久しぶりにハリウッドっぽい映画を観たなぁと。
先に「第9地区」という映画で隠れたヒット(?)を取った南アフリカ出身の監督

ニール・ブロムカンプによる新作、「エリジウム」でありました。


映画「エリジウム」


「第9地区」の方はたまたま先日にCS放送で観たのですけれど、
(たまたまと言っても「エリジウム」が公開されるんで、やっていたのでしょう)
冒頭部分のドキュメンタリー風な仕立てがいかにもメジャーでなさ(良い意味で)を醸していたですね。
(最後の方には、そうしたこだわりは忘れて、単純にアクションになってしまってたですが)


第9地区 [DVD]/シャールト・コプリー,デヴィッド・ジェームズ,ジェイソン・コープ


そして、監督自身は政治的なこととは関わりのない映画と言ったとしても、
どうしたって南アフリカといえばアパルトヘイトの記憶は残ってますから、
相手がエイリアン(この映画では異星人ですが、Wミーニングのようにも…)だとしても

エリアを区切って集住させられたりする様子は

南アの過去に根ざしたものと思われるところでありますね。


で、今回は遥かにスケールアップした作りで、マット・デイモンやらジョディ・フォスターやらと

ハリウッドスターが多々登場するものへと変貌を遂げたわけですが、

どうもベースのところでは「第9地区」に繋がっているように思えて仕方がないという。


映し出されるのは2154年(だったと思う)のロサンゼルス。
あたり一面荒れ放題にスラム化したところで暮らしているたくさんの人々。

この状況でそこに住まう人々の話す言葉が主としてスペイン語になってるというのも、

今の延長として予見しうる未来ということなんでしょうか。


ところで、「第9地区」では少数の異質なものを隔離する方向だったわけですが、

この映画では先のロサンゼルスは単なる例であって、

要するに地球上のあらゆる場所が荒れ果てたスラム状態ですので、

むしろ少数の金持ちグループは自らを隔離することを思い立ったのですね。


そして、地球から見える程度の宇宙空間に

巨大宇宙ステーション(ま、スペースコロニーですな)を作った…これが「エリジウム」であります。


「エリジウム」では(どうやって作りだしているのか、理屈付けはないものの)

快適な環境が保たれ、しかもどんな傷病も直してしまう機械まである。

そうしたものを含め、エリジウムで使用する器材物品は何くれとなく地球上の工場で、

地球に置き去りにされた人々の労働によって生み出されるという。

たぶん、排ガスなんか放出し放題なんでしょうねえ、エリジウムには影響ないし。


という前史的な状況があるところで、

地球の住人であるマックス(マット・デイモン)が大活躍(というのかな…)をするわけですが、

設定には少々工夫が感じられるものの、こうした派手な立ち回りって

「何の映画でもいいじゃん」と思える類ではないかなあと。


とやかく言わずに「アクション、楽しむべし」という方は

そういう見方で楽しんでいただけましょうから細かくストーリーには触れずにおいて、

ここでは、この映画を見た後でふっと思い出したことに触れておこうと思うのですね。


先頃見たヴィック・ムニーズの映画 の中に、

ヴィックのごみアート制作には関わらなかったものの、

やはり手伝った者たちと同じくカタドールで生業を立てている老人が出てきました。


学校もろくに行っておらず、カタドール一筋に何十年という、この老人が言ってましたですね。

「金持ちは何でも持ってる。ただし、道徳心を除いては」


蓋し名言!と膝を打ってしまいそうでしたけれど、

どうしてそうなってしまうのですかねえ…。

この映画を見ても「やっぱりな」と思いましたですよ。


特権的に手にしたものは他の誰にも渡すもんか的な様子を見るにつけ、

カタドール何十年の老人の方がよほど人間らしいと思えたものでありました。