3.11をテーマとした作品を劇場公開します | 語り得ぬものについては沈黙しなければならない。

3.11をテーマとした作品を劇場公開します

ほんとうはこの日までに諸々ブログに書いておこうと思ってたのでした。
ところがなんかだらだらしてるうちに時は流れていくのである。

大島孝夫さんと僕が、共同監督として手がけた『ポセイドンの涙』が劇場公開されます。

3/7~ ヒューマントラストシネマ渋谷
3/14~ 大阪シアターセブン
その後、東北、九州etc.でも上映予定。

昨日がそのプレスリリース日でした。
3.11にまつわる映画です。
反原発映画ではありません。自衛隊です。

http://www.is-field.com/poseidon/

災害派遣で被災地で活動した自衛隊員は当時何を思っていたのか、そして今何を思うのか?

海上自衛隊の全面協力でそれを追ったドキュメンタリーです。

たとえばね、
第二次大戦で米国は大量の機雷を敵国日本の沿岸に沈めたわけで、70年も経った今でもその処理は続いている。
その作業にあたっているのが海上自衛隊の掃海部隊。潜水服を着て海に潜り、不発弾の処理などをする。(集団的自衛権の問題に絡んで安倍晋三君が「ペルシャ湾の機雷撤去」の話をしたが、まさにそういう任務の人たち)
で、そんなダイバー部隊の人たちの震災後の任務は何かというと海の中での遺体捜索だった。

みんな知ってると思うけれど、海の中の遺体はものすごく悲惨です。腐敗してガスが出て身体が膨張しパンパンになる。身体がちぎれていたり、魚に食べられていたりもする。
そんな遺体を、彼らは毎日何十体も海の中から引き揚げていたのです。
しかも、地上部隊の隊員であれば(生きている)被災者の人たちから感謝のことばをかけられたりもするけれど、ダイバー部隊の任務は遺体を陸に揚げるところまで。被災者から直接感謝されるような場面もまずない。

いったい彼らは何を思って任務を遂行していたのか、そして、今何を考えるのか?

みたいなことを1年かけて取材、何度も何度も被災地を訪れ撮影して回ったのでした。

世の中には、「自衛隊」と聞いただけで眉をひそめるサヨクの人もいるし、「反原発は中国の手先の売国奴」と決めてかかるウヨウの人もいる。

でもさあ僕はずっと言うように、そういう古典的とも言える左右対立図式は今や一切無効だと思うのだよ。
特に問題なのが、マルクス主義的唯物論を信仰して「反原発なら反自衛隊でなければ筋が通らない」と考えるような昔ながらの左翼的嗜好のみなさん。それから、ネトウヨというのは僕はよく知らんが、要するに自分のアタマでなにも考えずに、「中国ムカつく」「韓国ムカつく」「市民運動ムカつく」「反原発ムカつく」とか一直線に思ってる馬鹿な反知性主義の人たち。

僕は安倍政権を一切支持しない。
でも、自衛隊は日本にとって必要な組織だと思う。

ネオリベラリズムの財界人や御用経済学者などは人として屑だと思ったりするが、僕が取材した海自の人たちは素敵な人格者がたくさんいた。

まあ僕としてもそんないろんな考えがあるわけですが、あの震災で何が起きたかのか、そして、人は何を思い何を考えたのか。そういうのをいろいろ聞いて何らかの形にしたいなあと考えていたのでした。

被害に遭った人と遭わなかった人、助ける人と助けられた人がいる。
もちろん、被害にあった人、助けられた人の哀しみはとても深い。
でも、被害に遭わずに「助ける」側だった人も、哀しんでいるし、場合によっては自責の念に駆られている。
それをひしひしと感じて、作品にまとめようと思ったわけです。

最初に言ったけど「この日までに書いておきたかったこと」があった。
たとえば「国家とはどういう事態なのか?」(国家は「実体」ではなく単なる「事態」だよ)とか、「軍隊について善だ悪だと言うような議論はどのように存在してしまっているのか」とか、もっと言えば、今「イスラム国」の本を作っているのだけれど、果たして日本は、というか日本国の主権者である我々は何をどう問題にして詰めていくべきかとかね。
そういうことをいろいろ語っておきたかったのだけれど、朝は寝てるし昼は二日酔い、夜は酔っ払っているのでまとめられませんでした。

週刊文春は毎号読んでいるのだが、最新号で大好きな連載、町山智浩さんの『言霊USA』が、クリント・イーストウッドの『アメリカン・スナイパー』( http://wwws.warnerbros.co.jp/americansniper/ )について書いている。
日本公開は2/21で、僕もまだ観ていないので作品についてきちんと語ることはできない。
ごめん、でもあえて書くよ。

町山さんの原稿を読むと、米国ではこの作品に対して、そもそもの問題設定を間違えている人が(いわゆる)右派にも左派にも大勢いるようだ。
イラク戦争で160人以上を射殺した米国海軍特殊部隊SEALsの狙撃兵の物語。
右派からは「この作品を批判する奴は反米、売国奴だ」と声が上がり、左派は「戦争を美化するな」と糾弾する。
でもさあ、町山さんの原稿を読む限り、あるいは、『許されざる者』とか他のクリント・イーストウッド作品作品を見る限り、この話はそもそも、「敵か味方か」的なイデオロギーに還元されるような安っぽい問題ではないのである。

もちろんクリント・イーストウッド作品と僕の作品を比べるなんて失礼極まりない。
けどそれを承知の上で言うが、僕のこの作品もイデオロギーというようなくだらない話ではない。
もしよかったら、みなさん、観て下さい。

まずは
3/7~ ヒューマントラストシネマ渋谷
3/14~ 大阪シアターセブン

もう一度書くぞ。

3/7~ ヒューマントラストシネマ渋谷
3/14~ 大阪シアターセブン

よろしく頼むよ。