…とまあ、技術博物館 に少々の寄り道をして、

いよいよ世界遺産でもあるシュパイヤー大聖堂をじっくりと。

駅方向から大聖堂を目指していったとすれば、

まず出くわすのがこの西側のファサードということになります。


シュパイヤー大聖堂 西側ファサード


この西側入口の左手端っこの方、ほとんどの人が目もくれないプレートを見ると、

ざっくりした来歴が分かるのですね。


Kaiserdomと記されたプレート

シュパイヤー大聖堂は別名「Kaiserdom」(皇帝の大聖堂)と呼ばれておりまして、

1030年から1061年まで掛かった建造に携わったのが歴代の神聖ローマ皇帝。

コンラート2世、ハインリヒ3世、そしてハインリヒ4世の名がご覧いただけようかと。


彼らを始めとした帝国のお歴々がクリプタに埋葬されておりますが、

それはまた後のお話として、ファサードを見上げてみますと色の異なる石を組み上げて、

素朴ながらもモダンな感じまでしてきますですなあ。


シュパイヤー大聖堂 西側ファサードのレリーフ


こうした彫像もそれぞれに美しいものですが、全体の中での配置もまた良しというところ。

真ん中は聖母子ですが、左側には大天使ミカエルとクレルヴォーの聖ベルナルドゥス、

右側には洗礼者ヨハネと聖ステファノスを従えておるようで。


と、シュパイヤー大聖堂はラインラント・ロマネスク様式の傑作と言われるわけですが、

ここでちとロマネスク様式の特徴をみておこうかと。


ロンバルド帯


ファサード最上部とその後ろの塔にいくつもの半円を連ねた模様が施されています。

「ロンバルド帯」と呼ばれるものでして柱廊と見せて実は奥行きのない、

まあだまし絵的なものともいえましょうかね。

シュパイヤーの場合、手前の屋根に沿ってな斜めに配置されているのは一つの個性かと。


シュパイヤー大聖堂 東面

そして、ロンバルド帯の発展形とも言われるのが

「Zwerggalerie」(ドワーフギャラリーとか小人ギャラリーと呼ばれるようです)というもの。

上の写真は先ほどのファサードとは反対側、大聖堂の東面ですが、

これの一部をクローズアップしてみます。


シュパイヤー大聖堂の「Zwerggalerie」


ロンバルド帯では回廊のようにも見える浮彫り的なデザインであったものが、

実際の回廊のようになっている。

高いところにあって、下から見上げた場合には小さく見えるものですから

「ありゃあ、小人の通り道かいね…」と受け止められたことから、

ドワーフ、小人の…と呼ばれるようになったらしいですよ。


それから、ロマネスクの中でもラインラント・ロマネスクに特徴的に残ったのが、

大聖堂の平面の形で見て取れるというのですね。


一般に典型的な教会建築として、上から見ると十字架型になっているのが

思い浮かぶところではなかろうかと。

東西に伸びる身廊に南北方向の翼廊(袖廊)が交差して十字型になっている。

ところが、ラインラント・ロマネスクでは身廊の西側寄りにも翼廊が配置されて、

あたかもロレーヌ十字のような形になっているのですなあ。


もっともロレーヌ十字のように見えるという点では、

同じく二つの翼廊を持つといっても西側に入口を構えず、

東西両端に内陣を構えるヴォルムス大聖堂 の方がより分かりやすいような気も。


ではありますが、そうなるとシュパイヤーの西面ファサードが

立派な入口の体をなしているのに対して、ヴォルムスでは西側に入口を設けることができず、

南北の脇から堂内に入ることになっていささか厳か感を殺ぐような気もしますけれど。


で外側から見て、二つの翼廊があることを知るよすがとなるのが、

四隅に据えられた塔の存在ということになるのですね。


シュパイヤー大聖堂の4本の塔


これは先日も使った写真ですけれど、見事に四本の塔が立ち上っているではありませんか。

ということで、そんなロマネスクな外観に包まれたシュパイヤー大聖堂、

ヴォルムスには無い立派な西側の入り口から堂内に入っていくわけですが、

そのお話はこの次ということで…。



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