2023年9月、北九州市が進めている門司区の複合公共施設建設用地で旧門司駅関連の遺構が発掘調査によって発見され【写真1】、ニュースや新聞で大きく報道されました

 

【写真1】旧門司駅関連遺構の発掘調査

 

明治日本の産業発展に大きく貢献した門司港には、港湾のみならず陸路による物流拠点が整備され、その原点が旧門司駅でした。今でも門司港駅には「0哩(マイル)」表示が掲げられ、九州鉄道の始発駅であることを物語っています。門司港駅横の発掘調査では創業当時の駅舎、機関車庫の土木基礎跡が、現在残る駅構内図と全く同じ場所で見つかっており、コンクリート流し込みの技術、イギリスから持ち込まれた赤レンガ積みの技術が明確にわかる壁体も原位置で出土しました。これほど良好な形で鉄道遺構が見つかった例は日本でも数例しかありません。

 

旧門司駅関連遺構の発見は、まさに明治日本の石炭産業、鉄鋼業を物流面で支える原点ともいえ、官営八幡製鉄所旧本事務所と同じように、世界遺産のなかの構成資産にも匹敵する価値を有していると考えています。

 

極めて重要な遺構だったため、鉄道史学会、都市史学会、産業遺産学会、九州考古学会、日本建築学会、日本イコモス国内委員会、日本考古学協会など多くの研究者団体が北九州市や文化庁に現地保存を求める要望書を提出しています。(各団体の要望書は最後に添付しています)

 

ところが、2024年1月25日に武内和久市長は、突如、遺構の一部を移築し、予定している複合公共施設建設工事を計画どおりすすめると発表し、この遺構が現地で保存できるかどうか、一刻を争う事態となりました。

 

私たち「城野遺跡の会」も、「地域の歴史や文化を大切にするまちづくりに寄与するための活動を行う」という会の目的から、旧門司駅関連遺構の保存活用を求める活動に微力ながら取り組んでいます。

 

今回、「初代門司港駅跡の保存を求める会」(以下「求める会」)が、この遺構の重要性や魅力を多くの方々に知っていただき、保存活用への世論を広めるために下記講演会を開催します。ぜひ、ご参加ください。詳しくは案内チラシ【資料2】をご覧ください。

 

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テーマ 初代門司港駅の出現

       -発掘調査で明らかになった九州鉄道の原点に迫る-

日 時 3月16日(土)13:30~17:00

場 所 門司生涯学習センター(定員160名)

資料代 300円

 

今回の講演会で基調講演をされる谷川章雄先生は、早稲田大学人間科学学術院教授で、2019年4月に発見された高輪築堤跡(東京都港区)の学術的意義と価値をいち早く認められ、「高輪築堤調査・保存等検討委員会」の委員長として、2021年国史跡指定をあっという間に成し遂げられました。日本考古学協会会長も2期(2017~2020年)務められ、在任中には北九州市城野遺跡の保存問題にも色々とご尽力いただきました。講演会では「考古学から見た初代門司港駅」と題し、考古学の立場から今回の旧門司駅発見の意義を、高輪築堤跡の事例を交えながらお話しいただくそうです。

 高輪築堤跡(たかなわちくていあと)の史跡指定について - 文化庁広報誌 ぶんかる (bunka.go.jp)

 

また九州大学の建築史がご専門の福島綾子先生は「初代門司駅関連建築遺構の文化財価値」と題して講演されます。福島先生は今回の鉄道遺構発見後いち早く日本建築学会九州支部による現地保存要望書をまとめ上げた方で、去る2月24日には、福島先生の司会進行により、九州大学の先生方はじめ多方面の専門家が集結し、緊急シンポジウムも行われました。

 

【資料2】講演会の案内チラシ

 

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武内市長が発掘調査からわずか4ヶ月で遺構の一部を移築保存し複合公共施設建設の工事再開を発表したため、福島先生が急きょ取り組まれた「初代門司駅遺構の学術調査および保存に関する要望書」【資料3】は、短期間にもかかわらず、鉄道史学会、都市史学会、日本考古学協会、日本建築学会、国際私法学会などの著名な学者・市民404名が賛同し、2月14日に北九州市と文化庁に提出され、メディアでも大きく報道されました。

 

この要望書には、当会の佐藤浩司氏(埋蔵文化財担当学芸員/前北九州市芸術文化振興財団埋蔵文化財調査室長)も、この遺構の消滅に危機感をもってあらゆるつながりに賛同を呼びかけ、西谷正九州大学名誉教授(海の道むなかた館館長)や武末純一福岡大学名誉教授(春日市奴国の丘歴史資料館館長)をはじめ全国各地の考古学研究者や文化財保護に携わる方々(教育委員会や自治体の文化財担当など)、「求める会」「城野遺跡の会」が呼びかけた市民のみなさんにも多数ご賛同いただきました。

 

【資料3】「初代門司駅遺構の学術調査および保存に関する要望書」

遺跡は破壊されたら取り戻すことはできません。この遺構は市有地にあり、北九州市の埋蔵文化財行政の責任とあり方が国内はもちろん、国際的にも問われています。武内市長には専門家や市民の声を真摯に受け止め、北九州市の貴重な歴史が刻まれたこの遺構を市民の宝として保存活用へ舵を切られることを切に願います。

 

 

~研究者団体が提出した要望書~

■日本イコモス国内委員会

初代門司駅関連遺構の保存要望書_240222.pdf (icomosjapan.org)

 

■日本考古学協会

旧門司駅関連施設遺構の保存に関する要望書 | 一般社団法人 日本考古学協会 (archaeology.jp)

 

■九州考古学会

kitakyushucity2.pdf (kyushukokogaku.jp)

 

■日本建築学会九州支部

hozon-23-1124.pdf (aij.or.jp)

 

■鉄道史学会・都市史学会

20240110_suth_statement.pdf

 

■産業遺産学会

ふ印ラボ 九州大学名誉教授藤原惠洋研究室〈旧九州大学大学院芸術工学研究院芸術文化環境論講座〉エクステンションプログラム : 2024年2月13日、産業遺産学会、「初代門司駅遺構」保存・公開の要望」を提出!! (dreamlog.jp)