比較的ご近所(まあ、自転車圏内ですな)にある武蔵野美術大学美術館で、
「ポーランドのポスター」展をやっていると聞き及び、HPを見てみますと
ついでにスウェーデン・ポスターのコレクション展も同時に行われているようす。
出かけて見たのでありますよ。


「ポーランドのポスター フェイスあるいはマスク」展@武蔵野美術大学美術館


先日、ミシェル・ブーヴェのポスター展 に立ち寄った折、

フランスにはポスターを芸術と受け止める伝統と言いますか、
そうしたものがあるねえ…と思ったものですけれど、全く知りませんでしたですが、
ポーランドもどうしてどうして。


何でもワルシャワでは国際ポスター・ビエンナーレというのが1966年以来開催され、
大変大きな催しになっているのだそうですよ。


ちなみにこの国際ポスター・ビエンナーレでは日本人作家の活躍が目覚しいようで、
毎回必ず誰かしらが入賞しているそうな。

そうした人たちの中には、この方面に詳しくなくとも知っている
福田繁雄、横尾忠則といった名前も挙がっておりましたですよ。


というふうに、想定外に?ポスター文化に関心の高いポーランドのようでありますが、
そこには「ポーランドの歩んだ歴史と無縁ではない」ものがあるようです。
会場の展示解説には、このような説明がありました。

ポスターは宣伝告知の役割のみならず、共産主義下の厳しい検閲や監視を潜り抜けて、政治や社会に対する不満、不安を暗に訴える手段(であった)。

何やら江戸期に幕府と版元・戯作者 がせめぎ合っていたようすを思い浮かべたりしますけれど、
おそらくは「洒落ですよ、洒落」みたいに笑い飛ばしてごまかすなんつうことも決して通らず、
お咎めとなればずっと厳しいもの(シベリア送りとか、ラトビアのことを考えればありそうですね)
であったのではなかろうかと。


それだけに、作者は隠しこんで伝わるメッセージを作品に託し、
見る側はそれを読み解く力が養われる。


その点では、いわゆる一般大衆でも十分にそのメッセージを受け取っていたそうですから、
ポスターを見る眼に力がこもるのもむべなるかなと思いますですね。


ただ、実際にずらり展示されたポスター作品を見たところで思うことは、
「暗いなぁ」ということですかね…。
かつての検閲はもはや無いものではありましょうけれど、
ここいら辺の伝統もすぐには無くなるものではないと考えたらいいのでしょうか。


別の展示室にあったスウェーデンのポスターと見比べると、
尚のこと先の思いは募るわけですが、一方でスウェーデンの方はというと
かなり伝えたいことがストレートというか、意味を知るというより見た目にこだわる作りかと。

こういっては何ですが、ポーランドのを見た後ではいささか薄っぺらなふうにも思えたものです。


てな具合に、ポスター作品を通じてポーランドとスウェーデンの違いを考えたりしたわけですが、
正式名称が武蔵野美術大学美術館・図書館という、その図書館の方でも

館内展示がありましたので、こちらも覗いてみたのですね。

題して「しかけ絵本Ⅱ:江戸から明治に見るあそびのしかけ」というものでありました。


「しかけ絵本Ⅱ:江戸から明治に見るあそびのしかけ」展@武蔵野美術大学図書館


「しかけ絵本」ということで、すぐに思い浮かぶのは昔あった万創の「とびだすえほん」。

本を開くとポップアップしたり、つまみのついた登場人物などの絵柄を動かすことができたり、

そういうものを思い浮かべたのでありますよ。


確かにその類の展示もありましたですが、多くは紙に印刷された絵を切り抜いて組み上げ、

芝居などの一場面をジオラマ的にみせるものでありました。


「立版古(たてばんこ)」といったりするようですけれど、

むしろこれで思い出すのはリューベックの人形劇博物館 のところでふれた、

つまりはポロックス・トイ・ミュージアムおはこの人形舞台でありますね。


そして、元版を切り抜いてしまうと「ハイ、それまでョ」になってしまいますので、

写しで作った組み上げ例の、特に建物なんかをみますと、

この江戸・明治に作られた遊びがその後、よく月刊少年誌の附録になっていたのと同じだなと。


個人的にも子供の頃、夢中になって組み立てたですが、

縁日の露店なんかではその附録だけを売っていたりすることもまま見かけましたから、

さぞや人気があったのではなかろうかと。

とまれ、その展示の一端はこんな感じ。


ムサビの展示①


ムサビの展示②


上の場合は組み上げて置いてみれば、たちどころに辺りが海に見えてくることになりますし、

下の方は小物の動物たちが多々配置されて、実ににぎやかな雰囲気が。

で、これらを組み上げる前はどんなだったかと言いますと…。


ムサビの展示③


ムサビの展示④


すごいですよね。

何がって、背景から小物に至るまで一枚の紙から切り出せるようにしてあるレイアウトが、です。


上の方の仕上がりで、背景に左肩下がりの傾斜が付いているのも、

全ての素材を一枚の紙の中に配置する必要があったからなのでしょうけれど、

そうした必要性と仕上がったときのドラマティックな印象とが両立しているのが、

すごいではありませんか。


実のところ、ポスター展メインで出掛けたのですけれど、

見終わってみれば、図書館展示の方でより楽しんでいたという。

例によって、見どころあれこれの武蔵野美術大学美術館・図書館でありました。