いわゆるマスコミが何らかの媒体で何かを報道をしようとする時は大概の場合、シナリオが最初から決まっています。

「シナリオ」というのは、どういう方向に結論付けたいかということ。

マスコミの連中は「取材」と称する活動を行ないますが、取材後にその素材を吟味、熟考してからその内容を再構築して編集し、記事や番組を作り上げるなんてことはまずありません。

「取材」と言い出した時はほとんどの場合、すでに自分達が勝手に決めた結論にリードしやすいような事実や発言だけを拾い集めに行こうとしている状態にあります。


「ギャンブル依存症」という言葉がこれだけ世間一般に広まり、問題視されている中で、その実体をきちんと報道しているような内容の記事や番組は、(皆無とは言いませんが)残念ながらかなり少ないと言わざるを得ません。

非常に多く見受けられるのは、「依存症の実態」を取材して報道しているような体裁を取りながら、その実としてただ単に「反パチンコ・反カジノ」を訴えたいだけだったり、そのような方向性の政治的な動きに加担する目的だけの記事。


…と、まぁそんなようなことを僕は前から感じていて、何かウマイこと言ったるにはどうしたら良いか?とモヤモヤしとりました。

何かひとつの記事を具体例として出して、それを槍玉に挙げて叩くことは簡単ですが、それではその一例だけで話が終わってしまう。。


そんな中でね。先日、とっても良い文章を見つけました!


この方


認定NPO法人 ワンデーポート の施設長である中村努さんです。

中村さんは、かつてご自身が重度のギャンブル依存症者でした。依存症を脱却し、立派に社会復帰したご本人の経験を基に、2000年に回復支援施設のワンデーポートを立ち上げた方です。ワンデーポートはギャンブル依存症回復支援施設の草分け的存在と言われています。


数日前に中村さんが Facebook に投稿された文章を読んで僕は「おおーっ!これだ!」と思ったのです。

ご本人の許可を得まして、中村さんの文章をここにそのまま転載させて頂きます。

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Aさん「私はパチンコで家族に迷惑を掛けました。これからはまず家族への償いを第一に依存症から回復したいと思います。パチンコで苦しむ人をこれ以上出してほしくありません。パチンコ店をなくしてほしいです」

Bさん「私はパチンコで家族に迷惑をかけました。でも、今は家族のことよりまず自分の人生から立て直さなくてはいけないと思っています。それが家族のためにもなると思っています。私は、自分自身の中に問題があったからパチンコにハマってしまったわけで、失敗をパチンコのせいにはしたくありません」

マスコミが飛び付く体験談はAさんです。でもAさんは自分のことがわかっていないので、とても危ういです。自分を見ているBさんのほうが正気で、未来は明るいと思いますが、マスコミは取り上げません。

Aさんのような体験談しか伝えない社会の中での「ギャンブル依存症像」はマスコミにより歪められています。

また、パチンコやカジノ反対に「依存症」を利用したい人たちは、Aさんの体験談に魅力を感じます。自分の問題に気づいていない危ういAさんを持ち上げ、被害者意識を植え付けるわけですからほんとうに質が悪いです。

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これです!まさにこれ!!


僕は、依存症問題に関する勉強を始めてから、その方面の専門家や現場にいる様々な方々から教えを乞うているわけですが、中村さんからもたくさんのことを教えて頂いております。


先月、ワンデーポートに訪問に行ったのですが、その時に聞いた話。

その前日に大手の新聞社の記者が「取材」に来た。記者が欲していたのはとにかく「体験談」。体験談だけを拾い集めに来るマスコミの体質、その危険性を長年の経験から重々承知してしている中村さんは「体験談はそんなに安直には出せません。当事者への直接取材はお断りします。」と。

そうしたら、「体験談がなければ記事にならないので…」とばかりに記者は帰って行ったそうです。


依存症の回復支援施設や支援団体も様々です。中には、徹底して「ギャンブルは悪!パチンコは潰すべき!」のような考え方の団体もあるようですが。。

人が何らかのものに依存してしまう原因をその依存の対象物のせいにしてそこを攻撃するだけでは根本解決にはならない。まずは人間に目を向けなければ。当事者本人のパーソナリティや周辺環境…そのへんを紐解いていくことから始めなければいけない。現象面だけアレコレ取り上げて、表層的なことを言ったりやったりしててもダメなのです。


「支援」する側が個々の人間に対するそれぞれへの対応をしていかなければ当事者は「回復」できません。そこの認識がきちんとしている施設こそが本物だと、僕は思うわけであります。ひとつの統一プログラムだけで全ての依存症者が回復・社会復帰できるわけではありません。



なんだか話がちょっとズレてきましたが。。

とにかく

悲惨な体験談(のようなものだけ)をひたすら強調してオカシな方向にミスリードしようとするマスコミ報道には要注意です。本日言いたかったのはそこです。


P.S. これねぇ…ギャンブル依存症問題に限ったことではないと思うんですよね…。マスコミというものはそもそもそういう体質なのだ、ということを我々はわかっていなければいけないなと。そういう眼で、冷静に報道を達観しなければイカンと思うわけであります。。




↑↑↑ワンデーポートのブログ。依存症問題についていろいろと考えさせられます。良いことがたくさん書いてあるので、ぜひご一読を!
(引用させて頂いた文はこのブログの7/20の記事にもあります)