先週のETV「らららクラシック」はロッシーニを取り上げて「ふむふむ…」と。
(またしても一週間がた、遅い話題ですが)


76年の生涯に40に近いオペラを作曲するも、最後に書いた「ウィリアム・テル」は37歳の時。
以降はフランス王室からの終身年金を得て悠々自適の美食三昧。


たまにオペラ以外の曲を作ったりするだけながら音楽界では大御所扱いであって、
サン=サーンスの晴れの舞台を横取りしてしまったり…と、この最後のエピソードは
昔のブログで触れましたっけ。


番組で焦点が当てられたのは、
そんなロッシーニの残した曲の中では最も有名な「セビリアの理髪師」の序曲。
序曲だけならば「ウィリアム・テル」 の方が有名度では上と思われますが、
オペラ全体となりますと、やっぱり「セビリアの理髪師」でありましょうなあ。


ロッシーニの早書きは夙に知られたところではありますけれど、
分けても「セビリアの理髪師」は24歳のときにたったの13日間で全曲を作曲した…ところが、
序曲を書き忘れてしまっていたと、番組で紹介されておりました。


そこで思い立ったのが、他のオペラに付けた序曲の転用。
以前書いた歌劇「イギリスの女王エリザベッタ」の序曲をそのまま持ってきて、
「セビリアの理髪師」序曲として使ったそうなんですが、これまた実は
「イギリスの女王エリザベッタ」序曲としての使用も転用で、
そもそもはさらに前に作曲した歌劇「パルミラのアウレリアーノ」序曲であったのだそうな。


ご存知のように「セビリアの理髪師」の主人公は町の何でも屋フィガロでして、
この話の後日譚がモーツァルト もオペラにした「フィガロの結婚」でありますね。


そうしたところから、「セビリアの理髪師」序曲にたんと登場する「♩♩♫♫」という音型が
モーツァルトを意識して使ったんでないの?と思ったりもしていたわけですが、
どうやら何の関係もないようで。


そればかりか、元は3世紀の中東を舞台としたオペラから16世紀イギリスの史劇に転用し、
今度はスペインを舞台にしたコメディーに合わせてしまった。
にも関わらず、違和感のないのはどういうこと?てな感じですなあ。


考えてみるに、ロッシーニという人は大した職人であったということでしょうか。
音楽史上で、例えばベートーヴェン のような革新性を放つ存在ではないものの、
一定水準も作品を矢継ぎ早やに生み出すのは職人技でもありましょう。


そして、早書きの背景として

先の序曲の話ばかりでなく、数々の転用を行っているようですけれど、

いかようにも馴染んでしまう汎用性の高い曲を作り出すのもまた職人技と言えるのかもです。


そう考えると、番組では「書き忘れた」とされた「セビリアの理髪師」序曲は
確信犯的に転用を想定していたのかもしれん…とも思えてきますですね。


曲としてよく出来ていると自負していたこともありましょう、
ある意味、特定のオペラの序曲としては演奏機会もそれなりになりますし、
いっそのことロッシーニ・オペラ用の汎用序曲くらいに考えていたのかもしれませんですよ。
(と、これは全く番組には出てこない妄想ですが)


ですから、後に演奏会用小品として
序曲 だけで取り上げられる機会の多くなったこの曲のその後を知れば、
ロッシーニは満足げな表情で「そうだろう、そうだろう」と頷いて見せたかも…。


というところで唐突ですが、
毎年この時期お馴染みの新潟出張に行ってまいりますので、明日はお休みということに。
後年を美食家として過ごしたロッシーニは数々の料理にもその名を残しているようですが、
まあ、そうした料理に生涯縁は無いであろうものの、せめて日本海の魚でも食してこようかと。

ではでは。


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