やっぱり史上最高のサッカー漫画≪ファンタジスタ≫ | メシアのモノローグ~集え!ワールド・ルネッサンスの光の使徒たち~

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混迷をくり返す世界を救うべく、ひとりでも多くの日本人が現代に生を受けた意味に気づかなければなりません。世界を救うのはあなたの覚醒にかかっているのです……。

 世界一の人気スポーツ、サッカー。その人気が日本というアジアの島国で起こり出したのは1990年代のことだが、それ以前よりサッカーの魅力を伝え続けていた人がいた。漫画家の高橋陽一という人であり、代表作『キャプテン翼』は日本のサッカー漫画史の元祖にして王様として君臨している。また、高橋陽一はJリーグの開会式にゲストとして呼ばれたりなど、日本サッカーの隆盛に貢献した人物としても歴史に名を残している。

 

 
 そんなサッカー漫画史に革命を起こした作品が存在する。それこそ草場道輝という人の描いた『ファンタジスタ』である。

 

 
 以前にも1度だけ『ファンタジスタ』の記事を書いたことがあり、私はその中で『ファンタジスタ』のことを“『キャプテン翼』を上回る史上最高のサッカー漫画”と断言した。

 

 
 それからややたち、『ファンタジスタ』は第14巻まで読み進んだ。そして改めて私の全身に次のような感情がかけめぐる。

 

 
 「『ファンタジスタ』はやっぱり史上最高のサッカー漫画だ!」

 

 
 実は『ファンタジスタ』を4巻まで読んでから、次の5巻が古本屋に置かれていなかったのでほかの漫画を読むことにしたのだ。その中にはサッカー漫画も多く含まれており、『俺たちのフィールド』『ホイッスル』『オフサイド』『シュート』といった作品も読んだりした。

 

 
 が……今あげた『ファンタジスタ』以外のサッカー漫画は、すべて第1巻の途中まで読んであとを投げた。あくまで『ファンタジスタ』と比べればの話だが、内容がないからである。

 

 
 たとえば、ひとりの登場人物がシュートを打ったとする。そしてそのシュートを別の登場人物が『すごいシュートだ!』と驚嘆&絶賛したとする。

 

 
 しかし、である。どこがどのようにすごいシュートなのか?どの作品にも具体的な解説がないのだ。

 

 
 また、ひとりの登場人物がドリブルで敵を抜き去ったとする。そしてそのドリブルを別の登場人物が『うまい!』と驚嘆&絶賛したとする。

 

 
 しかし、である。これも同じように、そのドリブルのどこがどのようにうまいのか?具体的な解説がないのだ。

 

 
 ただ漠然とシュートを打って、ただ漠然とドリブルをして敵を抜き去る……そのくり返しを見せられてもなにもおもしろくはないだろう。

 

 
 そんな中、唯一『ファンタジスタ』にだけ具体的な解説があるのである。ひとりの登場キャラクターのさりげない平凡に見えるシュートにも実は深い意味があったり、ドリブルにしてもひとつひとつの場面場面に詳しい説明がくわえられているのだ。まさに知的サッカー漫画の帝王としかいいようがない。

 

 
 こうした要素を持つサッカー漫画は、私の知る限り『ファンタジスタ』ただひとつだけである。『ファンタジスタ』以外のサッカー漫画でシュートひとつひとつの、ドリブルひとつひとつの、戦術ひとつひとつの具体的な細かい解説がある作品はひとつとして知らない。

 

 
 一般的にサッカー漫画の王様として君臨している『キャプテン翼』でさえ具体的解説はほとんど存在しない。

 

 
 ほとんど存在しない━━といういい方でわかるように、一応存在することは存在する。しかし、あまりに大雑把な解説なのだ。

 

 
 たとえば『キャプテン翼』の最大の売りである現実ではありえないミラクルスーパーシュートの数々。

 

 
 翼くんの必殺シュートのひとつにドライブシュートがあるが、そのドライブシュートの解説は━━『こうこうこうした理由でドライブシュートの強さレベルは100なのである』━━だいたいこれだけで終わりなのだ。そして相手チームのキーパーが格下の場合は100発100中できまり、西ドイツのミューラーくん的な“難敵キーパー”が相手の場合はまずきまらないというお約束のパターンなのである。

 

 
 一方、『ファンタジスタ』には『キャプテン翼』のような非現実的ミラクルスーパーシュートは出てこない。そのときそのときの状況によってシュートの強さレベルは千変万化を遂げ、相手ディフェンス、相手キーパーとの高度な駆け引きを制してはじめてゴールネットが揺らされるのだ。『ファンタジスタ』のゴールシーンはひとつ残らずそうした深い展開なのである。これこそ『ファンタジスタ』のほかのサッカー漫画にない別格の魅力といえる。

 

 
 それにつけくわえだ。くり返すように『ファンタジスタ』の登場人物たちには、『キャプテン翼』の登場人物たちのような超必殺技は一切ない。『キャプテン翼』の登場人物たちはそれぞれの超必殺技によって個性を引き立てているところがあるが、『ファンタジスタ』の登場人物たちは超必殺技をひとつも持っていないにもかかわらず、ひとりひとりの個性、特徴、魅力がはっきりと伝わってくるのだ。

 

 
 トップの誰々はあのプレイが得意で、中盤の誰々はあのプレイが得意で、ディフェンスの誰々はあのプレイが得意なのだ━━といったことが自然と頭にインプットされ、実際のサッカーの試合を観戦しているような感覚で『ファンタジスタ』のページをめくることができるのである。

 

 
 読者にこのような感覚を味わわせてくれるサッカー漫画は、私は今のところ『ファンタジスタ』ひとつしか知らない。『ファンタジスタ』によってサッカーの見た目のカッコよさはもちろん、知的な魅力やおもしろさも多くの人々に伝わることは必定である。

 

 
 私は『キャプテン翼』のことを“知的なサッカーフリークは楽しめないサッカー漫画”と考えているが、『ファンタジスタ』はまさに真逆のサッカー漫画といえる。サッカーという名の壮大な物語を堪能させてくれる世紀の大傑作である。

 

 

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