乗馬の「イノベーション」 | 馬術稽古研究会

馬術稽古研究会

従来の競技馬術にとらわれない、オルタナティブな乗馬の楽しみ方として、身体の動きそのものに着目した「馬術の稽古法」を研究しています。

ご意見ご要望、御質問など、コメント大歓迎です。

  近い将来、自動運転やIoTなどの「イノベーション(技術革新)」によって『第四次産業革命』が起こる、というようなことが、もはや確定的なこととして捉えられているようです。


  競馬や乗馬の世界でも、最近ではずいぶん用具の改良が進み、エアバッグ付きのプロテクターベストとか、昔の「猟騎帽」からすると大幅に通気性や耐衝撃性が改善されだヘルメットなどが当たり前になっています。


  しかしそうは言っても、大昔の『ハミ』や『鐙』、『蹄鉄』の発明に勝るほどの「イノベーション」は、未だ起こっていないとも言えるかもしれません。

  これらは、その発明が無ければ、その後の馬術の発展もなかっただろうと考えられるほどの技術革新で、しかも発明当初からその形がほとんど変わっていないわけですから、これを最初に作った人は本当にたいしたものだと思います。

  

   昔からずっと変わらないこれらの発明品ですが、蹄鉄に関しては、ついに、蹄の裏から釘で打ち付ける伝統的なものにかわる新しいタイプのものが出てきているようです。

  

{EAA1E2D5-2B87-47E7-AE1F-A50D5561E9A9}

{0B0EB9CD-F06F-43FF-BBCA-2E63DF1542D0}

コスト面や耐久性の問題をクリアすれば、一般に普及するかもしれません。




 ・近年のイノベーション

  世紀の大発明とはいかないまでも、近年の乗馬用品の中で、業界に大きな影響をもたらしたと考えられるものがいくつかありますので、ここに挙げてみたいと思います。

  まず、一つ目は、『ネックストレッチ』です。

  馬の頭を上げにくくして、首や背中の筋肉の緊張を取り除くための道具ですが、それ以前の『サイドレイン』のようにハミ環と腹帯をベルトなどで直接繋ぐのではなく、うなじからハミ環を通す形にしたことと、ゴム紐の当たりの柔らかさによって、馬がパニックを起こすようなことも少なく、「頭を下げれば楽になる」という気づきを促すような効果が格段に高まりました。

  サイドレインでは「ソッパ」してひっくり返る可能性があることから、レッスンでは使うのを躊躇するような馬でも、ネックストレッチならば装着した状態でお客さんを乗せることができます。

  それまでは調馬索で一人ずつ回すのが一般的だった初心者の駈歩レッスンが、ネックストレッチの登場によって、馬の歩幅を詰め、反撞をマイルドにすることができるようになったことで、部班で蹄跡を回らせるような形のレッスンも行えるようになり、乗馬クラブのレッスン形態に革命をもたらしました。

  ただ、「無いと不安」ということで安易に使用され続けるにつれて、だんだん馬が頭を低く下げて潜ったり、巻き込んでハミを外して膠着したり、跳ねて人を落とそうとするようなことが多くなってきて、それに対処するために、取り付け方法を色々と変えたりしているうちに、まともに運動させることが非常に難しい「ややこしい馬」になったり、無理な体勢でずっと働き続けることで故障して歩様がおかしくなる、というような弊害が目立つようになり、最近ではこれらを極力使わないというところも多くなりました。

  ネックストレッチは、その単純な構造ゆえ、暫く使っているとすぐに逃げ道を見つけられてしまうのも確かですが、馬の状態を見て他の道具と使い分けたりしながら工夫して使用すれば、まだまだ有効な道具ではあるのだろうと思います。



 二つ目には、『ジェルパッド』を挙げてみたいと思います。

  衝撃を吸収するような粘弾性の素材でできたパッドを鞍下に敷くことで、キ甲や背骨を保護する、おなじみの道具ですが、これが登場するまでは、鞍下に毛布などを敷いたりしていました。

  分厚い毛布では、観光地のラクダのごとくかなり高いところに座るような感じになって、左右への鞍ずれも起こりやすく、騎座や脚のフィット感もありませんでしたが、 薄いジェルパッドの登場のおかげで、それらがずいぶん改善されました。


  ジェルパッドを含んだ馬装をする際によく問題になるのが、「どういう順番で背中に敷くか」ということです。

  クラブによって、また個々の馬とか、その時の指導者によって、ゼッケンが下だとか、ジェルが一番下だとかというのが、いちいち変わるのか面倒くさい、と感じたことのある方は少なくないのではないでしょうか。

  一般的には、鞍傷を防ぐ目的ならばジェルが下、ジェルを衝撃緩和のクッションとして考えるならば、汗取りのゼッケンが一番下ということになるかと思いますが、

鞍傷が瘡蓋になっているような場合は、ジェルを直接被せることで蒸れて、毎回瘡蓋が剥がれてしまい、かえって治癒に時間がかかってしまう、というようなこともありますから、やはり面倒でも毎回最適な方法を考えて馬装してあげるのが良さそうです。




  ・SF的、乗馬の近未来予測

 ここからは、近未来に起こるかも?という「ハード面」のイノベーションを、いくつか挙げてみたいと思います。
 

  まずは、厩舎や洗い場。

  完全クリーンルームで、ハエの悩みゼロ。
床面は全面グレーチングで清潔です。
  
  
{024285BB-04BC-4606-A816-77D24F9A50D6}



レッスンは、トレッドミルで。

 「馬が動かない」なんていう不満もなく、速歩からギャロップまで思いのままです。

  鞭や拍車さえ、もう必要ありません。
{B0BADCFA-53AA-4029-8E39-2DA1CEB198A8}


 景色が変わらないのはつまらない、という方には、VRゴーグルを。

 草原や海岸の他、競馬のレースに参加することも出来ます。^_^
{9F5B7E83-4B68-4D83-A0F8-D69B330024F0}







  騎乗後のお手入れは、高圧洗浄機で。

  丸洗いも楽チンです。

{EFA5651B-24A4-41FF-97DE-45B089D7B2F3}


  肢や蹄の乾燥は、エアーで気吹き。

  汚れも水分も瞬時に飛ばして乾燥。
さらに冷却効果もあります。

 
{68F3E0AC-EC28-40BC-A9E7-07BD6D99A113}


 
  
 

 乗馬の「大変な部分」を楽にする、画期的イノベーションだと思いますが、いかがでしょうか?
  

大半の「善良な」乗馬愛好者の方は、味気ない、と感じられた方も多いかもしれません。

  乗馬の醍醐味というのは、実はこれらの技術によって省かれる「大変な部分」の中にあるのでしょうし、人の手をかけることでしか出来ない部分も多いものです。


   ここに挙げたようなことが、本当に実現するとは思っていませんが、こうした想像を通して、乗馬というものが本来何を求めて行われるものなのか? というようなことを、改めて考えることに繋がればと思います。

  

 でも、エアーダスターは本当に便利そうですから、一度試してみたいと思います…(^^)