女流義太夫演奏会 を聴いた後に全く趣向の異なるところながら、
ドキュメンタリー映画の上映会に行ってきたのでありますよ。
「遺伝子組み換えルーレット-私たちの生命のギャンブル」というタイトルですが、
ミニシアターも含めて映画館では公開されていないようで、全くの自主上映といったふう。
今回は会場が何とまあ、お寺の本堂でありまして、
上映開始となると天井備え付けの大画面スクリーンがしずしずと下りてきたのには「はぁ?」と。
お寺さんも(今回の自主上映の主催者ではないものの)いろいろな取り組みをしておりますなあ。
それはともかく3年くらい前でしたか、
「モンサントの不自然な食べ物」というドキュメンタリーを見ましたけれど、
それの続編的な感じといってもいいのかも(作り手は全く違いますが)。
要するにGTO(遺伝子組み換え)食品のリスクに警鐘を鳴らしていたものですが、
今回はもそっと突っ込んで、実際に人体にどのような影響が出ているか、
GTO食品にどっぷり浸かっているアメリカ(何せモンサント社のお膝元)で何が起こっているか、
そのあたりにフォーカスしてましたですね。
簡単に言ってしまえば、組み換えられた遺伝子とは自然界に無いもので、
それに由来する影響というのは当初は知られていなかったものの、
いろいろな面で顕在化していると。
端的にはアメリカでのさまざまな内臓疾患やアレルギー、さらには自閉症の増加などとも
因果関係が示唆される状況になるてなことでありまして。
実は先に「モンサントの不自然な食べ物」を見たときにも思ったことですが、
被害を受けている側寄りに作られた映画であることはやっぱり気になると言いますか。
ここでモンサントやらGTO食品の肩を持つつもりは毛頭ありませんけれど、
一般人のレベルにはこの映画を見ることで「GTOが原因なのだろうな」とは思えても、
それを確信することはできないものですから。
話の中でも、ある症状の人たちがGTO食品の摂取を止めたら改善した…てなことがある一方、
GTOによる影響は摂取を止めたくらいでは収まらないという見解も示されたり。
だからといって、モンサント批判の側に対して
理屈が通ってないではないかというわけではないのでありまして、
むしろ分からないことが多いということを事実として受け止める必要があろうかと思うわけです。
これに対して、モンサントの側では「合法です」「無害です」と言い続けるばかり。
これでは得心のいかない人びとがたくさんいるのも当然ではなかろうかと。
加えて、アメリカにおいて「遺伝子組み換え」とのラベル付けを許さないモンサントの姿勢も
疑念を煽るばかりでありますね。
理由としては「競争力を損なう」ということらしいですが、
問題の無いものであれば積極的にアピールしたらいいようなものの、
GTOであることを明示すると競争力が損なわれるというのであれば、
批判をしている側が挙げる論点をきれいに説明していく姿勢こそが肝心なはず。
これをしないとなれば、灰色というか、黒でないの…と思われても致し方なしですなあ。
先に「くすりミュージアム」を覗いたところによれば、
新薬が実際に使用されるまでには相当高いハードルをクリアしていかねばならない。
薬ならば「飲まない」という選択肢もありますけれど、
三度三度の食事として口にいれる食品の場合には「食べない」という選択肢はないだけに、
薬どころではない厳しさが求められて、なお懐疑的になるところでもあろうかと。
もちろん「食べない」以前に「選ばない」という選択肢はあるはずですが、
アメリカにはこれがない。表示されてませんから。
本作製作時点ではまだ成立していなかったようですけれど、その後にバーモント州では
GTO食品の表示を義務付ける法律が成立するという動きがあったのだとか。
これに対してモンサントはその法律を差し止める訴訟を起こしているとは、いやはや…。
さまざまなデータに基づき、組み込んだ遺伝子によって作られるタンパク質の安全性や組み込んだ遺伝子が間接的に作用し、有害物質などを作る可能性がないことが確認されていますので、食べ続けても問題はありません。
これはアメリカでなくって日本の厚生労働省が出している
消費者向けパンフレット「遺伝子組換え食品の安全性について」に書かれていることですが、
一方でとある農協のページにはこんな記載も。
輸入される遺伝子組み換え作物は、厚生労働省の安全性審査により食べても大丈夫と確認されたものです。ただし、長期的に摂取した場合に人体に与える影響が不明など、安全性審査は不充分との声もあります。
先にも言いましたように、この点に関して個人的には
「絶対にこうだ!」という答えを持ち合わせてはおらないながら、
「危うきに近寄らず」の姿勢で臨もうと改めて思っているところでありますよ。
人工的なものは全部ダメとは言いませんですが、何せ口に入れるものですから。


