十六歳のアメリカ ニュー・ファミリー 二五、寒い冬 79 | 六月の虫のブログ

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二五、寒い冬 (A Cold Winter) 

 一九七六年のイリノイ州の冬は積雪量も記録的だったが、寒さも記録的だった。非常に暖かかった感謝祭を過ぎると、気温は急降下した。感謝祭から三日も経たないうちに、川が凍るくらいの寒波が訪れた。スチュワート家から歩いて二、三分の所にカンカキー川の支流がある。リックとチャックとボクは、スケートシューズを持って川へ向かった。ボクは、アンのスケートシューズを借りた。幅が三十メートルくらいの川で、表面は完全に凍っていた。リックは川岸に転がっていた大きな木の枝を持つと、川の表面を思い切り叩いた。びくともしない。リックは大きな枝で表面を叩きながら川の真ん中まで行き、そこでもう一度思い切り枝を叩き付けた。 ”Super!” リックはそう言いながら、川岸にいる我々の方へ戻ってきた。最低気温が氷点下二十度の日が五日間も続いていたので、リックは大丈夫だと確信していたらしい。「川の真ん中でも、氷の厚さは一フィート(約三十センチ)以上ある」とのことだ。三人は、早速スケートシューズに履き替え、スケートを楽しんだ。

 川から家に戻る途中、リックはチャックとボクに「明日はホッケーしよう」と言った。家に帰って地下室を見てきたチャックは、二本のホッケー・スティックを持って上がって来た。スティックが二本しかないので、チャックは、ボクにスティックを買うよう勧めた。ボクもホッケーをしたいと思ったので、買うことにした。パックもないし、スティックに巻くテープもないので、早速リックとチャックと一緒にスポーツ店に向かった。ボクは、ついでにスケートシューズも買おうと思ったが、値段を見てスティックだけを買うことにした。スポーツ店から家に戻ると、リックはボクのスティックの先をこんろの火にあぶって、説明を交えながら曲り具合を調整してくれた。リックのいいところは、何ごとも理由を説明してくれるところだ。ボクのスティックの調整が済んだら、三人とも、自分のスティックの手入れを始めた。ボクもスティックのパックを打つ部分に、布製のテープを巻いた。

 翌日、三人で川に向かった。リックはスケーティングもうまく、チャックやボクを圧倒した。チャックも滑れるが、レベルはボクより少しうまい程度だ。ボクはローラースケートの経験はあったが、アイススケートは前回が初めてだった。最初は足首に負担が掛かったが、慣れるのに時間は掛からなかった。スティックを持っていると逆にバランスも取りやすい。みんなが氷に馴染んだ頃、リックがワン・オン・ワンの試合をしようと言い出した。まず、リックが大きな枝二本でゴールを作り、ルールを説明した。試合はパックを操縦してゴールへ運ぶのを競うとして、思い切りシュートを打つのは禁止した。防具をつけていないので、パックが宙を舞うようなシュートは危険だからだ。試合は三点先取で、総当たり。リックはボクには圧勝。チャックはリックに食い下がったが、結局三対一で負けた。チャックとボクの宿命の対決は、いい勝負だったが、三対二でチャックが勝った。この日以来、ワドリー家へ引っ越すまで、暇があれば川でチャックと勝負した。



凍るカンカキー川。丹後も雪は降るけど、川が凍るなんてあり得ない。