以前、ふらりと新宿駅西口イベントコーナーの前を通りかかった折りに、
たまたま10月18日が「統計の日」であることに因んで開催中の
「統計データ・グラフフェア
」なる展示を見たと書きましたですね。
その際、「ご自由におもちください」資料の中に「統計資料館」なるものの案内リーフレットがあり、
「ふ~ん、かような施設もあったのか」と持ち帰り、そのままになっておりましたですが、
ふと思い立ってその統計資料館に出かけてみたのでありますよ。
「ずいぶんと不便なところにあるものだな」と思いつつ、
東京メトロ早稲田駅から早大
西早稲田キャンパスの外側を巻くように
坂を登り詰めていきますと、総務省第二庁舎の建物に突き当たる。
総務省統計局なんかが入っているこの建物の敷地内に統計資料館はあるのでありました。
案内リーフレットには「どなたでも気軽に御観覧いただけます」とウェルカム・ムードが漂うも、
そも建物以前に敷地に一歩入ったところで警備員に「どちらへ?」と呼び止められる。
「資料館へ」と、これをやり過ごして建物に入ると目の前には自動改札をも少し頑丈にしたような
入場ゲートが待ち構え、手前の案内窓口からは警備員が目を光らせているという具合。
「これを書いて」という紙には氏名、勤務先、電話番号などの記入が求められ、
書き終えたところで警備員がどうやら資料館の係へと内線電話で
「○○(勤務先名)の□□(氏名)という方が見学です」と連絡している。
渡されたビジター用のICカードで入場ゲートを通り抜けたものの、
先に連絡がいってますから、途中で見かけた喫煙所に立ち寄ることもかなわず、
(資料館への到着が遅れると胡散臭く感じられましょうなあ)
教えられた道順に従ってそそくさと資料館へと向かったのでありました。
資料館の受付では「これを書いてください」と再び氏名その他の記入を求められたものですから、
警備員ほどいかつくない資料館の受付係に「ずいぶんと厳重ですね…」とひと小言。
向こうも苦笑をしてましたが、リーフレットの「気軽に」とはずいぶん異なる印象だったもので。
とまれ、こうしてたどり着いた統計資料館では、苦言に申し訳なく思ったというより
見学者がほかに一人もおらず手がすいていたからかもですが、
受付にいた方がひと通りの案内をしてくれましたですよ。
まず最初には「杉 亨二(すぎこうじ)」という人物の紹介ですが、
どうやら日本の統計学の祖とされる人であるそうな。
幕末の時期を苦学して蘭学を修め、
勝海舟
の塾で塾長を務めたり、幕府開成所の教授となったり。
その開成所で洋書の翻訳をしているとき、
バイエルンで調査された識字率に関する記述に出会い、
「斯う云う調は日本にも入用な者であろう」と感じて、統計を志すようになったのだとか。
そして、もうひとり日本の統計の夜明けに関わる人物が大隈重信だそうで、
1881年(明治14年)に統計院の設置を建議したり、首相となっていた1916年には
「統計ノ進歩改善ニ関スル件」という内閣訓令を発したりしているという。
「もしかして統計と大隈の関わりから、この建物は早稲田の近くにあるんですか」
と聞いてみますと、これが全く関係なし。
総務省第二庁舎のある一帯は元は陸軍の土地であったそうな。
斜向かいにある国立国際医療研究センターも「陸軍病院だった」とのこと。
近くの戸山公園含めてあたり一帯が陸軍用地であったのですなあ。
「戸山の練兵場」とは聞く言葉ですが、この辺のことであったのだなと知ったのでありました。
と、展示内容の話があまり進まないうちに長くなってしまいましたので、
人口の比較の点くらいは少々取り上げておこうかと。
統計に関する部局ができてしばらく後(日清・日露戦争などを挟む)、
第1回の国勢調査が1920年(大正9年)に実施されます。
これはその時の記入用紙を大きくしたレプリカですけれど、
一世帯の氏名を記入する欄が十人分あるというのは大家族であったことの表れかと。
もっとも今と違って、限られた刻限の調査時点でその家にいる人は
家族ばかりか、友人その他出入りの商人といったたまたまそこにいた人までも
記入することになっていたそうですので、そのせいでも欄が多いのでしょうか。
その結果として得られた人口ピラミッドですけれど、左が1920年、右が1930年(昭和5年)のもの。
見事な三角形を描いていますですが、子供が多かったのですなあ。
で、下の方は比較的最近、2000年と2010年の結果で、もはや何の形をしているとは言いがたい。
(言葉として「人口ピラミッド」というものの、ピラミッドの形は留めておらないですね)
しかしまあ、不思議ですよね、均整がとれているだけでなんだか良きものに思えるというのも。
ということで、いろんな意味でいろんなことが分かった統計資料館でありました。
ま、話の種に一度行けばそれでよしということで…。


