低音飛行

声と文章で何かをやっている命知らず、モリサキが綴る文章の晒し場


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大変ご無沙汰しております。ブログ自体が久々の更新となりました…

…久々に時間が取れたから台本を更新したようだけど、
M3のお知らせ自分の企画のお披露目はどうしたの?

あはは…そうです、色々と告知したいことも沢山ございまして…

…少しでも暇があったら、ちゃんとやりなさいね?
そんなわけで、管理人の手際の悪さといったらないけど…
七人道中は、何とかこうして書き続けられているわ。

今回も、前回同様ほぼ移動せずにお説教タイムな回ですが…
ちなみに前回の台本はこちらです。
http://ameblo.jp/jose-moro/entry-11984682386.html

…五人目が登場するのは、いつの事かしらね。
それでは、本編に参りましょう。作中に出てくる地名、
行政単位といった固有名詞については、
三章 http://ameblo.jp/jose-moro/entry-11964061675.html
参考にしてみて下さいね。

============================================================
『七人道中~我儘星とその四方を守りし者~五話』

○:男性キャラ
●:女性キャラ
□:男女不問

●星置 やまめ(ほしおき やまめ)
年齢:14
何者かに滅ぼされた、星置という里の長の娘。
地下の土蔵に寝かされており、一人だけ無事に生き残った。
わがままで疑り深く、何においても非力。

○上坂 前士郎(かみさか ぜんしろう)
年齢:24
那珂国出身の武士。つい最近まで仕えていた主がいたが、
何らかの理由で出奔し現在は流浪の身。本人曰く刀は飾りらしく、
基本的には拳闘で戦いを乗り切る。根はお人よしなのだが、
気取った性格な上に一言多い。星置の長を守護する者の一人だが、
特に代々引き継いでいる職業があるわけではない。


○高波 左之輔(たかなみ さのすけ)
年齢:25
那珂国出身の術士。炎と水の扱いに通じている。
物腰柔らかで人懐っこく、博識な人物。
星置の長を守護する者の一人で、術士の家系。

●稲積 さより(いなづみ さより)
年齢:27
窮地のやまめたちの前に突然現れた、
姉御肌の剣士。素早い立ち回りで相手を翻弄する。
大らかで豪快な性格。
星置の長を守護する者の一人で、剣士の家系。

○農民
年齢:38
成滝という村に住まう農家の主。
温厚でよく気が利く人物。

□NA
ナレーション。性別不問です。

===始===
□前夜、一行が泊まった成滝村の民家

やまめ「あーーーーーーっ!!もぅっ、訳わかんないっ!!」

前士郎「ふう…こうなるとは思ったが、
    少しは落ち着いて聞いて欲しいものだな」

やまめ「これで落ち着けって?馬っ鹿じゃないのあんた!
    そんな突拍子も無い事ばっかり、しかもみんなから
    いっぺんに話されたって分かるわけないっての!!」

左之輔「無理も無いでしょう…たとえ順を追って説明したとしても、
    到底一度で納得できるような中身ではありませんしね」

さより「だろうねぇ。というわけだから、その辺を一番
    良く心得ている左之輔…頼んだよっ?」

左之輔「任せてください。お嬢様の為なら」

やまめ「やだ。あんたに話させたら難しくてもっと訳分からなくなるし」

さより「かと言って…他の人が説明する、
    ってなったらあんた、どう思うかい?」

前士郎「おい、さより…何故こっちを見ているんだ」

やまめ「…あぁ、そうね。こいつよりはましね。
    この皮肉馬鹿、途中から説明すんのやめそうだし」

前士郎「前より更に酷いあだ名を授けてくれたようで、結構な事だ」

やまめ「ええ、ただの皮肉屋じゃなくて、馬鹿もおまけしてあげるわ。
    喜んで受け取りなさいな?」

さより「ほらほら、痴話喧嘩はその辺にしな!
    …いっぺんに説明しようとして、あんたを
    取り乱させたのは私らが悪かった…すまないね。
    だけど、これはとっても大事な話なんだ。
    悪いけど、改めて耳かっぽじって聞いてもらうよ。
    それには左之輔が一番適任だからさ…
    分かっておくれよ、やまめちゃん」

