映画「最後の命」プロダクションノート6〜この映画が変えてくれたこと、終わりに | ワンダホー・ワールド

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映画を創る人、松本准平。140字以上のつぶやき。

◆罪を描き、罪を否定する映画にしたい

「罪について描きたい」そう思って手に取った中村文則さんの原作。
しかし、MA作業中、完成間近の作品を何度も試写しながら、改めて思ったのは、僕はきっと罪を否定したかったんだろう、と思いました。人間にを掘って掘って、心の醜さを描いて描いて、その果てに「はい、それがどうしましたか?」ということをやりたかったんだろうと思います。
僕は個人的に、長い間人間の罪について考えて考えて考えまくって鬱状態にもなりつつ過ごしていました。確かにそれはあると思いますし、人間の罪はとても重要なテーマであり、あらゆる問題の根源とも思います。しかし、そんなものを問い続けてもなんにもならないし、ましてだからといって人間はそれによっては決して価値決定されないのだ、とこの作品を創りながら、改めて、はっきりと体全体で納得できたように思います。
僕たちの価値はもちろんそもそも計れないですが、もし仮に計るとすれば、それは罪とは真逆のものによってなのではないかと思います。どれだけ深く誰かを愛し、どれだけ多くの勇気を行ったか。どれだけ絶望と戦い、どれだけ希望を見つめたか。どれだけ祈り、どれだけ立ち上がったか。私たち人間を決定するものはそういったことなのではないかと、深く思いました。罪なんてものは、何度犯したって知ったことじゃない。どうせ犯しちゃうものです。そうではなく、深い深い罪の底から、立ち上がろうとすること方がずっと重要なのだろうと思います。

ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」にとても印象に残っているエピソードがあります。詳しいことはもう全然覚えていないんですが、どこかにとても意地の悪いババアがいて、悪行ばかりを繰り返していたそうです。そしてそのまま極悪ババアのまま死ぬんですが、一度だけどっかの誰か(貧しいだれかだったかな?)にネギかなにかをあげたことがある。それがただ1つ、ババアの行った善行なのだそうです。まあ、芥川の「蜘蛛の糸」みたいな話ですね。それで、そのババアが天国に入る可能性を得るんですね。結局どうなったかわからなかいですけど。
でも、その後に書いてあることがすっごい印象に残っていて、「しかし、結局私たちが一生の間でできることは、ネギ一本をだれかに上げる程度のものだ」と書いてあったんですね。
つまり、誰もがその悪徳ババアと一緒なんだというわけです。例え、どんな慈善事業をやっている人間でも、どんなに評判のいい人でも、結局その悪徳ババアと何も変わらないと書いてあるのです。たぶん、この話が言いたかったのは、誰もが罪人なんだということが1つ、そしてもう1つは、このババアが一度のネギによって認められたように、誰もがただ一度でも、その罪の中から目覚めるならば、それは私たちを決定するのではないかということです。
すっごい脱線しましたが、なんだか、ふいに思い出したので書いておきます。恐らくこのことに似たような想いが、映画の中に含まれているのかもしれません。いや、たぶんそうなのだろうと今思います。


◆終わりに

さて、映画「最後の命」は時を待たずして、11月8日に公開されます。
このプロダクションノートをお読みになって、よりご覧になりたいと思った方も、疲弊した方ももしかしたらいらっしゃると思いますが、すべては映画の中にあります。

柳楽優弥さん、矢野聖人さん、比留川游さんをはじめ役者さんの方々、原作者の中村文則さん、音楽の小瀬村晶さん、エグゼクティブプロデューサーのbeachwalkers.吉田正大さん、そして一緒に走ったスタッフの方々・・・それぞれの熱い想いと、血と汗の結晶が詰まっています。
どうぞ、見届けにきて貰えると幸いです。
真心を込めて創った作品だということは保証します。きっと楽しんで頂けると幸いです。

