十六歳のアメリカ ニュー・ファミリー 二四、馬小屋で 75 | 六月の虫のブログ

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 ハーシャーに引っ越してデイヴ達の家から遠くなったが、デイヴはほとんど毎週末ボクを迎えにワドリー家を訪れた。今から考えるとデイヴには毎週多大な迷惑を掛けたと思うが、当時は週末のパーティーしかボクには楽しみがなかったので、彼に出迎えを頼むしかなかった。ボブもボクがデイヴに毎週ハーシャーまでの出迎えを頼むのを呆れていた。デイヴは、嫌な顔一つせず、ボクを迎えにきてくれた。週末のパーティーは、いつもと変わらないメンバーで、いつもと同じようにジノズで腹ごしらえした後、ボブの車の中でドンチャン騒ぎをする。

 金曜日、学校が終わるとボクはデイヴの家に行くことになっていた。デイヴは家に着くとコーラをコップに入れ、ピアノの前に座り、練習を始めた。ボクは、いつものようにダイアンと雑談をしながらデイヴのピアノの練習が終わるのを待った。この日はバスケットボールの試合を観に行くことになっていた。夕食を御馳走になった後、マクナマラ高校へ向かった。スコットも印刷工場の手伝いが終わったら来ることになっていて、ハーシャーへは彼と一緒に帰ることになっていた。体育館にはボブとリックが来ていた。彼らの横に見知らぬ男が座っていて、その男がデイヴに話しかけてきた。デイヴは、ボクをその男に紹介してくれた。彼の名前は、ボブ・ウイリアムズといって、我々より二つ年上だった。彼は面白い奴で、大のパーティー好きらしい。彼は短いつばが付いている皮製の平らなハンチング帽をかぶっていた。ボクにはその帽子が非常に格好良く見えた。

 大学時代、ボブ・ウイリアムズとデイヴ、リックとボクの四人で夜明け前にデニーズに行ったときの話だ。ウエイトレスが来ると、ウイリアムズがまず注文をした。彼は朝食メニューに加えて、フライドチキン、ポークチョップとミートソース・スパゲティを注文した。ウエイトレスはウイリアムズの注文を繰り返し、彼に注文を確かめるとテーブルから離れようとした。すると、ウイリアムズはウエイトレスを引き留め、「他の三人にも注文を聞いてくれよ。今のは俺の食べる分だ」と告げた。ウエイトレスは驚いた顔をしながら、ペンと伝票を持ってボクら残り三人の注文を取った。

 ここで、ファミレスでの思い出をもう一つ。大学時代、友人のトムは、ファミレスに入るとのどが渇いていたのかテーブルに置いてあるコーヒー用のフレッシュを一気に飲み干した。彼はまた、外にもう一度出ると、店の前にあった新聞の自動販売機から中にあった新聞全部を取り出して、店のお客さんに配り始めた。アメリカの新聞の自販機は扉式になっていて、お金を入れると新聞の入っているボックスが開くようになっている。普通は一部だけ取るのだが、取ろうと思えばボックスの新聞を全部取ることもできるのだ。

 次の日、ボクはあの帽子のことをワドリー夫妻に話した。その日、ワドリー夫人はカンカキーに行く用事があったので、ついて行って早速その帽子を買うことにした。彼女は、裁縫の材料を買うと、ボクをデパートに連れていってくれた。しかし、そこにはボクの気に入った帽子がなかったので、他の店に行ってみた。ようやく三軒目の店で気に入った帽子を見付けた。それは薄茶色のスエードのハンチング帽で、短いつばが付いているものだった。ボクがその帽子に決めると、ワドリー夫人が「これは私たちからのクリスマス・プレゼント」と言って帽子を買ってくれた。ボクはこの日から毎日この帽子をかぶって学校へ行くようになり、この帽子がボクのトレード・マークになった。



パーティーの後の明け方にファミレスで食べる朝食は最高だった。