懐かしのホルスト・ザウアー
ご承知の通り、フランケン地方のワインはボックスボイテルと呼ばれる独特の形状のボトルに瓶詰めされる。
ひと目でそれと判るし地方色豊かで面白いのだが、厄介なのは普通のボトルと取り混ぜて梱包し難い点である。
もちろんボックスボイテルばかりなら何ら問題はないし、国内での輸送なら少々形状の異なる詰め合わせでも
上手く緩衝材を使用して無難に済ませることも出来よう。だがこれがドイツ本国からの長距離輸送になる場合、
破損のリスクという観点から大抵は断られる。つまりボックスボイテルはそればかりまとめて別便で、という訳。
欲しいフランケンワインが1軒の店で12本も品揃えがあるなんて事はまずないので、これが足かせとなって
実はフランケンワインは結構手に入れるのが難しいのである。
そんなフランケンの中でまた飲んでみたいと思う生産者は?と問われれば、迷うことなく3つの醸造所を挙げる。
ホルスト・ザウアー、ルドルフ・フュルスト、そしてフュルスト・レーヴェンシュタインである。
いずれももう随分昔に飲み、恐らく当時その中に何某かの非凡なモノを感じたせいだろう。
ただ残念なのはその後 出先で偶然出くわす事はあっても、じっくりと向き合う機会は殆どなかった造り手ばかり。
6年前ヴュルツブルクに観光に行った時が唯一の現地調達のチャンスだったが、時間がなく買い付けにも行けず
結局飲みたい飲みたいと思いつつここまで無為に時間を過ごしてしまった。
そしてこの秋、輸送コストが割高になるのを覚悟でまずはホルスト・ザウアー醸造所
の2009年産を入手した。
いったい何年ぶりに飲むことになるのか甚だ記憶が曖昧だが、実に久しぶりの再会である。まずはカビネットを。
スクリューキャップ。明るめのレモンイエロー。微炭酸。香りは熟したバナナ、パイナップル、アプリコットなど。
ふっくらジューシーな果実味。酸のアタックはマイルドだが、目立たないだけで不足はなさそうな密度を感じる。
その証拠に中盤からアフターにかけて力を発揮し始め、よく伸びる。ミネラルは肌理が細かく構築は平面的。
時間とともに若干温度が上がると徐々に果実味が全開となる。味わいは基本的に酸っぱいパイナップル。
濃くて力強いがちょっと単調で飲み飽きする。蜂蜜の残香と、仄かにフローラルなフレーヴァー。85/100
2009 Escherndorfer Lump Riesling Kabinett trocken
Weingut Horst Sauer (Escherndorf/Franken)
A P Nr 4397-008-10,Alc 12%vol,13.50€
おまけ。今夜の我が家は「トマトチーズ鍋」。
一瞬引きそうな響きだが、よく考えてみるとトマトとチーズのアイントプフ(Eintopf)みたいなもんだから大丈夫?
で、食べてみるとこれが結構イケるのよね。最後に「とろけるモッツァレラ」とご飯をぶち込んで仕上げのリゾット。
リースリングにもなかなか相性良し。騙されたと思って一度是非お試しあれ。