7年ぶりのヨゼフ・ライツ | 緑家のリースリング日記 ~Probieren geht über Studieren~

7年ぶりのヨゼフ・ライツ

未だにラインガウ地方へは行ったことがない。日頃ルーヴァーやザールを中心に、モーゼル流域偏重の

飲み生活を送って来ているので、これまであまりそちら方面には目が向かなかったという事もあるだろう。

だがその割にはナーエやプファルツ、ラインヘッセンやすぐ傍のミッテルラインなどには足を踏み入れている。

にもかかわらず何故車や電車で通過するだけに終わっているのか?そもそも大概のドイツワインの入門書は

シュタインベルクやシュロス・ヨハニスベルク、シュロス・フォルラーツ、シュロス・ライハルツハウゼンなんていう

「二山五城」の、中でも古酒や極甘口の称賛に終始する訳である。もちろん飲み始めの頃は暗中模索の過程で

ある程度はこの手のモノも飲んだものだが、恐らく強く惹かれるモノに巡り会わなかっただけの事なのだろう。

だが生来の天の邪鬼気質に加えて、それに輪をかけてシビアな選択眼(舌?)を持った仲間たちの存在が

ラインガウという歴史的に誉れ高い生産地から自分を遠ざけて来たのだろうと思っている。嫌いな訳ではない。


そんな自分の記憶から決して消える事のない辛口がある。7年ほど前に飲んだ2002年産Ruedesheimer Berg

Rottland Spaetlese trocken。ラインガウのリューデスハイムにあるヨゼフ・ライツ醸造所 のリースリングである。

果実とミネラルのとことん凝縮された中での見事なバランスと透明感が、当時衝撃的ですらあった。

盟友である香草園さんが何故これをドイツから我々に送ってくれたのかもう忘れてしまったが、少し間を置いて

もう1本同じモノを飲んで以来、再びこの生産者のリースリングを口にする機会はなく現在に至っている。

ラインガウに行かない限り入手は不可能だろうと思っていたヨゼフ・ライツ、それが今回思いがけず手に入った。


新・緑家のリースリング日記


スクリューキャップ。淡黄色。クリーンな果実香は梨、柑橘、青いバナナなどちょっとアッサリ系。

2009年産にしては珍しくシャープな酸が見事。アフターもスッキリ爽やかで、キレの良さもなかなかである。

軽めながらグレープフルーツ的な苦みのアクセントが小気味良く、もちろんカテキンっぽい渋味は微塵もない。

開栓してしばらくは全体に細身の造りで各要素の凝縮度はそれほどでもないが、とにかくバランスが良い。

香味に一貫して存在する爽やかな柑橘のフレーヴァーがこのワインの澄んだ味わいを見事に際立たせている。

サラッと平面的なミネラルは複雑感には乏しい。時間が経過すると果実味に肉付きが増してアプリコット的となり

酸も凝縮度を増す。そして両者に決して引けを取らないミネラルの量感。こうして時間とともに力強くなるのは

木樽を中心に醸造しているという証左か。(ちなみにこれは木樽とステンレスの併用とのこと)


グーツワインに過剰な土壌表現は不要だが、土臭さの無い垢抜けた味わいは非常に印象深い。シーファーに

石英が加わった土壌というのはこういう味筋になるのだろうか。畑名付きのアルテ・レーベンで確認してみたい。

翌日はやや果実が前に出て微妙にバランスが崩れるが、やっぱりスレンダー。86/100

2009 Ruedesheimer Riesling Qualitaetswein trocken

Weingut Josef Leitz (Ruedesheim/Rheingau)

A P Nr 24 079 047 10,Alc 12.5%vol,8.90€