織田信長の出て來る漫画を昔讀むだとき、彈正忠の「忠」の字に「ちゆう」と振假名がしてあつて驚いた事がある。


「忠」に限らず判官を意味する職名には色々な字が使うはれるが讀方は必ず「ぜう(發音はジョー)」である。その色々な字を擧げてみよう。


神祇の判官は「祐」、八省の判官は「丞」、職の判官は「進」、諸寮の判官は「尤」、臺の判官が「忠」、衞府の判官は「尉」、國の判官は「掾」、諸司の判官は「佑」てな感じである。


これらは全て「ぜう」と讀む。「祐」を「ゆう」と讀むだり「進」を「しん」と讀むだり「忠」を「ちゆう」と讀むだりすると恥ずかしい。これは日本の常識です。


他に長官を意味する字には「伯」、「卿」。「大夫」、「頭」「尹」、「督」、「守」、「正」、「首」などがあるが讀は全て「かみ」である。


大蔵卿なんてのは卿は「きやう」でも「けい」でもなく「かみ」です。これも日本の常識。因に次官を意味する字は全て「すけ」、主典を意味する字は全て「さくわん(發音はサカン)」と讀む。


さくわん(主典)て要するに記録掛ね。簡單でせう。これが日本の官職の讀方の常識です。詳しく知りたい方は伊藤東涯の『制度通』(岩波文庫)を讀みませう。


お父つあんの仁齋の本はつまらないけど、息子の東涯の本はどれも面白いです。