城野遺跡/帰ってきた弥生人-城野遺跡発見の一部始終をたどる-

第5章 遺跡保存への道のり③ “遺跡保存の必要性を訴える”

 

2010年12月初めに北九州市長へ、城野遺跡の窮状を訴える手紙(市長への手紙)を送りました。受け取ったとの回答はその日のうちに自動返信されましたが、その後手紙に対する返事はもらえず、2010年も年が暮れようとしていました。

 ※「市長への手紙」は本年5/6付「帰ってきた弥生人 第5章 ②“すがった一縷の望み”をご参照ください。

 

私はその間、城野遺跡の発掘調査開始から方形周溝墓や玉作り工房の発見、現地説明会への市民の反応、現時点での問題点と今後の展望などを、いま記憶が鮮明なうちに文章に記録しておきたいと思い、「城野遺跡の学術的価値と遺跡保存の必要性」と題する報告書【提言】をまとめました

 

これは城野遺跡発掘に携わる学芸員4名の了解を得て「城野遺跡発掘調査担当者会議」という組織めいた名称をつけ、もし行政側や開発者側との交渉の際に、担当者個人の意見や要望ではなく、学芸員の総意だ、ということにしておきたかったからです。ただ、資料集めや原稿書きはほとんど私一人の作業になりましたが…。

 

市長への手紙は、この文章をまとめていく中で、思いついた一つの手段でしたが、結果として、回答が届いたのはそれから半年後のことで、すでに遺跡の調査が終了して3か月が経った後だったので、それまでに完成させておいて良かったなと思いました。

 

もっとも、調査途中での見解ですので、今となってはいくつかの訂正すべき箇所や補足箇所はありますが、どうか発掘調査中の遺跡への思いや私の理想とする城野遺跡像や保存活用法などをそのまま感じ取っていただけたら、幸いです。是非ともお読みください。

 

さて、この「提言」はその後どうなったか…。(次回に続く)

 

 

【提言】「城野遺跡の学術的価値と遺跡保存の必要性」(16ページ)

 

 

【寄稿/佐藤浩司氏のプロフィール】 

1955年福岡県生まれ、九州大学文学部史学科卒業。1979年北九州市教育文化事業団(現・市芸術文化振興財団)入所。埋蔵文化財調査室で開発事業に伴う城野遺跡をはじめ市内の数多くの遺跡の発掘調査に携わり、2015年4月室長に就任後、2020年3月退職。2014年から日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会の幹事として九州各地の文化財保護にも携わる。現在、北九州市立大学非常勤講師、日本考古学協会会員

 

 

■動画「城野遺跡 朱塗り石棺の謎」(2017年1月公開 約14分)

城野遺跡の発掘調査を担当した佐藤浩司氏が九州最大級の方形周溝墓で発見された箱式石棺2基の発掘調査にあたり、「世紀の発見かもしれない」と2ヵ月半、約3時間撮り続けた唯一のビデオ記録を城野遺跡の全体像がわかるように約14分に編集したものです。をクリックしてご覧ください。

https://youtu.be/QxvY4FBnXq0

 

 

■動画「城野遺跡 実録80分『弥生墓制の真の姿』」(2022年6月公開 約80分)

上記ビデオ記録を約80分にカットしたものです。撮影当時の佐藤氏のコメントとともに発掘現場の声や音もはいっており、発掘調査の歴史的瞬間の感動がよみがえります。をクリックしてご覧ください。

https://youtu.be/qafp00zCTzQ?t=10

 

 

■日本考古学協会の要望書

日本最大規模の考古学研究者団体である日本考古学協会は国、県、市に対し「現状を保存し、史跡として整備、活用」を求める要望書を3回も提出しました。ぜひお読みください。

<2011.2.25要望書> ※城野遺跡の全貌が判明したころ

 http://archaeology.jp/maibun/yobo1012.htm

 

<2016.1.8再要望書> ※北九州市が現地保存断念を知ったころ

 http://archaeology.jp/maibun/yobo1508.htm

 

<2016.7.20再々要望書> ※すぐ近くにある重留遺跡から出土した祭祀用の広形銅矛が国の重要文化財(広形銅矛では全国唯一)に指定後

 http://archaeology.jp/wp-content/uploads/2016/08/160802.pdf

 

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城野遺跡/帰ってきた弥生人 目次

-城野遺跡発見の一部始終をたどる- ※日付は掲載日

 

第1章 城野遺跡発見の経緯と経過(3回)

     城野遺跡はどのように発見され、どのように取り扱われてきたのか?

      ☛ ①2020/8/2 ②2020/8/10 ③2020/8/17

第2章 発掘調査の内容(20回)

     発掘調査により、どのようなことが明らかになったのか?

      ☛ ①2020/8/24 ②8/31 ③9/9 ④9/18 ⑤9/27 ⑥10/8

       ⑦11/7 ⑧11/20 ⑨12/5 ⑩12/18 ⑪12/30 

       ⑫2021/1/25 ⑬2/15 ⑭3/26 ⑮4/10 ⑯5/1 ⑰6/3

       ⑱6/26 ⑲7/16 ⑳8/6

第3章 注目すべき事実(7回)

     城野遺跡は弥生時代の北九州の歴史にとって、何が重要なのか?

      ☛ ①2021/8/30 ②9/30 ③11/6 ④11/28 ⑤2022/1/8

       ⑥2/7 ⑦6/25

第4章 立ち退かされた弥生人(4回)

     ここで暮らした弥生人たちは、どこへ?

      ☛①2022/7/31 ②9/6 ③10/28 ④12/13

第5章 遺跡保存への道のり(3回)

     発掘担当者の悩みと苦しみ

      ☛①2023/1/31 ②5/6 ※特報!6/9 ③7/5(今回)

第6章 立ち上がる市民と城野遺跡(6回)

     守ることと伝えること…

第7章 立ちはだかる壁(4回)

最終章 帰ってきた弥生人(3回)

     新たな歴史の誕生

 

※20日に1回程度のペースで連載予定です。内容や回数は変更することもあります。最近、掲載が遅くなり申し訳ありませんが、ご愛読のほどよろしくお願いします。