるなかで、この人はいいなと」見つけたのが、しょーこちゃんだったとか。つまり、プレイそのもので陽水さんの御眼鏡に適ったっていう。すげえなぁ、しょーこちゃん。素晴らしいね!

 

ツアー初日ゆえ、陽水さん含めて若干の手探り感はあったけど、このバンド(因みにギターは岡村靖幸バンドの田口慎二さんで、ドラムが元キンモクセイ、今はカーネーションのサポートなどの張替智広さん)、ツアーのなかでどんどんグルーブが出てくるだろうことは間違いないって思ったな。ということで、ファイナルも観に行こうかと。セトリはもちろん書きませんが、僕が中学生の頃に初めて買ったLPのなかで特に好きだった曲もやってくれたりして(嬉&涙!)。しかもそのベースをともだちが弾いてるっていう、なんとも不思議な感覚。

 

時間的にはちょい短めのショーだったけど、音楽的な意味でとってもよかった。やっぱいいよねぇ、陽水の歌は、いくつになって聴いても。歳を重ねるほどに発見が多いですわ。

 

2018年4月15日(日)

 

さいたまスーパーアリーナで、ブルーノ・マーズ。

 

90分に凝縮されたエンターテインメント・ショー。ダラダラ長すぎず、かといって短すぎず。90分にまとめるところがけっこう肝なのだろう。とりわけ自分がブチあがったのはアンコールのアレだが、終わり方は余韻も何も残さないスンとしたもので、その潔さも最高だった。ショーとしての完成度、ハンパなし。

 

オレはいま贅沢なショーを観ているのだという喜びが終始あったが、思い返せば大掛かりな演出があるわけじゃなく、着替えも1度だけ(着替え前も後も、衣装と言いづらいほどにどカジュアル)。マイケルのライブみたいに戦車が出てきたり壁が崩れたり本人が飛んだり…みたいなことは一切やらないし、平和がどうのといったメッセージもない。あくまでもパーティー。というところの楽しさ・贅沢さ。演出に凝ろうと思えばいくらだって凝れるトップスターになっても、ちゃんと自分たちの動きと声&演奏だけで勝負すんぜという意気や、よし。

 

ってなわけで、十分満足。十分楽しかった。…けど、前日にエド・シーランの武道館公演観て音楽的にとっても感動してしまった故、比べるものじゃないとわかっていながらどうしても比べてしまったりするところもあって…。武道館の音響は(そりゃ席にもよるだろうが)とても良好で、エドくんの歌声がダイレクトに迫ってくるものだったが、たまアリはやっぱウォンウォンした反響音とかズレとか気になったし、ブルーノの歌そのものに感動する感じは正直なかった。という意味では、先にブルーノ観て、翌日エドだったらもっとよかったかも。で、どっちも一緒に観たヨメと帰りにこんな話も。「夏フェスでまた来てくれるとしたら、エドくんはまたフジのグリーンで観たいね、ブルーノはフジじゃなくてサマソニのマリンのヘッドライナーがいいね、最後アップタウンファンク終わりの花火ドーンとか最高にアガるだろねー」。まあしかし、2日間で現代の世界最高クラスの人気者を続けて観ることができた充実感はやっぱでかいなり。

 

余談1.会場には開演1時間前くらいに着いたんだが、その時点で、(買う予定は特になかったものの)グッズが全て完売してたことには驚いた。完売よ、完売。確かにすれ違うほとんどの人が今回のツアーTを誇らしげに。キャップに至っては前日から2000円値上がりしてたらしいしね(その売り方、どうかと思うけど)。あと、まとめて買ってネットで転売する人も多いんだってね。えぐいっすなぁ。因みにTシャツにはクロスカラーズの色とデザインをそのままどーんと使ってるのがあって、それ見ながら「そういや90年代にNY行ったとき、こんな僕ですらわざわざクロスカラーズの服とか売ってる店探してキャップやらいろいろ買ったっけなぁ、あのキャップ捨てないで今日かぶってきたら自慢できたな」とか思ったりも。

 