やまめ「しょーがないわね…その代わり、しばらく
    左之輔と二人っきりにして。あんたはそこの馬鹿と
    外で散歩でもしてなさいよ」

さより「仰せのままに。さっ、前士郎!お嬢様の言う事は
    しっかり聞きな…一緒に外に出るよ」

前士郎「言わずともそのつもりだ。こんな我儘娘の面を
    拝まずに済むと思えば、なんと気の楽…むぐぐっ」

さより「処置無しだね、全く!やまめちゃん…
    左之輔の話を、ゆっくりでいいからちゃんと聞くんだよ。
    じゃあ、また後でね」

前士郎「むぐぐっ、むぐっ…」

☆SE足音、引きずり音

やまめ「はー…ほんっと、腹立つ…」

左之輔「前士郎さんも、なかなか素直になれませんね…
    最もそれは、お嬢さんにも言える事ですよ」

やまめ「なに、あんたまであいつの味方するわけ?」

左之輔「いえ、お互い様という事です。
    顔を合わせてまだ三日ですし、受け入れられない
    振る舞いや理解しづらい考え方もあるでしょう。
    ですが、それゆえに互いに刺を向け合うばかりでは
    何も始まりません」

やまめ「…左之輔、あんたがそんな厳しい顔するのは始めてね」

左之輔「お嬢さんをお守りする立場である以上、
    時にはそのための直言も必要になります。
    どうか、その点はご容赦下さいね」

やまめ「…分ったわ。それで、改めて話してくれるんでしょ?」

左之輔「ええ。…それと一緒に、お嬢さんも今悩んでいる事、
    溜め込んでいる事があれば私に全て話して良いですよ。
    お互いに、すっきりした話し合いをしましょう」

===場転===
□村の外れ、小高い丘

前士郎「こんな所まで連れて来て、どういう風の吹き回しだ」

さより「そりゃ、あの二人でじっくり話してもらうためさ。
    私たちが居ちゃぁ、邪魔だろう?」

前士郎「だからと言って、これ程遠くまで離れる必要があるのか」

さより「やれやれ…あの子の事を突っぱねてるのか、
    心配してるのか、ほんとにどっちか分りゃしないねぇ。
    いいかい?私も、たんまり話したいことがあるんだよ。
    もちろん、あんたにね」

前士郎「左之輔を真似て、君も説教というわけか」

☆SE刀、握り

さより「もちろん、この場から逃げる事は許さないよ。
    聞いてもらわなくちゃ、意味が無いからね」

前士郎「…どの道、君の素早い動きから逃げられる気はしない。
    大人しく話を聞こうじゃないか」

さより「ふう…とても話を聞く態度とは思えないね。
    まぁとにかく…そこに座りな」

===場転===
□再び、一行が泊まっている民家

左之輔「…と、かいつまんで説明すればこんな所ですね」

やまめ「ふーん…まぁ、さっきよりはずっと分かりやすかったわ。
    けど…あたしがその星置の里長を継ぐ者だとしても、
    やっぱ信じられない。特別な力も道具も、なーんにも
    持ってないし」

左之輔「そうおっしゃるのも解ります。実際、里長の一族は
    『星呼びの石』という、里に代々伝わる特殊な
    石を持った時のみ、その力を発揮できるわけですから」

やまめ「で、その星呼びの石が今ないんでしょ?
    誰かが盗んだとかって話で。だったら…
    あたし、何も出来ないって事じゃない」

左之輔「お嬢さん…」

やまめ「今までだってそうだった…ずっと、あんたや
    あの皮肉屋に守ってもらってばっかりで、
    これからはさよりにも頼っちゃうだろうし…
    自分では何にもやらないで、石が手に入るまで
    みんなに守ってもらうだけ…それなら、あたしなんて…!!」

左之輔「…」

やまめ「ねえ…どうしたらいいの?何すればいいの…?
    答えてよっ…みんなを困らせるだけなら…
    あたしもう旅したくない…あたしなんて要らない…
    そうじゃない!!ねえ…えぅ…ううっ…うぇぇ…えぇぐっ」

