金沢旅行記3 | まさし特派員の世界一周だより

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人文系旅ブログ。自称特派員という無職に就職した僕が、世界の情報を書くという設定です。勝手にやってろって話です。最近は世界の墓場がマイブーム。


翌朝、昨夜の大阪の男性とまたキッチンで鉢合わせ、旅談義に花咲かせたあと、チェックアウトし、金沢の西側に行ってみることにした。
金沢の街中には、東と西に2つの川が流れていて、それぞれの川沿いに茶屋街がある。
西側には他にも寺の密集する地区がある。



まずは「忍者寺」と言われる妙立寺に行くことにした。
その周辺がまさに寺の密集する地区。



妙立寺のすぐそばにあった寺。
落ち葉も掃き清められていない小荒れた境内の感じが妙に気に入って写真を撮った。



そして妙立寺である。
外観からして普通の寺ではないと分かるが、中は落とし戸や隠し階段など、様々な仕掛けが巡らされている。
なんでも、幕府が加賀藩に攻めてきた時の物見小屋兼砦として使うことを想定したのだそうだ。
入場料は800円と安くはないが、ガイドが説明しながら約四十分程度建物内をまわってくれるので、結構楽しかった。




川沿いの高台から見た金沢の街。
遠くに山が見えた。



同じく川沿いにあった古い建物。
形からして遊郭か料亭だろうか。
良い眺望の得られそうな作りである。



西茶屋街は、ひがし茶屋街に比べると観光客もぐっと少なく、静かな雰囲気。



中には入らなかったが、泉鏡花の記念館。
ここは鏡花の生家のあった場所だそうだ。



金沢の三文人の像。
左から室生犀星、真ん中が泉鏡花、右が徳田秋声かな。
この中では僕は泉鏡花が好きで、この日バス待ちの間「高野聖」を読んだが、言葉自体の持つ艶やかな美しさがまるで宝石のようで、世界に入り込んでしまった。
以下「高野聖」から引用する。


左右前後にすくすくとあるのが、一ツ一ツ嘴を向け、頭を擡げて、この一落の別天地、親仁を下手に控え、馬に面して彳んだ月下の美女の姿を差覗くがごとく、陰々として深山の気が籠って来た。
 生ぬるい風のような気勢がすると思うと、左の肩から片膚を脱いだが、右の手を脱して、前へ廻し、ふくらんだ胸のあたりで着ていたその単衣を円げて持ち、霞も絡わぬ姿になったー


久しぶりに泉鏡花を読んで、文章のリズムが良いから、難読な漢字があっても結構スラスラ読めると感じた。
言葉自体が醸し出す妖艶で深々とした気配が濃厚で、非日常的な独特な世界を作り出している。
こういう言葉の世界を作り出せる作家は今いるんだろうか。三島由紀夫の自決を最後にこういう文学の伝統は途絶えたんじゃないだろうか、という気がしてならない。




夜の尾山神社はライトアップされ、ステンドグラスが輝いていた。



夜の金沢駅。



晩飯はラーメンを食べた。
食べログで金沢一と評判の、「神仙」である。
この店は観光名所の多い東口ではなく、店も少なく閑散とした西口からずっと歩いて20分くらいの場所にある。
中央卸売市場に隣接した飲食店街にあって、観光客のはとんど来なそうな立地である。


この濃厚な豚骨ラーメンが美味かった。
具材の増えた特製中華そば850円を大盛りで注文し、さらに替え玉を追加したくらい食った。
一日中歩いて腹が減っていたのもあるが、僕がここまでの量を平らげるのは珍しいので、よほど美味かった。