余談2.VIP席の人にだけついてる(?)らしい黒のガウンを羽織った人がけっこう多かったけど、あれ、ブルーノのライブ時以外にいつ着るんだろ。因みに客層は、そういうガウンを堂々と着れちゃう感じの人がわりと多めで、そういう意味ではEXILE とかのライブとそう遠くないのかも(EXILE のライブ行ったことないから知らんけど)。マイルドヤンキー的な? そういう衆がどさっとファンについたらそりゃ強いよなぁ。

 

http://realsound.jp/2016/11/post-10314.html
↑こちら、『24K・マジック』が出たばっかのときに書いた記事です。

 

エド・シーラン@日本武道館

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2018年4月14日(土)

 

日本武道館で、エド・シーラン。

 

たったひとりの「いい曲」と「強い歌&ギター」、その原初的な力に最先端の映像表現が合わさっただけで、こんなにも凄い、っていう。フジで観てからもうすぐ6年だけど、その6年分の進化を子供のように自由に動いて楽しそうに歌う身軽な彼からビンビン感じとれた。シンガー・ソングライターなら誰だってあんなふうにいい曲を作ってあんなふうに力強くも軽やかに歌いたいと羨ましく思うだろう。誰でもできそうなことでありながら彼だけがあんなにも鮮やかにできるのはなぜなのか。天才だから、だろうけど、もちろんそれだけじゃないわけで、それについてちょっと考えたりも。いやぁ、本当に素晴らしかったな。これぞ世界のトップスターのライブ。感動しました。

 

http://realsound.jp/2017/03/post-11715.html
↑『÷』が出た当時に書いた記事はこちら。「来年のグラミーはよほどのことがない限りエド・シーラン祭りになるだろう」と文を締めてるけど、そのよほどのことが起きたんだよなぁ…。

 

2018年4月10日(火)

 

ビルボードライブ東京で、サウンズ・オブ・ブラックネス(2ndショー)。

 

歌と音の層の厚みがとてつもないよなぁ、と、改めて。彼らのパフォーマンスも熱いが、(特に前のほうの)観客たちのノリも熱かった。終盤で客席からステージにあげられた女性がいらっしゃったが、ちゃんと豊かな声でしっかり歌えてて、普段からゴスペルとか歌ってる方々が多数観に来てるんだなと納得。で、大いに盛り上がってまさかのダブルアンコールも。「もう時間が…」とか言いながらも、それもけっこう長めにやってくれました。12日にも公演あり。

 

 

2018年4月7日(土)

 

寒さにブルブル震えながらチャランポの野音をあとにして、急いで三茶のグレープフルーツムーンへ移動。

Gliderのレコ発企画「DARK Ⅱ LIVE」。

 

残念ながらゲストアクトのGood Bye Aprilには間に合わなかったのだが、この夜の主役であるGliderのライブが最高の上を行く最高さだった。なんかもう、よすぎて笑えてくるほど。今までの彼らのライブとは完全に別次元。ぶっとびました。

 

それ、『Dark Ⅱ Rhythm』という大傑作の素晴らしい楽曲群が呼びこんだものと言えるし、パーカッション、ヴァイオリン、シンセ&コーラスを加えたこの夜だけの特別編成が功を奏したとも言えるが、それより何よりヴォーカル&キーボードのユウスケの覚醒が絶対的にでかい。過去の生真面目なMCから脱却し、今はさながらイカれたロックンローラー。アンパンマンの棒(?)を大事に握ってシャウトしたり、かと思えばその場に倒れこんだりと、ほんとイカれてて最高だ。僕は昔からGliderの未来は何かの拍子に彼が一皮剥けることにかかっているだろうと思っていたのだが(ブログにもそう書いたことがあったが)、一皮どころか二皮も三皮も剥けてロックヴォーカリストとして生まれ変わったかのような印象。こうなる日を待っていたし、こうなりゃもう無敵である。

 

それとメンバーそれぞれの、目に見えてわかる演奏スキルの向上ね。マーちゃんのギターは切れ味がますます鋭くなって歌唱にも自信が強く感じられるようになったし、エンジニアのテリーは今じゃすっかりこのバンドに欠かせないベーシストとしてどんどん腕を上げている。そしてショウヘイくんのドラムはというと、パワフルとかそういうことよりもセンスがめちゃめちゃよくて、ドラムが歌ってる…みたいな感じで。彼のドラムは本当に素晴らしい!