☆SEダッシュ
泣き声を聞きつけた農民が、急いで駆けつけてくる。

農民「なんかあったんですかい!」

左之輔「いえ…ご心配なく、とはさすがに言えないですね。
    申し訳ないですが、お水を頼めますか?」

農民「もちろんです!ちっと、待ってくだせえ…」

☆SEダッシュ

やまめ「うぅっ…えぅっ…」

左之輔「お嬢さん…良く、我慢せずに打ち明けてくれました」

やまめ「うぐっ…うぅ…ぇ?」

左之輔「言ったでしょう、全て話して良いと。
    …刺々しい態度で気丈に振舞って、
    本当の気持ちを隠し続けているのは、
    これから先を考えれば良い事ではありません」

やまめ「うぅ…それは」

左之輔「何も出来ない事、それは残念ながら事実です。
    でも、そんな貴方を助ける為に我々がついています。
    …そして、その我々とて一人だけでは何も出来ません。
    それぞれが出来る事を組み合わせながら、
    一つになって共に歩んでいく事が大切なんですよ」

やまめ「そうなるためには…どうしたらいいのよ」

左之輔「…是非もっと、いや、改めて、仲良くなる事です。
    助けてほしい時には助けてと、暇なときには遊んでと、
    そんな風に、素直に我々に声をかけてくれるだけで
    良いんですよ。…特に、前士郎さんには」

やまめ「…あいつが素直に反応するかが、一番怪しいでしょ」

左之輔「大丈夫。さよりさんの一喝はきっと効いているでしょうからね…
    ほら、お水が来ましたよ」

☆SEダッシュ

農民「ほいっ、待たせてすまねえです」

左之輔「ありがとうございます。…さぁ、飲んで落ち着きましょう」

やまめ「うん…ありがと」

===場転===
□村の外れ、小高い丘

前士郎「…言いたい事は、それで全てか」

さより「さあ、後はあんたの返し方次第だね」

前士郎「要は、私があいつにしっかり向き合っていないが故に
    今このような事になっていると…そうだな?」

さより「意外と聞きわけがいいじゃないか。
    …俺は正しく接してきたつもりだったが、
    皆はそう思っていなかった訳だな…
    ぐらいの事は、言うと思ってたけどね?」

前士郎「…馬鹿にされたものだな。私とて、自覚が無い訳ではない」

さより「だったら、それをなぜ直そうとしないんだい?」

前士郎「出会ってまだ二日三日だというのに、
    そもそも正しい接し方も何もないだろう。
    …私とて暗中模索、必死なのだ」

さより「それは、そうさね。…でも、だからこそ
    今の気持ちのもやをいつまでも引きずってちゃあ、
    いけないんだよ」

前士郎「そうは言ってもな…いざ、あいつに向き合おうとしても
    どのように思われているのか不安でならない。
    このまま痴話喧嘩ばかり続けるよりは、暫く
    何も言葉を交わさない方がまだ良…」

さより「このいくじなしっ!!」

☆SE平手

前士郎「うぬっ…あいつの手刀にも劣らない…」

さより「あの子はね…私たちみんなが、そしてあんたが、
    守ってあげなきゃいけないんだよ!!
    何より、あんたはあの子を守りたいんだろ?
    使命だから、一族の義務だからなんて後ろ向きな
    思いじゃなくて…最初から、ずっとずっと、
    自分が守ってやるって思っていたんだろ!!」

前士郎「…その通りだ…だが私は…」

さより「いつまでもうじうじしてるんじゃないよ…
    あんたで作り出した決意を、あんたがへし折って
    どうするってのさ!あの子にも、自分にも
    恥ずかしくないのかい?」

