【連載台本】『七人道中~我儘星とその四方を守りし者~』一話 | 低音飛行

低音飛行

声と文章で何かをやっている命知らず、モリサキが綴る文章の晒し場


ハロウィン以来久々の台本アップになります!

…いつ終わりを迎えるか分からない、連載の始まりね。

かつ、和風ファンタジー的な何かというこのジャンル。

…いろんな意味で冒険してるわね。

こういうモノを、肩の力を抜いて書いていけるようになるのも一つの目標です。

…ちなみにあんた、24の日はどうするの?それにあわせた台本でもお望み?

あー、あー、きこえなーい。本編参りましょう!

=================================
『七人道中~我儘星とその四方を守りし者~』

キャスト
○:男性キャラ
●:女性キャラ

●星置 やまめ(ほしおき やまめ)
年齢:14 ※登場時の表記は「少女」
何者かに滅ぼされた、星置という里の長の娘。
地下の土蔵に寝かされており、一人だけ無事に生き残った。
わがままで疑り深く、何においても非力。

○上坂 前士郎(かみさか ぜんしろう)
年齢:24 ※登場時の表記は「武士」
那珂国出身の武士。つい最近まで仕えていた主がいたが、
何らかの理由で出奔し現在は流浪の身。
本人曰く刀は飾りらしく、基本的には拳闘で戦いを乗り切る。
根はお人よしなのだが、気取った性格な上に一言多い。

○田中 吉中(たなか よしなか)
年齢:39 ※作中の表記は「領主」
那珂国を治める領主。常に領民を気にかける温厚な人物だが、
もっともらしい事をすぐに信じ込み、騙されやすい傾向がある。

●巫女
年齢:不明
吉中に仕える美貌の巫女。聡明で忠実に見えるが、実は…

===始===
□領主の屋敷

領主「…ほぉ。流星ではないか」

領主「それも、今まで見た中では一段と明るい…
   美しいのう、吉兆であろうか」

☆SE足音

巫女「吉中さま」

領主「おぉ、どうした。貴殿も流星を目にしたか。
   なかなか綺麗だと思わんか?」

巫女「のんびりした事を言っておられる場合ではありません。
   …目に眩しい流星は、凶事のしるしに御座います」

領主「なんと…!見た目には美しくとも、
   内に含まれる意味は全く逆なのか…」

巫女「私の読みましたところ…流星の行く末を
   指し示すが如く、我が那珂国にある星置の里より、
   良からぬ気が出ておりました」

領主「ふむ…確かにかの里は、兼ねてより
   我が国や都の通達に従わぬことが多かった…
   しかし独自のしきたりを持つがゆえに、
   それを許してきたという事情もある」