最後に、ここには掲載できませんでしたが、三橋さんと海外担当の吉村さんをはじめ配給会社・ティジョイのみなさんと、鈴木宣伝プロデューサーをはじめ宣伝部の皆様、映画を届けてるために努力を重ねてくれた皆さんの尽力に心からの尊敬と感謝を捧げます。皆さんのお陰で作品は羽ばたいていきます。どうもありがとうございました。


それでは、映画「最後の命」と劇場で出会って頂けることを楽しみにしています!
長いプロダクションノートでしたが、お読み頂きありがとうございました。


松本准平



映画「最後の命」
http://saigonoinochi.com/

原作 中村文則

柳楽優弥 
矢野聖人
比留川游
内田慈 
池端レイナ
土師野隆之介
板垣李光人 
りりィ 
滝藤賢一 
中嶋しゅう 

エグゼクティブプロデューサー 吉田正大
プロデューサー 中林千賀子 三宅はるえ
脚本 高橋知由 松本准平
音楽 小瀬村晶
撮影 長野泰隆
照明 児玉淳
録音 尾崎聡
美術 山本志恵
編集 鈴木理
助監督 北川博康
制作担当 星野友紀
監督 松本准平

主題歌 Cocco「Snowing」

配給・宣伝 ティジョイ
制作 ブースタープロジェクト
企画 フィッシュウォーキング
製作 beachwalkers.


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以下、イベント情報です。

<初日舞台挨拶>

『最後の命』初日舞台あいさつ
11月8日(土)
■会場:横浜ブルク13
10:30の回上映後/舞台あいさつ
お問い合わせ:045-222-6222

■会場:新宿バルト9
13:00の回上映後/舞台あいさつ
お問い合わせ:03-5369-4955

■会場:ヒューマントラストシネマ渋谷
14:40の回上映後/舞台あいさつ
お問い合わせ:03-5468-5551

登壇者(予定):柳楽優弥、矢野聖人、比留川游、松本准平監督
料金:2000円(税込)


<<ご購入方法>>

◎新宿バルト9及び横浜ブルグ13
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<KINEZO EXPRESS(インターネット販売)及び劇場窓口>

(販売開始日)
●KINEZO EXPRESS(インターネット販売):https://kinezo.jp/pc/140
11月4日(火)24:00(11月5日(水)0:00)より販売開始
●劇場窓口(新宿バルト9)
11月5日(水)劇場オープン時より販売開始
※特別興行のため、前売鑑賞券および招待券・優待券、割引サービスのご利用はいただけませんので予めご了承ください。
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◎ヒューマントラストシネマ渋谷
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(販売開始日)
●インターネットチケット購入
11月5日(水)0:00 より販売開始
●劇場窓口
11月5日(水)劇場オープン時より販売開始
※特別興行のため、前売鑑賞券および招待券・優待券、割引サービスのご利用はいただけませんので予めご了承ください。
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<11月7日タワーレコード>
映画の公開前日に、タワーレコード渋谷店で、小瀬村晶さんとトーク致します!小瀬村さんの演奏もございます。無料です。お得なので是非。タワレコ渋谷は「最後の命」が上映されるヒューマントラストシネマ渋谷ともとても近いです。


「最後の命」公開記念 小瀬村晶インストアイベント

開催日時
2014年11月07日(金) 19:30
場所
渋谷店 7Fイベントスペース
参加方法
観覧自由。
□サイン会参加にはサイン会参加券が必要

10/8(水)発売、小瀬村晶「最後の命 EMBERS」(SCH-038)を
タワーレコード渋谷/新宿/池袋/秋葉原/横浜ビブレ各店で
お買い上げいただいたお客様に、先着でサイン会参加券を差し上げます。
サイン会参加券をお持ちのお客様はミニライブ終了後、サイン会にご参加頂けます。
対象店舗
渋谷店 ・新宿店 ・秋葉原店 ・池袋店 ・横浜ビブレ店

http://tower.jp/store/event/2014/11/003020