12月16日(火)

渋谷O-EASTでBONNIE PINK。

Zeppダイバーシティからスタートした“Almost 20”ツアーのファイナルは、タイトルを“Still 19”と変えたもの。椅子ありではなく、この日はオールスタンディングだ。

僕はツアー初日も観たが、ファイナルは様式だけじゃなく内容(セットリスト)もまるきり変えたスペシャル・ライブ。多少セットリストを変えてくることは事前にインフォメーションされていたので知っていたが、ここまでガラッと変えてくるとは思ってなかったので、それは嬉しい驚きだった。

1曲目からして「Love is Bubble」。これで幕を開けるってことは今夜はみんなでワッと楽しく盛り上がりましょうというモード(ボニさん曰く「忘年会」)なんだなということがすぐに理解できたが、実際前半は「PLAY & PAUSE」「Busy-Busy-Bee」「Take Me In」「スキKiller」までダンサブル方向の曲ばかりが続いて、なるほどこれはスタンディングライブだからこその選曲だな、と。

また、中盤ではクリスマスソングのカヴァーなんかも挿んでこの季節ならではの華やいだ感覚も表出させ(奥野さんがサンタ帽をかぶったりも)、トータル的に見てもいつにも増して楽しさモードが強く印象付けられたライブだった。

が、もちろん楽しいだけじゃなく、味わい深いバラードをじっくり聴かせたりも。クリスマス・シーズン故に聴くことができた「CHAIN」、傑作『ONE』からは珍しく「ONE LAST TIME」なども聴け、それらは心に沁み入った。(そういえばボニさんが、“アンケートで『ONE』の曲をやってほしいという声があって…”と話し始めた時、客席から「名盤!」という声が飛んでたっけ。やっぱりファンの間でもそれは共通認識なのだな。うん、間違いなく名盤!)

いや、それにしても、ファン歴の長い者たちにとって、なんと聴けて嬉しい曲ばかりだったことか。そして、なんと名場面の多かったことか。

プリンスとウェンディ&リサの揃ったステップを思い出したりもした「スキKILLER」(これはAlmost 20でもやってたが、ファイナルはいろんな意味で明らかに完成度が高まってた)とか。「Maze of Love」のアウトロのバンドアンサンブル(とりわけ八橋さんのスライドのかっこよさ!)とか。「Fish」での一体感とか。クリスマス曲カヴァーからの美しい「CHAIN」(この曲ではボニさんがキーボードも)とか。「Call My Name」から「Heaven's Kitchen」への見事な繋ぎ方とか。名曲「流れ星」をみんなが聴き入る様子とか。クリスマス曲から繋いだ「1・2・3」の跳ねたくなる開放感とか。とかとかとか。セットリストが黄金なだけじゃなく、1曲1曲の表現の仕方が実に素晴らしかったライブであった。

それにボニさんの声の出方と、自身がとても楽しんでいるあの感じ。バンドのアンサンブルと、そこから生まれるグルーブ(現在のバンドはBONNIE史の中で最も理想的な形なんじゃないかと僕は思う)。そして何より満員の観客たちのBONNIE愛!  やはりいいライブというのはアーティストと観客の両者によって作られるものだなと改めて実感しましたね。

で、今回も思ったことだけど、BONNIE PINKにはいいファンが多くついている。頻繁にやるわけじゃない、ずいぶん前のアルバムに収められてた隠れた名曲のイントロが鳴らされた段階でもう「おおおっ」と声があがったりする。所謂ヒット曲だけじゃなくて、アルバム収録の“いい曲”に歓声を送って大きく拍手する。ヒット曲と真の名曲との価値の違いをBONNIEのファンの多くはわかっているのだ。これはアーティストにとっては嬉しいことだろうし、こうした信頼関係が築けているからこそ来年20周年を迎えられるわけだよな、とも思う。

これでBONNIEはデビュー20周年を本当にいい感じで迎えられることだろう。そう確信できるほどに、彼女の全キャリアを通じて考えてみても、これは屈指のライブだった。


あ、そういやボニさん、『THE MANZAI』の
博多華丸・大吉の優勝に触れ、長く続けることによって見えてくるゾーンのようなものがある…といった話から、自分も自分らしいペースでこれからも長く続けていきたいといったことを言ってもいた。僕はといえばフリーのライターになって来年で22年(本当にあっちゅうま)。うん。僕も頑張ろっ。