 

曲は『Dark Ⅱ Rhythm』の1曲目から順番にやるという、これまた大胆不敵な構成だったが、アンコールでは早くも次作用の新曲も披露されたし(これもめちゃめちゃよかった!)、エイプリルの倉品くんがヴォーカルをとる形で旧曲「GLIDER」も演奏された。『Dark Ⅱ Rhythm』のいい意味でクセとヒネリのある楽曲群のあとに聴くと、そのストレートかつ堂々たる名バラード感もより際立つというもので…。

 

いろいろあったけど、本当に今のGliderは最高にいい状態にあるな。アコースティックもいいが、やはりバンド編成でこれからもがしがしライブをやって、そのカッコよさを多くの人に知らしめてほしいものです。

 

↓MVの作りもどうかしてて最高。
https://www.youtube.com/watch?v=UJM7cF6CXqM

 

2018年4月7日(土)

 

日比谷野外大音楽堂で、チャラン・ポ・ランタン presents “ブタ音楽祭2018” ランタンサーカス。

 

「見せて楽しませる」ことを第一義とした約2時間半。小春の大道芸時代の仲間でもあるパントマイムパフォーマンスユニット、to R mansionの圧倒的な身体表現によってイメージの広がりを大きく持つことになった曲が多数。細部まで練られた彼らの動きとチャランポ姉妹の音と歌との合わさりは、さながら高質なミュージカルの一場面のよう。昨年、上野恩賜公園野外ステージでの「ブタ音楽祭2017」で初めて彼らのパフォーマンスを観てけっこうな衝撃を受けたのだが、今回はそのときに披露された数曲に最新作のチャランポ楽曲も加えられ、いろいろと更新されていた。カラフルで、華やかで、毒もあるto R mansionのパフォーマンスは、チャランポの世界観と実に相性がよく、いつか「to R mansionとチャラン・ポ・ランタン」でコンセプトを持ったショートムービー、または(短くてもいいので)より明確なストーリーを有したライブを観てみたいと思ったりも。

 

そんなわけで目で楽しむことは大いにできたわけだが、耳からの楽しみはもうひとつ。残念なことに音の立体感を得ることができなかった。それ、ミュージシャンたちのせいではなく、強風に吹かれて音が流れてしまい、安定しなかったことが大きい。また自分がチケットを買ったのが遅くて後方のかなり右端の席だったこともあるのだろう、なにしろ音が迫力に欠け、バランスもよくなかったのだ。

 

チャランポ姉妹のステージにドラムのふーちんが加わる形はよくあっても、チューバのギデオンさんが加わった形でたっぷりやるのはレアなこと。チューバのブフォッと鳴る音の迫力だったり、アコーディオンとチューバが合わさってこそ得られる独特の郷愁成分のようなものを、だからもっと得られるとよかったのだが。風のせいなのか、PAの問題なのか、そのへんがいまひとつ伝わってこず、野音という会場の難しさを感じたりも。ロックバンドにはいい会場であっても、チャランポのような音楽性のユニットには、必ずしも相応しい会場とは言えないのかもしれない。まあ、昨日は特に強風と寒さという悪条件だったこともあるけれど…。

 

で、チャランポ+ふーちんギド。この編成は音響の良好な会場で改めていつかじっくり見て(聴いて)みたい。それは絶対に素晴らしいはずだから。

 

いやぁ、それにしても寒かった。途中、寒さに耐え切れずトイレに行くと、「あ~寒っ、あ~寒っ」とつぶやきながらそこでブルブル震えてた人がたくさんいたのも印象に残ったライブだった。

 

Iceage@渋谷duo

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2018年4月5日(木)

 

前日にインタビューしたデンマークのバンド、Iceageを渋谷のduoで観た。

 

