天国から来た大投手 Vol.274 大リーグ編 | 六月の虫のブログ

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十二、ワンダーボーイ (つづき)


 森次郎は、ネイサンにA.ロッドとの勝負を見守るよう空を見上げた。森次郎はマウンドに立つと、A.J.のサインを覗き込んだ。A.J.のサインは速球、内角高めだ。森次郎はうなずくと、ボールを投げ込んだ。A.ロッドのバットが空を切った。ワン・ストライク。二球目も同じく内角高めのサイン。森次郎が力いっぱい投げ込むと、スピードガンは遂に時速百マイル(百六十二キロ)を記録した。再びA.ロッドのバットは空を切った。スタンドの観衆はどよめき、立ち上がって三振の催促をした。A.ロッドは三球目の速球を辛うじてバットに当て、ファウル。A.ロッドのタイミングが合ってきたので、A.J.はサークルチェンジを投げさせたかった。森次郎も浩輔も危険を承知で、A.J.の速球のサインにうなずいた。四球目もファウル。五球目もファウルで粘った。総立ちの観客も静まり返り、二人の勝負を見守った。テレビやラジオの解説者も、このただならぬ雰囲気にしゃべるのを止めた。六球目は外角低めに投げ込んだが、A.ロッドはバットを合わせてファウル。両軍のベンチも静かに見ている。ファウルを打つ度に観客のため息が聞こえる。

 森次郎は、スタンドで手を合わせているジュディと目を合わせてうなずいた。A.J.も座りなおして、ミットを構えた。A.J.はサインを出さず、ただうなずいた。森次郎もうなずいて、渾身の力で七球目を投げ込んだ。A.ロッドは森次郎の百マイルの速球を弾き返した。打球は大きな弧を描いて、レフトスタンドに飛び込んだ。森次郎は一瞬、目で打球を追ったが、すぐにホームランだと分かった。A.J.も同じだ。A.ロッドは、走りながら一塁手前でガッツポーズをとって、ゆっくりベースを回った。三塁ベースを回ったところで、A.ロッドは森次郎を指差して、何やら叫んだ。森次郎には聞き取れなかったが、A.ロッドが自分を認めてくれたに違いないと確信した。


 つづく・・・



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         A.ロッドこと、アレックス・ロドリゲス選手


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