3本の刺客 ~その1~ | 緑家のリースリング日記 ~Probieren geht über Studieren~

3本の刺客 ~その1~

先週の水曜、畏友ハルトマン氏 が差し向けたという「3本の刺客」が我が家にやって来た。

「自分はドイツワインに詳しいのだ」なんて誰に言われても、滅多なことでは後れをとらない自信があるが

正直言ってこのひと回り以上も若いハルトマン氏だけには敵わない気がする。


そもそもドイツワイン飲みというのは、甘いにつけ辛いにつけリースリングをメインに飲んでいるものだが

彼はまったく違う。フランケンのジルヴァーナーやバーデンのグラウブルグンダーをこよなく愛するという

自他共に認める「変態」である。それでいてモーゼルやプファルツのリースリングもちゃんとカバーしており

追いかける造り手も、どちらかと言えば有名どころよりもあまり知られていない実力派の生産者だというから

まったく敵わないと言うか恐れ入る。そんな彼からの「刺客」がフランケンのヴェルトナー醸造所 であった。


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それにしても、もし関東圏に住んでいたら自分は一体どうなってた事やら...なんて最近つくづく思う。

昔のワイン会仲間や、アメブロをやっている縁でお近付きになれたお歴々は関西方面にも少なくないが

実のところ、リースリングと言うかドイツワイン好きの仲間は圧倒的に関東方面に偏って居られる。


T井さん、香草園さん、mosel2002さん、tokuさん、R246さん、キリコさん、JUMIさん、Germanweinさん...

思いつくままに、ザッと付き合いの古い順に、酌み交わした事のあるドイツワイン仲間を挙げてみたが

もちろん昨今、本道から脇道に逸れてリースリングを嗜んでおられるラブワインさんやPuligny夫妻も

あっち方面である。そう考えると、こっち方面でドイツワイン仲間と言えるのは

doniekさんを筆頭に昔のワイン仲間達、少数だけかなぁ...まさに東賑西寂の状態なのである。


だからあっち方面に住んでたらワイン会だのちょっとした飲み会だので、それはそれは大変だったと思う。

病弱な身としては、こっち方面にぽつ~んと独り居るのは、ある意味幸いだったと言えるかもしれない。

(ポツ~ンと独りという意味ではweingauさんもそうかもしれないが、まぁドイツ本国だから寧ろ羨ましい話)


そんな濃い世界に身を置いた不幸か、件のハルトマン氏が最近少し体調を崩されたと聞き心配していた。

それが先頃、楽しそうにJUMIさんと酒盛りをしている最中に電話で話をする事が出来てちょっと安堵した。

その際の「近いうちに刺客を送ります」という言葉通り、この度ボックスボイテル3本がやって来たという訳。

もちろん飲むのは初めての造り手で、予備知識も無い。まずはリースリングから開けてみる事にした。


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ガラス栓。僅かに緑がかった明るいレモンイエロー。グラス壁に細かい気泡が少数。

トップノーズは洋梨で、次いで黄桃やパイナップル、そして若干埃っぽいニュアンス。

スワーリングすると僅かにペトロール香。


酸は輪郭が丸く穏やかな口当たりで、決して伸びる酸ではないが、2011 年産にしてはしっかりした量感。

果実味は程好い肉付きで、青い果実系の味わい。アフターに若干の残糖感。

酸と合わさってそこそこ強い収斂味のミネラルは、ザクザクとした比較的目の粗いイメージの触感で

どことなく鉄っぽいような独特の刺激があるような。いずれにしても酸のおかげで重心は高め。

ホルスト・ザウアーもそうだったが、フランケンの2011年産は決して酸が弱くない事を再確認。

翌日も酸中心のバランス感で、実に綺麗なワイン造りをする生産者だなぁという印象である。85/100


土壌感をクリアに表現するため、恐らくこれに関してはステンレスタンク主体の醸造なのではなかろうか。

レーデルゼーなんて村は初耳だが、調べてみるとイプホーフェンのすぐ隣らしい。

イプホーフェンあたりは、やや過剰とも思える果実味が前に出た、どちらかと言うと田舎の地酒的な造りの

リースリングやジルヴァーナーが多いという(個人的にかなり偏った)印象を持っているが

これはかなり高度に洗練された都会的な味筋である。

土着品種的な色合いがより濃いジルヴァーナーでは、果たしてどんな造りになっているのだろうか。

次に開けるボトルが非常に楽しみである。


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さて、すっかり書き忘れていたが、

恐るべきドイツワイン・マニアのハルトマン氏は、いったい何を企図してこの刺客を送り込んで来たのか。

彼が3本のボックスボイテルに託したメッセージを

こちらもドイツワイン狂いの端くれとして、可能な限りそれを余すところなく受け止めてみたいと思う。


まずはここのリースリングを飲んでこの辺りの土壌の特徴を確認してから

造り手自身が全霊を込めて栽培しているというジルヴァーナーの、フラッグシップでもあるGGを試し

そして最終的にここの特産品とも言うべきキュヴェ「フィルゼナー」を愉しむべし、という事だろう。

その1本目の感想としては、「正にシュタイガーヴァルト版のホルスト・ザウアーだな」といったところで

とにかく何よりも酸の素晴らしいリースリングである。

この単純でしかも重要なポイントをまずキッチリ抑えて来るあたり、やはりハルトマン恐るべしである。


まずは1本目、ハルトマンさん御馳走さまでした。

こんな良い造り手がこんなマイナーな村に居たんですねぇ。ホンマ脱帽です、恐れ入りました。m(..)m

2011 Roedelseer Kuechenmeister Riesling Qualitaetswein trocken

Weingut Weltner (Roedelsee/Franken)

A P Nr 5054-019-12,Alc 13%vol,ハルトマン氏より頂き物