たくさんの思い出が詰まった鹿児島とももうお別れ。
頬に当たる桜島の火山灰とももうお別れ。
沈む夕日と小さくなっていく鹿児島の街を眺めながら、僕は一人甲板でシャボン玉を吹いている。
火山灰を気にしてか、周りには誰もいない。日常から切り離された、自分だけの特別な世界。
勢いよく吹き出されたシャボン玉は、風に乗って鹿児島の街へと向かって飛んでいく。
でもそのシャボン玉が鹿児島へと届く事はない。
船はゆっくりと沖繩へ向けて走り出している。
何だか切ない気持ちになってきた。
左手には、夕闇に染まり美しさを増す開聞岳がそびえ立つ。
薩摩富士とも呼ばれるだけあって、フェリーから眺めるその姿は本当に美しい。
知覧の特攻隊員も基地を飛び立って、最後にこの美しい開聞岳を見納めて、逝ったのだった。
僕と同じ世代の若者たちは、十死零生の特攻へ向かう中、この美しい開聞岳を見ながら何を考えたのだろうか。
そんなことを考えいる間にも、船はどんどん陸地から離れていく。
鹿児島の街はすっかり小さくなってしまった。
お世話になった人達の顔が、頭をよぎる。
僕を雇ってくれた馬場さんとその事務所のみなさん。
鹿児島でできた新しい仲間たち。
素敵なお弁当と熱烈な拍手で僕を見送ってくれた、町屋カフェ鎌倉カフェのみなさん。
そしてブログを通じて僕を知ってくれた方や、facebookで旅を全力で応援してくれている方との出会い。
鹿児島では本当に数えきれないほどの親切を受けた。
親切を受ければ受けるほど、何もできない自分が本当に小さくて、情けなかった。
見返りを求めているわけではないと頭ではわかりながらも、心は複雑だな気持ちだった。
僕がその優しさへの恩返しとしてできること。
それは満面の笑みで波照間島にゴールすること。
それくらいしかできないが、それが今の僕にできる最大の恩返し。
そして今回の旅で得た経験を、社会人になって仕事を通じて社会へ還していく。
そこまでできたら、少しは恩返しできるかな。
辺りが暗くなってきた。
ついに鹿児島の街はすっかり見えなくなってしまった。
ゴールへ近付いていってるんだな、と実感させられる。
波照間島へ近付いているということは、それはつまり旅の終わりが近付いているということ。
まぁ、そう簡単には終わらせてはくれないだろうけどね。
鹿児島で三日間一所懸命になって稼いだお金も、今じゃ1000円ちょっと。
波照間島へのチケット代には到底届かない。
今は不安で心がいっぱいだ。
働く口も無ければ、知り合いもほとんど居ない。
でもやっぱりわくわくするんだよな。
不安以上に楽しんでいる自分がいる。
「人生を最高に旅せよ」
とは、かの有名なニーチェの言葉だが、今なら自信を持ってその言葉に答えることができる。
「人生を最高に旅してる」ってね。
さぁ、ゴールはもう目前だ。
いざ、沖繩へ!
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