ヤバかった。サックスとヴァイオリンが加わって音の厚みが増しながらも衝動と熱量がハンパなく、カリスマ的なヴォーカル、エリアスはその場に倒れこんだり、マイクを床に叩きつけたり、途中でフロアに飛び込んだり。バウハウスとニック・ケイブとド初期のエレカシが混ざったような……って譬えが合ってるかどうかわからんが、とにかく見た目も音も動きもめちゃめちゃイカしててスゲエかっこよかった。フリーキーなサックスの感じなんかコントーションズかキング・クルールか、ってな。5月に発売される新作の曲も多めにやったけど、とりわけ2曲目に早くもやった「Pain Killer」が最高で気持ちがバーンとあがった。僕がティーンエイジャーだったらこんなバンドの存在にどれだけ救われたことか、って思ったな。

 

↓Pain Killer (feat. Sky Ferreira)
https://www.youtube.com/watch?v=qP8GJj8lAI8

 

2018年4月5日(木)

 

下北沢ガーデンで、加川良さんのトリビュートライブ「ラブ・ソング」。

 

18時に始まって、終演は22時近く。出演者それぞれの思いのこもった歌と演奏が聴けてよかった…のだけど、フォークを4時間立ちっぱでジッと聴くというのはさすがに疲れた。ロックやダンスものならカラダ動かしてればいいのでそこまで疲れないんだけど。こういうフォークのライブはやはり席ありの場所でやってほしいものです。

 

多彩な顔触れが揃ったなか、圧倒的だったのはやっぱり木村充揮さん。短い時間でも完全にそこを自分の世界に染め上げる歌ヂカラと空気や間の作り方がさすが。それから金佑龍くん、寺尾沙穂さん、gnkosaiBANDもよかった。あと、アコギ弾き語りが多いなか唯一いつも通りのタテノリロックで「教訓Ⅰ」と「ノットサティスファイド」をかましてくれた仲野茂のバンド、スカッとした。しかし有山さんはなんだかグダグダだったなぁ。

 

一番グッときたのは加川良さんが最後にやったライブの音源をおしまいに流したところ。その言葉と歌、でした。

 

2018年4月4日(水)

 

コットンクラブで、ジョーン・オズボーン。

今回の公演は1stと2ndで異なる内容ゆえ、両方通しで観てきた。

 

1stは全曲、ボブ・ディラン楽曲のカヴァー。それ、最新作『The Songs of Bob Dylan』の内容に沿ってのものだが、そのアルバムには入ってないディランの曲も「ライブだけのボーナスよ」と言いながらいくつか歌唱。「追憶のハイウェイ'61」など、グルーブがあって実にかっこよし。ディランが歌うディランの曲はそもそもクセが強いわけだが、ジョーンが自分の解釈で歌うとメロディのよさがスッと伝わってきて、改めて楽曲のよさに気づくことになったりも。アコギも2本セットされていたが、サポートするキース・コットンもジョーンも(僕の記憶が確かなら)それをまったく弾かず、楽器はキースの鍵盤のみだった。

 

2ndは「セレクション・オブ・オリジナル・ワークス」と題されていたが、オリジナル曲はほんのわずかで、ブルーズとロックバンド曲のカヴァーにて米国音楽史を辿る…的な内容。この日が誕生日のマディ・ウォーターズの曲、ティナ・ターナーの曲、前回もやってたスリム・ハーポの曲、ザ・バンドの曲(驚くようなアレンジでかっこよかった)、グレイトフルデッドの曲、フェイバリット・ソングライターだと言うジョン・プラインの曲などなどなど。それから自身のオリジナル新曲も。キースがアコギを弾いて、ジョーンもまたアコギを弾く曲がわりかし多め。リズムボックス音を同期させた曲(ジョーンがテーブルの上に置いたスマホくらいの大きさのものを自分で操作して音を出してた)もあるなど、使用楽器含めて演奏に幅と広がりがあった。またグルーヴィーなノリの曲も多く、ジョーンも動きながら歌ったりするなど、総じて1stよりも立体的。アンコールの「ワン・オブ・アス」はピアノでじっくり語りかけるように歌い、前回聴いたとき以上に心に沁みた。というわけで、1stも味わいあってよかったが、個人的には2ndのほうにより深い感動を覚えたのだった。

 

