六本木の21_21DESIGN SIGHT では毎度独特の企画で楽しめる展覧会が開催されますけれど、 

現在開催中なのは(といっても、例によって会期終了近いですが)「土木展」というもの。

出かけてみたのでありますよ。


土木展@21_21DESIGN SIGHT


「土木」という言葉からして何となぁく泥臭いといいますか、翻って垢抜けないといいますか、
子供の頃にはそんな印象を持っていたですが、その実、仕事のスケールの大きさは並でない。
トンネル、橋梁、ダムなどなど手掛けるものの大きさは大変なものでありますね。


改まってそんなことに気付いてみれば、個人的にはいささか「土木萌え」とも言えるかとも(笑)。

ですが、トンネル、橋梁、ダムなどなどといって、その作品(?)は遠い所にあったりするため、
身近感が今ひとつ…と思ってましたが、展示されたこうしたものを見ると「ほおほお~」と。


渋谷駅を透視してみれば…


これは地下にも地上(空中というべきか)にも広がる渋谷駅のようすを模型で示したものですが、
東急東横線と東京メトロ副都心線が直通して以来、地下通路が全くもって迷路のように思え、
地上出口との関わりも予想が付かなくなってしまっているような者には
「こんなになってしまってたんだねえ」と思うところなわけです。


と、個人的な不平は(あまり渋谷には近付かないようにしてますし)ともかくとして、
こうした見えない部分までの工事は、まさしく土木なのでありますなあ。


そんなふうに「土木」なるものを身近に感じてもらおうというのが本展の企図でありましょう。
最初の方に出くわしたビデオ作品(?)は実にいいツカみではなかろうかと。


どんな作品とも知らぬままに近付いていきますと、音楽が流れているのが分かっている。
ああ、明らかにラヴェルの「ボレロ」であるなと知れるわけです。


が、どうも音からして普通の楽器を使った演奏ではないこともすぐに気付きます。

で、何よ?と思いながら上映コーナーに入ってみますと、
壁一面に映し出されているのは正しく土木作業の現場の風景で、
削岩機が唸り、溶接機が響いているのですな。


ですが、そんな工事現場から発する様々な音の部分部分を繋ぎ合わせて
「ボレロ」という音楽に仕立てている。題して「土木オーケストラ」であると。

どんなものがどんな音を出して一曲が仕上がっているのかを見定めるのが面白く、
何度かビデオ上映を繰り返し見ていたですが、またはたと気付くことも。


工事現場から発せられる音の類いは日常的にはおよそ「騒音」以外の何ものでもなく、
できることなら早く終わってほしい、むしろ音を出さないでほしいてなふうに
考えるところながら、そうした音を使ってオーケストラ曲が仕上がってしまうとは、
ある種の気の持ちようでもあるのだろうかと思ったりしましたですよ。


元々、どんな音をどのくらいの音量で「騒音」と認知するかは人それぞれと思いますが、
そうしたそれぞれに持つ判断基準に揺らぎを与えるものなのやもしれませんですよ。


また視覚的な作品では「ダムカレー」というのも面白い。
古くは昭和40年代から黒部ダムに絡んで「アーチカレー」なるものが食堂で供されたりと、
実際の歴史もなかなかに刻んでおるようで、現にWikipediaにも「ダムカレー」なる一項が
立っていようとは知りませんでした。


みなかみダムカレー3種


展示されていたのは「みなかみダムカレー」の、
手前から「アーチ型」、「ロックフィル型」、そして「重力式」という3種ほか。
矢木沢ダム、奈良俣ダム、藤原ダムを模しているそうですが、
こうしたダムカレーは全国にあるようでありますね。


子供も好きなカレーでもってダムへの関心を引き、
また食べ始めるとダム決壊必至というスリルある疑似体験ができる?という代物でもあろうかと。
ただ「ごはんで遊ぶもんじゃありません!」という厳しいお叱りもまたありそうですが。


こうした奇を衒った展示ばかりではありませんで、
青函トンネルや先頃開通したゴッタルドベーストンネル (スイス)の縦断面図を見て
「ほお!」と思うような場面も。


青函トンネルの縦断面図


ゴッタルドベーストンネルの縦断面図


ちと分かりにくいとは思いますが、トンネルをぶち抜くために工事した場所というのは
模様や色合いの違いで表された様々に異なる地層を通り抜けているのでありますよ。
当然に地質が大きく異なるでしょうから、ただただ単純に掘っていくのも大変だろうに
掘り進め方にもさぞ工夫が必要であったろうと思うわけでして。


とまあ、そんなこんなでいささかなりとも「土木」が身近なものになってきますと、
その壮大な作品を見に行きたいものだと思ったりしてしまう展覧会なのでありました。


土木展…


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