【遠藤のアートコラム】「印象派誕生の道のり」vol.1 | 文化家ブログ 「轍(わだち)」

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引き続き遠藤がお届けします【アートコラム】。(8月ゴッホ特集はこちらから!)
9月は、現在国立新美術館(六本木)で開催中の「オルセー美術館展 印象派の誕生‐描くことの自由‐」にちなみ、印象派が誕生するまでを追います。

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―不幸な人物が空想の壁面に張り付けられている―

上記は、今回の「オルセー美術館展」でも目玉作品の一つ、エドゥアール・マネ作《笛を吹く少年》(1866)への揶揄です。
印象派前後の革新的な絵画には、こうした批判の言葉がつきものでした。

しかし、そうした批判と戦いながら、新たな絵画の流れが湧き上がったのが19世紀のパリでした。

“印象派の父”マネもまた、アカデミー(当時のフランス芸術界を牛耳っていた機関)の決まりごとを打ち壊す挑戦的な作品を発表しては、ことごとくスキャンダルを巻き起こしながら近代絵画の扉を押し開けた一人でした。

実は彼、「時代に適っていること」を誰よりも切望し、アカデミーに認められることを願い、批判されては傷ついていたそうです。


※2

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“不幸な人物”こと、笛を吹く少年の背景には、床と壁の境界がありません。奥行を出しているのは足元の小さな(通常ならありえないような)影だけです。そのため、「壁に貼りついているようだ」「マネ氏は空気の存在を忘れている」といった批判を受けてしまいます。

ですがこの作品、マネより200年前の巨匠ベラスケスの《道化師パブロ・デ・バリャドリード》に感銘を受けて描いたもの。

特にマネが感動したのは「男を包む空気」でした。
「空気」こそ、マネが描こうとしたものだったのです。

マネはこの作品と傷心旅行中のスペインで出会いました。

傷心旅行の理由は、それまでに発表したいくつかの作品があまりに激しく批判されたためでした。神経衰弱の危機だったとか。



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そのうちの一つがこちら《草上の昼食》(左)です。
この作品にも元になった作品があります。ベラスケスよりもさらに100年前の巨匠ティツィアーノによる《田園の合奏》(右)です。

服を着た男性と、裸の女性が野外でくつろいでいるのは一緒です。違うのは、男性が当時流行の衣服を身に着けていることと、裸体が理想化されておらず、普通の人間の女性であること。

そのために、「堕落した恥ずべき作品」「批評家を混乱させるために描いている」などと大批判されてしまいました。

このように、マネは古典絵画をよく研究しては引用し、彼なりに“現代”のエッセンスを加えたのです。


マネは生粋のパリっ子で、近代都市へと変貌する大都市パリを愛していたそうです。

当時のパリは、大改造によって大通りやオペラ座が生まれ、鉄道が敷かれ、人口が集中して活気に満ちていました。そんな時代の空気を感じ「今を描きたい」と思うは当然だったのかもしれません。

マネは大げさなポーズをとろうとするモデルにこう言ったそうです。
「あなたたちは八百屋でラディッシュを買う時もそんなポーズをとるのか。…私たちはローマにいるのではない…ここはパリだし、私たちはここにいたいのだ。」

革新的な色彩感覚と自由な筆遣いで、新しい“時代に適った絵画”を描いたマネは、
若い画家たちを大いに鼓舞し、“印象派の父”と呼ばれるようになります。
今回の「オルセー美術館展」もマネに始まりマネに終わるという構成で、11点の貴重な作品を見ることができます。

次回は、マネや印象派の前に立ちはだかった「アカデミー」の、意外な一面についてお届けします。


<画像>
※1エドゥアール・マネ 《笛を吹く少年》1866年 油彩/カンヴァス 160.5×97cm
©RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

注意:下記は「オルセー美術館展」には出展されておりません。
※2ディエゴ・ベラスケス《道化師パブロ・デ・バリャドリード》1634年頃 油彩/カンヴァス プラド美術館(スペイン)蔵
※3エドゥアール・マネ《草上の昼食》1862-1863年頃 油彩/カンヴァス オルセー美術館(フランス)蔵
※4ティツィアーノ・ヴェチェッリオ/ジョルジョーネ《田園の合奏》1510年頃 油彩/カンヴァス ルーヴル美術館(フランス)蔵

参考:オルセー美術館展 印象派の誕生-描くことの自由-

<展覧会情報>
オルセー美術館展 印象派の誕生-描くことの自由-
2014年 7月9日(水)-10月20日(月)
国立新美術館(東京・六本木)

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オルセー美術館展公式ページ:http://orsay2014.jp/


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