ともあれ、両ステージ観て改めてジョーン・オズボーンという豊かな表現力をもったシンガーに惚れ直した感。声の調子が絶好調とは言えない状態のようにも見受けられたが、それが気にならないほど心のこもった歌を聴かせてくれた。ステキな女性だなー、本当に。

 

こちら、アエラスタイルマガジンに書いた公演紹介文です。https://asm.asahi.com/article/11372498 …

 

2018年4月2日(月)

 

下北沢ガーデンで、三宅伸治と仲井戸“CHABO“麗市。

 

清志郎の誕生日ということで、日本のあちこちで清志郎楽曲が歌われるイベントが開催された昨日4月2日。僕は下北沢ガーデンで、三宅伸治と仲井戸麗市(三宅伸治presents「第九回感謝の日」Songs for Kiyoshiro)を観た。

 

清志郎亡きあと、誕生月の4月と没月の5月には各地で清志郎関連イベントがいろいろ開催されていて、近年は単に清志郎をダシにしたお祭り騒ぎじゃないかと思ってしまうようなものもなかにはあったりするし、5月に毎年やってるアレにしたってチャボもけっこう複雑な気持ちで出演してるんだろうなとその胸中を察してしまいもするわけだが、しかし昨夜のガーデンのそれはそういうものとは種類の異なるものだった。チャボが清志郎に関してのイベントであんなに生き生きと嬉しそうにギターを弾いて歌っているのを僕が観たのは初めてだった。なぜならそれは清志郎を支えた三宅伸治が構成・選曲まで考えたイベントであり、数曲で出演したのは「買い物帰りにちょっと寄った」(これは冗談じゃなくて本当にそのようだった)という金子マリと、梅津・片山・渡辺・キタローらニュー・ブルーデイ・ホーンズの面々だったから。そこには有名なだけの「他者」ゲストはおらず、普通に清志郎がいる状態が想像できるメンツだけが揃った純性ライブで、これなら清志郎もフラっと歌いにおりてこれるなと、そう思えるものだったからだ。

 

MG'sの曲なんかがひとしきりかかってオーティス「ドック・オブ・ザ・ベイ」で客電がおちると三宅伸治とチャボのふたりが嬉しそうに(チャボはどこか照れくさそうに)登場して、両者ともアコギを抱え、互いを見る。僕はここでちょっとグラッド・オール・オヴァーを思い出した。そして1曲目に静かに演奏されたのは…「ヒッピーに捧ぐ」!。本来ヴォーカルが入るはずのところもしばらくはふたりのギターのインストゥルメンタルが続いたが、「空を引き裂いて 君がやってきて」というところで突然ふたりの歌が入り、そして「明日また楽屋で会おう」へと歌が続いていった。誰もが想像したことと思う。ここで清志郎が空を引き裂いてやってきたその状態を。つまりそれは迎える歌として機能していたわけだ。あまりにも早いがここでもう僕の涙腺が危うくなった。この日聴けてよかった曲、心のこもっていた曲はいくつもあったが、このオープナーの「ヒッピーに捧ぐ」は最も印象に残った1曲だった。

 

そこから「2時間35分」「ぼくとあの娘」「忙しすぎたから」など初期のRCサクセション楽曲が続き、そのあとブルージーなアレンジの「ラブ・ミー・テンダー」は別にして、「Johnny Blue」「Sweet Soul Music」、金子マリの歌う「エンジェル」、3人での「いい事ばかりはありゃしない」と電化RCになってからの初期名曲がそこに続いたのが1部だった。因みに「Sweet Soul Music」からサム&テイブの「ホールド・オン」に繋げるところで伸ちゃんはアイムカミンのあとヒーズカミンとも歌っていて、つまり「待ってろよ、清志郎が来るから」ということだなと僕は解釈。また「Johnny Blue」は古井戸のオリジナル「飲んだくれジョニー」からの続きで演奏されたのだが、ブルージーなそっちを二人で弾いてるそのときの感じがよりキマっていた。

 