前士郎「…そうだな。このままでは、やはりいけないか」

さより「そうだよ。…あの子を守りたいんだったら、
    ちゃんとその思いを、言葉と振る舞いで
    きっちり伝えてあげな。…出来そうかい?」

前士郎「やってみよう。…たまには、皮肉屋以外の
    呼ばれ方もされてみたい事だからな」

さより「…せめて、名前で呼んでもらえるくらいには頑張りな。
    さ、戻るよ」

☆SE足音

===場転===
□みたび、一行が泊まっている民家

☆SE、粉をこねる音

やまめ「二人とも、まだ戻ってこないわね」

左之輔「前士郎さんも、だいぶん気難し屋さんですからね…
    でも大丈夫、その為のさよりさんですから」

やまめ「どうだか…それより、あんたなに作ってるの?」

☆SE、粉をこねる音

左之輔「あぁ、これはあわとひえを挽いた粉から作った
    お団子ですよ。お二人が戻ってきたら、これを
    焼いて皆さんで食べましょう」

やまめ「ふーん…見た目はあんま綺麗じゃないけど、
    おいしいの?」

左之輔「勿論。それに、体にも良いですよ。
    お米の次は、あわとひえの味わいも
    お嬢さんに知っていただきましょうか」

やまめ「ふーん…まぁとにかく、美味しく焼き上げてよね」

左之輔「お任せ下さい」

☆SE足音

左之輔「おや…お帰りのようですね」

さより「帰ったよ、やまめちゃん、左之輔。
    …ほら、ぐずぐずしない!男を見せてみな?」

前士郎「…やまめ」

左之輔「さあ、お嬢さんも」

やまめ「あ、あの…ごめんね?…前士郎」

前士郎「う…うむ。こちらこそ、面倒をかけたな」

さより「ぷっ…あはは!こりゃ、ぎこちないねぇ」

左之輔「これはこれで、新鮮な一幕ですね」

やまめ「馬鹿にしてんの?!」
前士郎「馬鹿にしているのか?!」

左之輔「ふふっ…是非、もっと仲良くなって下さいね」

やまめ「全く、冗談じゃないわ…いい、前士郎?
    喋りたいんなら、皮肉ばっかり言わないで
    もっと素直に言ってきなさいよ。
    そんで、仲良くなりたいんだったら…
    もっと全力で、あたしを守って!」

前士郎「分かっている…この性分、まずすぐに直る事は
    ないだろうが、君を守りたいという思いは真だ。
    それを少しでも信じてもらえるよう、
    出来る限りの努力はして行こうじゃないか」

やまめ「当然よ!出来なかったら承知しないからね…?」

前士郎「言われるまでも無い」

左之輔「…ひとまずは、一歩前進でしょうか」

さより「そうだね。…さ、もう一息ついたら
    この村を発とうかねぇ?」

前士郎「そうだな。目指すはこの須賀(すが)国の国府、
    大桑(おおくわ)が良いだろう」

左之輔「ええ、情報も集まる上に北や西の街道への
    入り口にも当たりますからね」

やまめ「つまり、いよいよおっきな街に行くって事ね?
    人多いの、嫌いなんだけど…」

さより「賑やかな街もまた、面白いもんだよ?
    迷子にならないように気をつければ、大丈夫さね」

やまめ「なりませんよーだ!」

左之輔「ふふ…これからも、面白い道中になりそうですね」

NA「なかなか素直になれないやまめと前士郎だが、それを見かねた
   左之輔とやまめの後押しで、ひとまずは仲直り出来た様子。
   気持ちを新たに大桑の街を目指す一行の先には、
   一体何が待ち受けているのであろうか…」

===続===
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大変ご無沙汰しております。
1ヶ月以上の間が空き、何をやっとんじゃ!という
ブログの更新ペースではございますが…
『Bloody Stamp』企画の進行はとても順調です。

そしてこの度…キャスト様、絵師様のお力添えあって、
本編に必要な全ての音源、イラストがついに揃いました。
それにあわせて、企画サイトも大幅に更新です。
詳しくは、こちらへ…!
http://bloddystamp-clumsy.jimdo.com/

中でも注目なのは、トップページにお目見えした
葉桐芹那のイラストと、キャストの皆様のサンプルボイス
どちらも作品を彩る、とても素敵な要素になっております。

一見素っ気なく見えつつも優しい葉桐と、明るく人懐っこい
性格の内に意外な一面を秘めている芹那。
二人の間には、果たして何が起こったのか…?
そして葉桐の歯の威力は、どんな形で発揮されるのか?
更に、葉桐の日常を彩る父、大樹と上司、竹彦、
電車の自動放送の素敵な声と演技にも注目です。

本編公開に向け、編集と動画製作を頑張ってまいりますので、
どうかお楽しみに…!
今後とも、『Bloody Stamp』をどうぞよろしくお願いいたします。

モリサキ

『Bloody stamp』 企画サイト
http://bloddystamp-clumsy.jimdo.com/
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およそ一ヶ月ぶりの、七人道中の更新です。

…以前よりはマシなペースね。以前よりは。

と言っても今回、新たな仲間はまだ登場しません。
単に山を下るだけの回です。

…一応、次に繋がる展開はあるらしいけれどね。
作中に出てくる地名、行政単位といった固有名詞については、
三章 http://ameblo.jp/jose-moro/entry-11964061675.html
参考にしてみて下さいね。

それでは、本編へ参りましょう!