巫女「そう。…ですが、それも今日までとなるでしょうね。
   星置よりの悪しき気…それは、紛れもなく乱(らん)の兆しです」

領主「なんという事だ…私の知らぬ間にそこまで
   増長していたというのか…」

巫女「後顧の憂いを絶つためにも、今こそ手の者を遣わして
   かの里を滅ぼし…民の不安を絶つ時でしょう」

領主「うむ…貴殿の言うとおりだ。
   明日、家の者達を集めて直ぐに準備に取り掛かろう。
   夜も更けておる…貴殿はもう下がってよいぞ」

巫女「はっ…お気遣い、痛み入ります」

☆SE足音

巫女「…ふふっ…見ておれ、星置の民どもめ…」
   
===場転===
村の焼け跡

焼け落ちた村の中に、一人の少女が呆然と立ち尽くしている…


少女「っ…!」

☆SE煙の音、瓦礫の音

少女「これ、どういう事…」

☆煙の音、瓦礫の音

少女「誰もいない…何もない…」

☆煙の音、瓦礫の音

少女「なんで…なんで、あたしだけ…うっ…」

☆煙の音、瓦礫の音

少女「いやぁぁぁぁぁぁぁ…!!」

===場転===
□地下蔵の中

少女「何もない…ほんとに、誰もいない…」

少女「とぉも、かぁも、ばぁも…みんな、どこ…」

武士「…そこに誰かいるのか」

少女「えっ…?」

武士「…お前は、生き残りか」

少女「…!いやっ!近づかないで…!」

武士「安心しろ、斬る気は無い…
   ほれ、この通りだ」

☆SE刀落とす

少女「…なに、なによ…」

武士「私を信じられないのなら、それを使って
   一思いに斬ってよいぞ」

少女「え…そんなこと…」

武士「まぁ、なるべくそうなって欲しくは無いがな。
   助けてやるから、こちらまで上がってきたらどうだ」

少女「…信じられない…ひょっとしたら、
   あんたがやったかもしれないんだから…!!」

☆SE刀
少女、刀を握ろうとするが…

少女「なにこれ…重っ…」

武士「どの道、君にはまだ扱えそうにないな」

少女「…からかってるの?」

武士「そんなつもりは無いがね。
   だがまぁ、悪かったな。
   こちらから降りるとしようか」

☆SE縄梯子

少女「…」

武士「信用できない、か…まぁ、無理もないだろうな」

少女「…あたし達の村、こんなにしたの…」

武士「私だと思われても、無理は無いだろうな…
   ふ、それは認めよう」

少女「妙に素直ね…本当だったら、
   いくら重たくってもこいつで無理やり斬ってあげるわ」

武士「ではもう一つ素直に答えよう。私は、無実だ」

少女「それで信じろって方が無理ね」

武士「君、その刀を試しに抜いてみてくれ」

少女「…いきなり、なに言ってるの?
   ほんとに斬ってほしいわけ?」

武士「私が無実だという証拠が、そこにある」

少女「はぁ…?いいわ、抜いた瞬間変なことしたら…
   その場で斬っちゃうわよ!」

☆SE抜刀(重いので、やや遅く鈍く)

少女「…あれ?つやつや…」

武士「一点の血曇りもないだろう?それもそのはず、
   私の刀は飾りのようなものだからな。
   大抵は、拳で事を済ませるのが殆どだ」

少女「なにそれ、無駄な事してるだけじゃない…
   で、でも!使った後に水で洗った、とかじゃなくて?」

武士「余程の手練でもなければ、斬った後に血糊だけではなく
   少し気持ちの悪い塊も付く事がしばしばだ。
   いかに綺麗に洗おうと、何がしかの痕は残る」

少女「…そりゃ、そうよね。何よりこの刀…ぜんっぜん臭くないし」

武士「ふ、意外と目の付け所が鋭いな。
   何も匂いがしないのは、血を帯びていない
   何よりの証拠だからな」

少女「とぉが狩りに使ってる武具をちっとも洗わなかったから、
   嫌って程そういう匂いに敏感なの」

武士「畑の民であろうが武士であろうが、
   得物の手入れをして置いて損は無いぞ」

少女「そうね…って、話そらすんじゃないわよ!
   でも、この分だとあんたの仕業じゃなさそうね」

武士「話をそらしたのはお互い様な気もするが…
   ともかく、誤解が解けたようで助かった」

少女「調子に乗んないで。…まだ信じたわけじゃないから」

武士「ふ、これは中々手厳しい娘さんだ」

少女「何より、あんた何者よ。あんたの仕業でないとしても…
   こんなになった村に一人で来るなんて、それだけで
   すっごく怪しいし」

武士「そう思われるのも無理は無いか…
   ではまず、名乗りからだな」

武士⇒前士郎「私は、上坂 前士郎という。
         ほんの少し前に訳あって主を失い…
         今は、所謂浪人の身だ」

少女⇒やまめ「…あたしは、やまめ。里長の家だから、
         一応星置っていう姓も持ってるけど…
         めんどくさいから、やまめって呼んで」

前士郎「やまめ…川魚の名を貰ったのか。
     中々見かけないが、良い名だな」

やまめ「あたしはあんまり好きじゃないけど。
     魚、嫌いだし」

前士郎「嫌いな名なのに、そう呼べというのか…
     素直でないな、君は」

やまめ「うっさい…馴れ馴れしくしないで!」

前士郎「これはこれは…ますます手強いな。
     だがともかく、このままでは
     居られないだろう?私の見たところ、
     この村に君以外の生き残りは
     居ないようだしな」

やまめ「どうしよう…っていったって、
     あんたについてくしかないのよね」

前士郎「嫌であれば、別に構わないのだが」

やまめ「散々人に馴れ馴れしくしといてそれ?
     …この薄情者っ!」

前士郎「…ひねくれもここまで来ると感嘆ものだな。
     両親も、さぞ手を焼かされた事だろう」

やまめ「いいから、どこか早く安全なとこへ連れてって!
     …何でも話すから、早く…!」

前士郎「あぁ、分かった。この上坂前士郎…
     暴れ魚、やまめをこの身に代えてお守りしよう」

やまめ「ほんっと、余計な一言ばっか出てくるわね…
     それで、まずはどこに行こうっての?」

前士郎「この赤星の里から東に、十王という港町がある。
     まずはそこまで案内しよう」

やまめ「疲れたら、おぶってよね」

前士郎「善処する。さて、出立の前にそれは返してもらうぞ」

☆SE刀

やまめ「重過ぎて借りる気すら起こんなくなったけど」

前士郎「さぁ、行こうか」

☆SE縄梯子

語り「故郷を失った村娘やまめと、一言多い浪人前士郎の出会い。
   それは、星置の里が焼け落ちた真相を巡る、不釣合いでおかしな、
   そして時には鬼気迫る、若者達の旅の始まりを告げる出来事であった…」

===続===