第11話:イケブクロ2~カブキチョウ捕囚所:1/5 | 魔人の記

第11話:イケブクロ2~カブキチョウ捕囚所:1/5

★1/5話 不確かなもの★

>ナイトメア・システムによって崩壊するマントラ軍。
その本営があるイケブクロに戻ってきたフィフス・バベルたちは、千晶と再会する。

>彼女は、世界の創世に着手することを彼らに告げた…

千晶「……おかしなことを言ってるって、光介くんは思うかしら」

光介「おかしくはないよ…創世ができる生物として、カグツチは人間を選んだ。それなら、君が創世をやろうと思っても、何もおかしくは…ない」

カハク「…コースケ?」

光介「…なんでもないよ、カハク。なんでもない…」

カハク「悲しそうな顔してる…でも、聞くなってことなのね」

光介「……」

カハク「コースケは世界を何度も見てきた…それなのに聞くなってことは、いずれわかるってこと」

光介「…ああ」

カハク「それならあたしは何も聞かないわ」

光介「…ありがとう」

コダマ「ふたりで何ひそひそ話してるのさー?」

カハク「大人の話よ」

コダマ「むー? ボクだって大人だぞー?」

カハク「自分で大人だって言ってるのが子どもの証拠よ…ほら、黙って聞いてなさいよ」

コダマ「なんだよー、自分だってしゃべってたクセにー」

光介「コダマ、ごめん…あとでわかることだから、今は黙っておいてくれ」

コダマ「もー。コースケがそう言うなら、わかったよー」

千晶「でもわたし、思い出したの。世界が変わったとき……『声』を聞いたことを」

ウィルオウィスプ「コエ…?」

千晶「光介くんだって、生き残ったのなら、聞いたはずだわ」

>風景が変わる。
それはどこかの教室の光景。

>黒板、教壇、机に生徒たち。
しかし、そのどれもが赤く染められ、個性を失っている。

>その中央に立つ、千晶以外は…

千晶「……わたし、あれから落ち着いて考えてみたの」

光介「……」

千晶「この世界でどうすればいいかってことばかりじゃなくって……どうして世界は、こんなになったのか、ってこと」

コダマ「なーんだ、知らないの? それはねー、氷川って人がねー」

光介「いや、コダマ…そういう意味とはちょっと違うんだよ」

千晶「そうしたら、見えてきたこともあるの」

コダマ「そうなのー?」

千晶「もう前の世界は、不要な存在を許容することが出来なくなってたんだ……って」

光介「…ね?」

コダマ「んー」

千晶「たくさんの物があって、たくさんの人がいたけど……もう、創り出すことはなく、何も無い時間が流れていくだけだった」

コダマ「ボクにはよくわかんないなー。またカハクに怒られそうだから、黙ってよっと」

カハク「それが賢明ね」

千晶「世界が必要としてたものは……あそこには無かったのよ」

>赤く染まり、個性を失った生徒たちが消える。

千晶「……確かに、わたしは全てを失った。それは、悲しい事」

光介「……」

千晶「でも、わたし自身は『受胎』を生き残った」

光介「ああ」

千晶「きっと、選ばれたのよ。……そう信じて、目指そうと思うの」

カハク「……」

千晶「わたしの中には、まだ悲しみが残っている……でも、それを飲み下しさえすれば、ここでは無限の可能性が手に入るの」

光介「無限の可能性…そういわれてみれば、そうなのかもね」

千晶「コトワリによって『創世』する力が……」

>千晶は教壇に座る。
机と黒板が、風景の中へ沈みこんでいく…

>千晶は一度こちらに手の差し伸べた。

千晶「選択せよ……声は、わたしにそう教えたわ」

ウィルオウィスプ「センタク…」

千晶「もう世界は、不要な存在を求めてないのよ、きっと」

ウィルオウィスプ「フヨウナ モノ イラナイ… ウォレ ドコカデ ニタヨウナコト キイタゾ…?」

光介「俺が説明した時だろうね。俺は弱者と言ったけど、彼女は不要な存在って言ってる…それだけの違いさ」

ウィルオウィスプ「…ソウダッタ。 ウォレ コースケカラ キイタ…」

千晶「だから、わたしは創ろうと思うの。強い者、優秀な者だけによって、築かれた楽園を」

光介「それが…」

千晶「……『ヨスガ』の世界をね」

カハク「ヨスガ…」

千晶「この世界で勝ち残ってきた光介くんなら……分かるよね?」

光介「ああ、わかるよ」

千晶「…………よかった」

千晶「光介くんなら、きっと分かってくれると思った」

光介「……ッ」

カハク「コースケ…」

光介「大丈夫、大丈夫だよ」

カハク「それなら…」

千晶「いつか、協力してもらう時が来るかも知れないわね」

>千晶は教卓から降りる。
教卓も、沈み込んでいった。

>そして風景は元に戻る。

千晶「これからわたし、創世のためのマガツヒを集めようと思うの」

カハク「大丈夫ならしっかりして、コースケ」

光介「ああ、ゴメン」

千晶「あては、まだ無いけど……でもヨスガは強者のコトワリ。自分の力で、やれる所までやるつもりよ」

光介「そうだな、モヤモヤしたのを乗り越える…それが最強なんだもんな」

ウィルオウィスプ「ソノトオリ。 ソレ ウォレガ イッタ」

光介「お互い、教え合ってるってトコか…そうだな」

千晶「……今日は話せて良かった。また会いましょう、光介くん」

光介「ああ、また会おう、千晶」

千晶「生き残った者同士、きっとこの先も道はどこかで重なっているわ……」

>千晶は出て行った……

光介「…さあ、俺たちも行こう。ゴズテンノウの所へ」

コダマ「話終わったー? 難しい話はカンベンしてほしいよー」

光介「ゴメンゴメン。んじゃ出発しようか」

カハク「…ウィル」

ウィルオウィスプ「ン?」

カハク「アンタも最近、マジメに話聞いてるのね。コダマと一緒に遊ぶんだと思ってたわ」

ウィルオウィスプ「ウォレ コノゴロ ナニカ カンジテル」

カハク「なにかって…なによ?」

ウィルオウィスプ「ソレ ウォレモ ワカラナイ。 デモ トキドキ ドキガ ムネムネスルコト アル」

カハク「土器がムネムネ…? ああ、胸がドキドキするのねって、アンタ胸なんかないじゃない」

ウィルオウィスプ「ソウ。 ナノニ ウォレ ナンカ ドキドキスル。 ソノ リユウ シリタイ」

カハク「ドキドキする理由を知りたいから、ちゃんと話聞いてるの?」

ウィルオウィスプ「ウン。 モウスコシデ ナニカ ツカメソウナ キ スル」

カハク「そうなんだ…それが何なのか、あたしにはわからないけど…はっきりさせられるといいわね」

ウィルオウィスプ「ウン。 アリガトウ カハク」

光介「おーい、お前たち。行くぞ」

カハク「あ、うん! わかったわ」

ウィルオウィスプ「ウォレモ スグ イク!」

>そしてフィフス・バベルたちは、ゴズテンノウのいる64階へと向かった。

>2/5話へ続く…


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