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『七人道中~我儘星とその四方を守りし者~四話』

キャスト

○:男性キャラ
●:女性キャラ

●星置 やまめ(ほしおき やまめ)
年齢:14 表記:やまめ
何者かに滅ぼされた、星置という里の長の娘。
地下の土蔵に寝かされており、一人だけ無事に生き残った。
わがままで疑り深く、何においても非力。

○上坂 前士郎(かみさか ぜんしろう)
年齢:24 表記:前士郎
那珂国出身の武士。つい最近まで仕えていた主がいたが、
何らかの理由で出奔し現在は流浪の身。
本人曰く刀は飾りらしく、基本的には拳闘で戦いを乗り切る。
根はお人よしなのだが、気取った性格な上に一言多い。

○高波 左之輔(たかなみ さのすけ)
年齢:25 表記:左之輔
那珂国出身の術士。炎と水の扱いに通じている。
物腰柔らかで人懐っこく、博識な人物。
その出自と目的はよく分からないが…

●稲積 さより(いなづみ さより)
年齢:27 表記:さより
※初登場字の表記は「剣士」
窮地のやまめたちの前に突然現れた、
姉御肌の剣士。素早い立ち回りで相手を翻弄する。
大らかで豪快な性格。

○田中 吉中(たなか よしなか)
年齢:39 表記:吉中
那珂国を治める領主。常に領民を気にかける温厚な人物だが、
もっともらしい事をすぐに信じ込み、騙されやすい傾向がある。
現在は巫女を傍に仕えさせており、その統治にも彼女の影響が
出始めている。

○佐貫 正家(さぬき まさいえ)
年齢:33 表記:正家
那珂国の役人。隣国へ脱出しようとする
前士郎を追っている。真面目で仕事熱心だが、
肝心なところで詰めが甘い。

