松本死刑囚は断じて詐病などではない | 徐裕行のブログ

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うまく、落とせない時もあるけどね。

大晦日に出頭し逮捕されたオウム真理教幹部の平田信容疑者が、教祖である麻原彰晃こと松本智津夫死刑囚について、詐病ではないかとの見方をしているとの報道があった。


実際に刑務所に収監されたことのない人や、収監されたことはあるが長期間にわたって独居房に拘禁されたことのない人には、いわゆる拘禁病といわれても、なんのことやらと思うだろう。たかが部屋の中に閉じ込められるくらいのことで、そう簡単に精神に異常をきたすはずはないと思うに違いない。


したし、私の12年間の受刑生活のうちの、たかだか2年間の独居房拘禁の経験から、人の精神はいとも簡単に狂ってしまうと断言できる。


独居房には、夜間独居房と昼夜間独居房の二種類ある。夜間独居房とは、昼間は工場に出役して他の受刑者とともに働き、夜間は一人で過ごす舎房に帰ってプライベートな時間をもてる、いわばエリート受刑者に与えられる特別待遇的な空間のことだ。そして昼夜間独居とは、受刑生活中に重大な問題を起こすなどして、他の受刑者との共同生活が困難と思われる者など、いわば異端児が収監される空間のことだ。昼夜間独居に収監される者は、基本的に他者との接触が禁止されていて、職員との必要最低限の会話以外は、独り言も含めて声を発する機会がない。


私の場合、自身の不徳から、この昼夜間独居に2年間収監される羽目となった。人は話をしないと、徐々に話す能力が衰えてくる。この2年で、私は言語障害を発症してしまったのだ。誰かに物事を伝えようと、頭の中で言うべきことをしっかり整理してから、いざ話し始めると、言葉がでてこず、しどろもどろになってしまう。

職員との会話で、なにか言いたいことが閃いても、なかなか言葉に変換されてこない。まるで、古いOSのパソコンを動かしている重い状態といえば、イメージがつかめるだろうか。ソフトの脳はぐるぐる回転しているが、口を動かすハードがついてこない感覚だ。そして、社会復帰後4年半が過ぎようとしている現在に至っても、言語障害の後遺症は残っている。


松本死刑囚の場合は「死刑囚」であるため、刑が執行されるまでは受刑者ではなく、当然、刑務所にはいない。彼は拘置所に収容されているのだ。したがって、受刑者よりも比較的に緩やかな待遇を受けているはずだ。「死刑囚」という性格上、他の収容者との接触が制限されていることは同じであるが、本人がその気なら担当刑務官を呼んで、雑談をすることくらいはできるだろうし、これまで裁判が行われていたことを考えれば、裁判で少しでも自身が有利になるように、裁判記録や資料を研究するなどすれば、脳は狂気の淵に落ちる手前でなんとか踏ん張ってくれたであろう。


しかし松本死刑囚は、かなり早い段階から沈黙と瞑想の世界に自らを閉じ込める道を選択してしまった。目を閉じ、他人の声をシャットアウトし、内なる世界に沈んでいった。自分の頭で想像した景色や声のみで構成された世界。彼は長い間、その自らが作り出した世界に閉じこもってしまった。そして、彼にとってはそこで起きたすべての出来事こそが現実となってしまったのだ。


私は脳科学者ではないので、あくまで体感的な意見を言わせてもらえれば、脳は常に刺激を求めているのだと思う。私のたった2年間の昼夜間独居生活の話に戻ると、毎日閉ざされた空間で変化のない生活をしていると、夢で見たことが現実にあったことなのかどうか、わからなくなることが幾度となくあった。たとえば、同囚との昔の会話やそのときの光景などが、ふと頭に浮かぶとする。自分には、確かにそんなことがあったような記憶がある。

しかし、冷静に考えてみると、そのやり取りは私が刑務所に入る前の出来事についての会話だったりするので、「そのときは、まだヤツと会ってないや」と、それが現実でないことに気づかされることが、しばしばあったのだ。

つまり、脳が勝手に記憶の書き換えをしてしまっているのである。脳にしてみれば、毎日変化がなくて、活躍する場がないので、ちょっとリアルな夢など見ようものなら、待ってましたとばかりに、おせっかいにも記憶として刻みこんでくれたのかもしれない。


松本死刑囚は、内なる世界に閉じこもってしまったため、脳はあらゆる空想を現実として記憶に刻み込んでいる可能性が高い。そして、その記憶は支離滅裂なものに違いない。おそらく彼がいま、何かを話そうとしても正常な人間として他者と意思疎通を図ることは困難であるのではないかとさえ疑われる。


以上の理由から、松本死刑囚の狂気は、詐病などではないと考えるのだ。したがって、平田信容疑者の裁判への出廷は、まったく意味がないと、確信している。


※朝鮮総聯に対し、拉致事件の解決を求める署名を集めています。

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