休憩挿んで2部は「たとえばこんなラブソング」「ハイウェイのお月様」に始まり、「毎日がブランニューデイ」「激しい雨」と最後の清志郎・チャボ共作によるソロ楽曲のエレキ演奏があり、リズムボックスを加えた「ドカドカうるさいR&Rバンド」でドカーンと盛り上がって、「君が僕を知ってる」で締めた。「君僕」を筆頭に、ふたりのギター演奏のあり方は丁寧できめ細やかで本当に心がこもっていた。そしてチャボがマンドリンを弾いた「雑踏」のその音色は美しくてどこか懐かしかった。

 

アンコールという名の実質第3部はまずニュー・ブルーデイ・ホーンズが登場しての「スローバラード」「JUMP」「雨あがりの夜空に」。「スロバラ」はチャボも伸ちゃんも歌わず、じゃあ誰が歌ったかというと、お客さん全員で、これが感動的だった。ライブで名曲とされるバラードをお客さんが合唱するのって僕はちょっとクサい気がして引いちゃいがちなほうなんだけど、スロバラという曲は清志郎以外のどんなヴォーカリストが歌ってもどうしたって違和感が残るもので、だからそれを観客に歌わせるというのは「これはいいアイデアだ~」。しかもそこでは梅津・片山・渡辺がスロバラのあのホーンを再現しているわけで、こっちも歌ってて気持ちが入らないはずがない。「JUMP」のホーンズの音の昂揚感も「これ! これですよ」と思わされるもので最高だった。

 

賑やかなひとときが終わり、そのあとふたりでしっとり「約束」。さらにチャボひとりで「夜の散歩をしないかね」。ここでライブは終了。だいぶウルウルしだしていた自分の涙腺はそのあとすぐにRCの「Oh! Baby」がかかったところで決壊した。そしてスクリーンには完全復活祭でラス曲「Like a Dream」を歌う清志郎が。

 

初期のRCサクセションに始まり、電化RCの名曲を続けて、チャボとの共作による清志郎ソロ曲を挿みつつ、RCと清志郎の代表曲で一体感を出し、最後はしっとり。三宅伸治が選んで組み立てたというそのセットリストは実に気が利いているというか、清志郎の一番そばにいたミュージシャンとしての思いとボスを慕う者としての思いが合わさった上での構成であり、しかもファンたちの気持ちにもしっかり寄りそったものだった。三宅伸治だったからこそ組み立てられた「物語」だっただろう。

 

そのような構成もさることながら、やはり素晴らしかったのはふたりの演奏そのものだ。チャボも伸ちゃんも個性はあっても我は出さないギタリスト。オレ流で相手かまわず弾き倒すタイプではない(そういうギタリストも僕は好きですけど)。常に相手のプレイを見て息を合わせ、引くところは引きながらここぞというところではガッといく。そういうふたりの美学が溶け合っていた。とりわけアコギ使用のパートでは、ふたりのギターの音色がはっきりわかり、それぞれがどういうギターを弾くミュージシャンなのかが改めてわかったような気がした。ふたりとも、なんていい音のギターを弾く人なんだろう。と、改めて思えたのも昨夜のライブの素晴らしかったところだ。

 

それから、プレイだけでなくふたりのちょっとした言葉にも互いに対する思いと清志郎への思いが滲み出ていたのがステキだった。伸ちゃんが思わずといった感じで「やっぱりチャボさんとギター弾くのは楽しい」とつぶやいたり、「ここに(清志郎が)いる気がしますが」とつぶやいたり、「この方がいなかったら僕はギターを弾いてなかった」とチャボを紹介したり。チャボはチャボで、ハッピーバースデイをみんなで歌ったあと「そのへんから清志郎、入ってきそうだよね」と言ったり、「67歳の清志郎、見たかったね」と言ったり、何より伸ちゃんを紹介する際に「RCが終わってから、ずっと清志郎を支えてたんだ」と言ったり(こういうあたたかすぎる言葉を言うんだよ、チャボは。言われたほうはどんなに嬉しいか)。そして僕らRC好き・清志郎好きは、そういう言葉にいちいちグッときちゃうわけで……。

 

三宅伸治のボスへの「感謝の日」は、この夜はチャボへの感謝の日にもなり、またチャボから伸ちゃんへの感謝の日にもなって、何より僕たちからあなたたちへの感謝の日となったのでした。