●巫女
年齢:不明
吉中に仕える美貌の巫女。聡明で忠実に見えるが、実は…

○衛士
年齢:25
那珂国と須賀国を分かつ関所を守る衛士。
煙草や酒を愛する俗な青年。

○農民
年齢:38
成滝という村に住まう農家の主。
温厚でよく気が利く人物。

領主、吉中と巫女は一話
http://ameblo.jp/jose-moro/entry-11715887007.html
以来の登場になります。

===始===
□山道

さよりを先頭に、道を歩いている一行。左之輔はやまめをおぶっている。

やまめ「…ねぇ、ちょっといい?」

左之輔「はい、なんでしょう?」

やまめ「あんたじゃないわ、そこのお姉さん」

さより「私のことかい?嬉しいねぇ、お姉さんだなんて」

やまめ「他に適当な呼び方が無いだけよ。…それで、
    さっき言ってたこと、まだ教えてくんないの?」

さより「あわてない、あわてない。隣国に着いてから、
    ゆっくり聞かせてあげるさね」

やまめ「はぁ…もどかしい。ていうか、その隣国まで
    あとどれくらいあるのよ!」

前士郎「もうすぐ関所ゆえ、そこを越えれば
    めでたく須賀国の地を踏めるぞ」

やまめ「せきしょ…それ、なに?」

前士郎「さよりとやら…この娘の世間知らずぶりは、
    およそこの通りだ」

やまめ「これみよがしに馬鹿にするこいつの人の悪さも、
    まあこんなものよ…お姉さん?」

左之輔「そして、これ程にまで馬が合った二人も
    珍しいと思いませんか…さよりさん」

前士郎「存外だ!」
やまめ「どこが?!」

さより「あはははっ!確かにこりゃぁ、相性が良いねぇ。
    あんたも良く分かってるじゃないか」

左之輔「ええ、このお二人は実に分かりやすいですから」

やまめ「で、もっと仲良くなれとかまた言うんでしょ?
    絶対やだからねっ!」

左之輔「お嬢さん、まだ私は何も言っていませんよ?ふふっ」

さより「いいじゃないか、お互いに腹のうちが読めるくらい
    仲良くなっているんだからさ。…ほら、そろそろ関所だよ」

===場転===
□関所

朽ちかけた小屋の脇に、見張りの衛士が一人立っている。
一向は少し遠くから、その様子をうかがっている。

やまめ「へえ…国の境目にあるこのボロ小屋が、関所って言うの?」

左之輔「場所によっては、もっと立派な物もありますけれどね。
    国同士の人の出入りを見張る建物があれば、それらは
    全て関所です」

前士郎「だが、それでも衛士が一人居るようだな…
    さて、どうしたものか」

さより「私に任せておきな」

☆SE足音

衛士「ふう…暇だ。煙草も切れちまった。
   早く国に帰って酒でもたしなみてぇなぁ…」

さより「…煙草、酒ときたら…次は、女でもどうだい?」

衛士「あ?な、なんだお前」

さより「誰だっていいじゃないか。…そんな事より、
    あんた、なかなか爽やかな面構えをしてるね」

衛士「そ、そうか?」

さより「嘘は言わないよ。…そのきりっとした眉、
    前をしっかり見据える目…堪らないねぇ」

やまめ「ちょっと何あれ、嘘つきまくりじゃ…んぐっ」

左之輔「お嬢さん、ここは様子を見ましょう」

さより「そんないい男に、私が一つご褒美をあげようか。
    …さ、顔をこっちへ寄せな」

衛士「お、おい…そんな事言っても、俺は国に気になる女が…」

さより「私をそいつだと思えばいいんだ。
    …ほら、何してるんだい。おいで?」

衛士「おう、じゃ…」

さより「うん…いい男だね。それじゃ…ねんねしなっ!」

☆SE殴打

衛士「うぐっ…」

☆SE転倒

さより「…ふう。この手はなかなか久しぶりに使ったねぇ」

前士郎「色仕掛けか。そんな事をする柄では無いと思っていたがな」

さより「何のことだい?ちょっとばかし楽しい話をしてただけだよ」

やまめ「待って。まさかそれ、今まで会った男たちに
    誰彼構わずやってきたっていうの?」

さより「さすがにそこまで無節操じゃないさ。
    ただ、いざって時にはそれなりに使ってたかもねぇ」

左之輔「色気は時に剣にも勝る…お嬢さんも、
    覚えておくと良いかもしれませんよ」

やまめ「嫌。男に媚びてるみたいだし、ちっともやりたくない」

前士郎「それ以前に、君の胸板では色仕掛けなど夢のまた夢だな」

やまめ「何ですって?女心をかけらも分かってない奴がよく言うわね!!」

さより「ほら、あんまり騒ぐと折角寝かせたこいつが
    起きちゃうじゃないか。さ、早いとこ山を下るよ」

☆SE足音

===場転===
□街道

やまめ「…ねーぇ」

さより「なんだい?」

やまめ「今度はあんたじゃない、左之輔」

さより「そいつは残念、読み違いだったねぇ」

左之輔「というわけで、引き取りましょう。どうしました、お嬢さん?」

やまめ「いつになったら休める場所に着けるの?
    あんた、この中で一番の物知りでしょ。どこか知ってないの!」

左之輔「そうですね…この街道ですと、国境(くにざかい)に
    一番近い村がもうすぐのはずなんですが」

