Superflyの勢いがとまらない!


10枚目のシングル『Wildflower & Cover Songs; Complete Best 'TRACK 3'』がオリコンのウィークリー1位に輝き、2ndアルバムや1stアルバムまでもがまた売れだしているんだそうな。


デビュー前からたくさんの記事を書かせてもらってきた僕としても、今のこの状況はなんとも感慨深いものがあります、本当に。
(このブログにもデビュー当時からけっこうSuperflyの記事は書いてきたし。まとめて読み返すといろいろ思い出すことは多いな)


というわけで、お祝いの意味も込めまして。
プレス・リリース用に書いた文章をせっかくだからみなさんにも読んでいただきたく、またここでアップしておきますね。


まずは『Wildflower & Cover Songs; Complete Best 'TRACK 3'』の文の前に、昨年11月にリリースされた9thシングル「Dancing On The Fire」についての文を。


この曲「Dancing On The Fire」は、今年の夏フェスの多くでもラストで歌われ、盛り上がった状態にさらに火を注いでいたダンス・ロック・ナンバー。
パラパラを改良したかのような志帆ちゃんのあのダンスがまた相当“アゲ↑”作用を呼び起こすものでもありましたな。


では、昨年の気分でお読みください。


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ダンスはまだ終わらない!
Superfly・2ndシーズンの“とどめの一発”、
「Dancing On The Fire」。



『Box Emotions』は攻めのアルバムだった。
ロックであることに拘ったアルバムだった。
強い意志の反映されたアルバムだった。
冒険のアルバムであり、挑戦のアルバムであり、暴れているアルバムであり、そして勢いを味方につけたアルバムだった。


勝てる自信と確信はあっただろう。
が、少なからず賭けでもあった。
結果については改めて書くまでもない。
発売後数週間で1stアルバムを上回るビッグ・セールスを記録し、今も数字を伸ばし続けている。


「賭け」だったのは、サウンド・アプローチの変更が吉と出るか凶と出るかという、その点だ。
とりわけ8thシングルとしてアルバムに先駆けリリースされた「恋する瞳は美しい」。
60’s&70’sから一気に80’sへとジャンプしたようなディスコ・ロック的なアプローチは、1 stアルバムのオーガニックなサウンドに惚れ込んでいた人たちを置き去りにしかねない大胆なもので、今だからあえて書いてしまうが、志帆自身「アルバム全曲のなかで、受け入れられるかどうか一番心配なのがこの曲」だと話していたものだった。


が、このシングルを出す前に初めてデジタルなビートを取り込んだ「Alright!!」を配信限定という形で出して普及させていたこともあり、「恋する瞳は美しい」は何の問題もなく広く受け入れられた。
それどころか新しいファンを多数獲得した。
風は吹き、その風に乗り、そしてSuperflyは『Box Emotions』で高く飛翔したのだった。


「Alright!!」→「恋する瞳は美しい」→『Box Emotions』。
この三段跳びは、今振り返ってみても鮮やかであり、見ていて痛快だった。
勢いというのはこういうものかと思わされた。
Superflyの2ndシーズンは誰もが納得する形で最高の着地を見せたと、そう思えたのだった。


が、しかし、2ndシーズンはまだ終わっていなかった。
ジャンプはまだ続いていたのだ。
いや、こう書くべきだろう。
ダンスは続いていたのだ!


           
「Dancing On The Fire」。
現在行なわれている“Box Emotions Tour”でも既に披露されているこの曲がSuperflyの9thシングルであり、「Alright!!」から始まった激しい攻めの展開の、言わば“とどめの一発”というわけである。


志帆の話を聞こう。
「攻めきった感じですね。2 ndアルバムのカラーの集大成というか、今のこの時期だからこそできることを限界までやったっていう」
「“恋する~”がなかったら、この子も生まれてなかったなって思います。“恋する~”はけっこう賛否両論あるだろうと覚悟してたんですけど、意外に“否”はなくて、みんなこういうのも受け入れてくれるんだってわかったので。じゃあってことで調子にのって(笑)、もう1コ行ってみよっかな~っていう」


そんなわけでこの「Dancing On The Fire」、Superfly史上もっともハイエナジーに“行ききった”楽曲になっている。
往年のディスコ・ミュージックの横揺れビート感にロック的なエッジが合わさりながら展開し、後半ではサイケな場面転換で幻惑させたかと思えば、エレクトロ的な高揚までも加えて追い打ちをかける。
アガらずにはいられない。
腰が動かずにはいられない。
大音量で浴びれば頭がぐらぐらし、やがて思考停止に。
躊躇する必要なんか何もない。
本能に任せ、まさに火の上でだって踊れる、そんな気分になってくる。

          
実はこの曲、始めに作曲者・多保孝一からあがってきたデモの段階では「(UKのバンドの)ザ・ミュージックみたいに、もっとゴリっとした感じだった」そうだ。
つまりはグルーヴ感に特化しつつも重みのある硬質なロックといった感じだろうか。
なるほど、言われてみればそのようなノリが芯の部分に残っている。
ゆえに浮ついてない。
重心がぶれてない。
イントロのヘヴィ・リフからも明らかなように、ダンスの構造のなかにロックのタフネスが宿っている(あるいはロック的な煽情にダンスの躍動が重なっていると言ってもいいが)。


志帆はそれを聴いた瞬間、「“キタ~っ!!”って思った」と言う。
「これは絶対、私が歌ってこそ活きる曲やって思ったんです。メロディがドラマチックだし、キャッチーだし、サビは私の声のレンジにもピッタリ合ってて、“よっしゃ、私に任せといて!”っていう。“私以外に歌わせるな!”ぐらいの勢いでしたね(笑)」


そして蔦谷好位置がディスコ的な華やぎや妖しさを際立たせたアレンジを施し、その段階で「ハッキリと景色が見えた。同時にここに出てくる女性像も見えたんです」。
とりわけ曲後半のサイケっぽい展開に切り換わる場面で「火のような赤い色が見えたり、強いパッションが感じられたりして、描こうとしている女性のキャラクターの輪郭がそこから見えた」そうだ。


“ジャンクな恋じゃリタイア”。
まずはこのズバっとしたフレーズが浮かび、それを突破口として、あとは感覚的に言葉が湧いて出てきた。
言いたいこと、メッセージにもなりうることをその1行に込め、あとは言葉遊び的な感覚で展開させていった。
珍しく適度にセンシュアルなワードが入っているのも、曲が自然にそれを呼び込んだと考えていいだろう。


やや粘っこい歌い方で始まり、サビでパッションを開放する、その歌唱コントロールもやはり見事なもの。
リズム感に磨きがかかり、今やこのようなダンス・グルーヴも軽く乗りこなしていく余裕が窺える。
ビートが変わろうが、グルーヴの質が変わろうが、私が歌えばSuperflyのものになる。
そういう自信が、火の強さをよりいっそうのものにする。


ダンスはまだ終わらない。



(内本順一)



Dancing On The Fire(初回限定盤)/Superfly

http://www.superfly-web.com/