前士郎「あぁ、あれではないか?藁葺きの家並みが見えるぞ」

左之輔「はい、間違いありません。あの村が須賀国の最も辺境にある、
    成滝(なりたき)村ですね」

やまめ「はぁ…やっと眠れるのね。あたし、もう動きたくない…」

さより「おや、私の話を聞くんじゃなかったのかい?」

やまめ「明日にして。ほっとしたら一気に疲れちゃったの」

前士郎「今日会ったばかりの年長者を振り回し放題か。
    大した娘さんだな、全く」

やまめ「うるさいっ…この皮肉屋…ん…すぅ…すぅー…」

左之輔「おや…言っているそばから寝てしまいましたね」

前士郎「…もう寝床は君の背中で良いのではないか?」

左之輔「いえ、私ではいささか寝心地がよくないと思いますよ」

さより「まあ、どうせならちゃんとした寝床を用意してあげないとね。
    村で泊めてくれる人がいないか、尋ねて回るよ」

===場転===
□村の民家

農民「そんじゃ、このあたりは自由に使って下せえ。
   狭くって、申し訳ねえですが…」

さより「いえいえ、助かるよ。急に押しかけて、
    こっちこそすまないねぇ」

農民「何、宿が無い村じゃぁ旅の方を泊めるのは
   村のみんなの持ち回りの務めですから。
   んじゃあ、ちょいと水を汲んで来るんで」

☆SE足音

前士郎「ふう。ようやく一息つけそうだな」

左之輔「と言っても、肝心のお話は一日お預けになりそうですね」

さより「そうだね。だけど、その前に私達で
    この子に話すべき所だけはまとめておこうかね」

左之輔「そうですね。まず、我々は里長の一族を
    支える六つの一族の子孫である事。
    例えば私の高波家は、父祖の代から術士として
    長を支える立場にあります」

前士郎「そして…今回、我々一族が集まらねばならなくなったのは、
    星置の里に安置されていた『星呼びの石』が
    何者かに持ち出され、里が滅ぼされてしまったからだ。
    さより、左之輔…貴殿らもそれを察して動いたのだろう?」

左之輔「おっしゃるとおりです。最初はさよりさんが
    何者なのか分かりませんでしたが…稲積という姓を聞いて、
    はたと思い当たりましたね」」

さより「その通りさね。…いちばん厄介なのは、星置の里を
    間接的に支配していた那珂国自ら、里を潰しにかかったという
    噂が絶えないことだけどね」

前士郎「…噂ではない。残念ながら、それは真だ」

左之輔「という事は…前士郎さんが那珂国を抜け出し、
    領主の手の者に追われているのはその件が大きく関わっていると」

前士郎「そうだな。この際なので言うが…この刀も原因の一つだ。
    と言っても詳しい理由は…今まだここには居ない、
    とある一族の者と出会ってからでなければ話せないがな」

さより「左之輔、残りの一族の姓はなんだったか覚えているかい?」

左之輔「沖原、藤本、豊沼…記憶違いが無ければ、この通りですね」

前士郎「その姓を持った者たちを、これから探さねばならないのだな」

さより「長い旅になりそうだね…みんなでこの子を、
    しっかり守らなきゃね」

左之輔「ええ」

前士郎「…この身に代えても、な」

===場転===
□那珂国、領主の屋敷

吉中「何という事だ・・・取り逃したというのか」

正家「はっ…申し訳ございません」

吉中「必ず連れ戻せ。連れ戻すまでは部下の両名共々、
   国府へ戻る事は一切許さぬ。…分かったな」

正家「…はっ。しかし、国の外へ逃れた事も考えられます。
   そうなると、隣国に正式に力添えを求めなければ…」

吉中「そんなものは要らぬ。忍び込めばよいだけの話だ。
   …お主は、そういったことを考えるのは昔から得意だろう?」

正家「…っ?それは、そうですが…
   そのような事をしてまで、連れ戻すというのは」

吉中「正家。…あやつは、この上なく危険な物を我が国から
   盗み出したのだ。野放しにすれば何をするか分からぬ。
   …捕まえぬのなら、お主もあやつと同罪だ」

正家「…承知仕りました。ご無礼、申し訳ございません」

吉中「分かったのなら、早く行け」

正家「はっ。…必ずや、連れ戻して参ります」

☆SE足音

☆SEふすま

吉中「…さて、もう出てきてよいぞ」

巫女「はい、吉中さま」

吉中「すまんな、息苦しくは無いか」

巫女「お気になさらず。私は誰にも知られず、
   吉中様を支えられればそれで良いのですから」

吉中「貴殿には本当に感謝している…調達してくれた
   金のお陰で水路や市場の改修も捗っておるし、
   星置の里という災厄の芽を摘めたからな」

巫女「私に出来るだけのことをしたまでです」

吉中「それが今の私にとって、どれほど支えになっている事か。
   …これからも、この国を守り、栄えさせんが為に力を貸してくれ」

巫女「ええ、喜んで」

巫女「(ふん…甘いものだな、こうまで簡単に掌で踊ってくれるとは。
    あとは星置の一族が全て集まる前に、滅ぼしてしまえばよい…)」

===続===
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